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魅惑の湖水浴ツアー(3)

【今回の登場人物】

ミツカ・ヨツカ…レイク村で宿屋を経営する姉妹

「すっげー、はえー!!」


 王都を出た後はゆっくり走る必要もなくそこそこのスピードを出せている。馬車や馬では到底体験できないような速度で走るバスの車内からは子供のはしゃぐ声が聞こえていた。


 さすがにそれ相応の揺れはあるので、大人達も優雅にお茶を……という訳には行かないようだが、それでもマイクを使って歌を歌ったりミニゲームをしたりとミスズの配慮で大いに盛り上がった。


 乗客はみな退屈せずに楽しんでくれているようなので、一安心。


 バスは順調に進み、途中小さな魔物数匹と接触したが今日は死骸を回収する事はせずそのままにしておいた。いちいち止まっていては折角の盛り上がりも台無しだし、彼ら(魔物)もそのうち息を吹き返すだろう。


「みなさん、もうそろそろレイク村の入り口が見えてきますっ」


 ミスズのそのアナウンスで再び車内は沸いた。


 レイク村へ入ったバスは速度を落とし、宿へ到着すると同時に中からミツカとヨツカが出て来て乗客たちを出迎える。


「お疲れさまでした、無事にレイク村へと到着しました」


 車内からは一斉に拍手が沸き起こる。あまりの早さに中には本当にここがレイク村なのかと疑う者までいたが、目の前に大きく美しい湖がある以上それは間違いない。


「お部屋は一家族につき一部屋用意していますので、荷物を受け取った後は各自チェックインをお願いします。その後は明日のお昼の鐘まで自由行動ですので、存分に楽しんでくださいっ」


 そのアナウンスを聞いて乗客は順番にバスから降りて行った。


 俺達がバスの簡単な清掃と忘れ物が無いかをチェック中、ミツカとヨツカは忙しそうにお客さんの対応をしている。こんな田舎の村でこれだけの人が一斉に宿を訪れるという経験は今までに無かったのだろう。


「俺達も行こうか」


「はいっ」


 自分のと一緒にミスズの荷物も持ち、俺達も宿へと向かった。守衛さんを探しに行かなきゃいけないけど、まだ明日もあるし今日の所は遊ぼう。


「「シュウさん、ミスズさんいらっしゃいませ!」」


 ツアー参加者のチェックイン手続きが終わった二人がこちらにやって来た。


「二人ともこんにちはっ」


「今日を楽しみにしていたよ、宜しくね」


「はい、こちらこそ沢山のお客様を連れて来ていただき有難うございます! これがお二人の部屋の鍵です!」


 そう言って渡された一つの鍵を俺は受け取った。


「「……?」」


「あれ、一つ?」


 ――しばらくの沈黙の後、意味を悟ったミツカが慌てだした。


「……!? あっ、ご、ごめんなさい。お二人で一つの部屋かと……あれっ? おっかしいなぁ」


 まあこんな事もあるだろうし、お客さんの方の部屋にミスが無かっただけ良かった。


「あーごめん、俺の説明が足りなかったみたいだね……」


「大丈夫ですよっ、これから出かけますし夕方までに用意して貰えれば」


 せっかく湖に来たんだし泳ごう! と話していたので別に今部屋が無くたって問題無い。ところが、ミツカの様子は明らかにおかしかった。


「……あのですね。……あの……ちょうどさっき飛び込みのお客様がいらして……部屋が全部……埋まって……」


 それを聞いて固まるミスズ。


「この近くに他の宿とかは……?」


 フルフルと首を横に振るミツカ。


「あっ、お客さんが呼んでる! ……わ、わたしちょっと行ってきますね」


 わざとらしくそう言うとミツカはどこかへ行ってしまった。


「あの……ミスズ……さん。大丈夫だよ、俺はバスで寝るから気にしないで部屋使って」


「だ、駄目ですよそれは。ちゃんと寝ないと明日も運転するんですし危ないですっ」


―― 仕方ないですから今回は一緒の部屋を使いましょう


 小さな声でミスズはそうつぶやくと、顔をうつむけたまま部屋へと行ってしまった。

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