表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/143

大量のオームボアの死骸が消えた理由(1)

【今回の登場人物】

ムツキ…"雑貨屋 旅のしっぽ" の共同経営者

「おはようございますっ」


「「おはようー」」


 翌朝、俺とムツキに続いてミスズもお店へとやって来た。今日はまずハイウルフを売却しに行って、バスツアーの当選通知を届けて……やる事が溜まっている。


「じゃあ俺達は魔物を売却しに行って来るよ」


「いってらっしゃい」


 そういうとムツキは棒状で菓子のような物を差し出した。旅の途中で不足しがちな栄養を補えるという触れ込みで新商品を開発しているらしく、その試作品ができたので味見して欲しいらしい。


 ありがたくそれを受け取った俺はポケットにねじ込みミスズと一緒に店を後にした。


 別に魔物の売却ぐらい俺一人で行っても構わないのだが、ミスズが一緒だと交渉がしやすくなって買い取り額も少し高くなる事が多い。


「もう丸一日経っちゃったし買い取り額もだいぶん落ちちゃうかな……」


「でも肉の買い取り額より防衛協力費の方が割合としては多い筈ですし、そこは腐ってもハイウルフですよっ」


 確かにBランクともあろうハイウルフなら、肉としての価値がゼロでも防衛協力に対する謝礼がかなりの額支給されるだろう。


《 ドンッ 》


 ちょうどその時、何かがバスに勢い良く突撃したような……そんな衝撃を感じてバスは緊急停止した。


「まさか誰かとぶつかってしまった!?」


 急いでバスを降りた俺たちは、二人でバスの周りや下ものぞき込んで誰かいないかを必死に探した。


「誰もいませんね……」


「でも確かに何かにぶつかった衝撃があったんだよな」


 俺は念のために運転席へと戻り燃料計を確認する。


「……増えてる?」


 そう魔物と接触した時に魔物の生命力と引き換えにして増える筈の燃料が増えていたのだ。この安全な王都の敷地内で。


「どうやら魔物と接触したらしいんだけど、王都に魔物が侵入してそれと衝突してしまったって事かな? だったら魔物はどこに……」


「いえ、王都に魔物が侵入するなんて考えられませんし、もしそんな事があれば今頃は大騒ぎになっている筈です」


「そうだよね」


 ほぼ無害な桃耳ウサギは王都内でもペットとして飼われているらしいが、それと衝突したにしては燃料の増え方が多すぎる。それ相応に強い魔物の筈だし、そもそも魔物の死骸が見当たらない。


「魔物なんてバスに積んでいるハイウルフしかいませんもんね……」


……


「そうかハイウルフだ!」


 もしかしたら一時的に気を失っていただけで生きていたハイウルフが居たのかもしれない。それが目を覚ました魔物がトランクルームの中で暴れた事によりバスの車体へ接触してしまい、本当にご臨終してしまった。


 今の所そう考えれば一連の出来事に説明が付く事になる。


「開けて確かめてみよう。もし昨日積んだ場所から動いていれば仮説が立証される」


 念の為にと人気のない場所へ移動し、ミスズをバスの中へ退避させた上で俺はそっとトランクルームのドアを開けた。


≪ うわっ!! ≫


 その瞬間に一匹のハイウルフが俺の足の上へと転がり落ちて来た。


 ハイウルフは息絶えているようだったが、こんな扉ギリギリの場所に置いた覚えはない。一匹だけ明らかに場所が移動していたので、さっきの仮説通り意識を取り戻したハイウルフがトランクルームの中で暴れていたのだろう。


 念の為に他の五匹を確認し、他に動き出す個体が居ない事を確認した俺はミスズを呼び状況を説明した。


「これからはこれは間違いなく死んでいるか確認してから積み込まないと……」


「そうですね。今回はバスの中だったから良かったですが、積み下ろした後だったらと思うと」


「じゃあ気を取り直して売却に行こう」


「はいっ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お読み頂き有難うございます。

日刊更新を目指し頑張りますっ! 皆様からのブックマークや評価・感想などが執筆の励みになっております、どうもありがとうございます。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ