ハイウルフの討伐(4)
【今回の登場人物】
アレン…オーラド村の母へ会いに来た二児の母
ムツキ…"雑貨屋 旅のしっぽ" の共同経営者
「……という事があったんですよ」
村長を乗せて村へと戻った俺たちはアレンさんの所へと戻った。
あれからすぐに村長は村の有力者を集め、一連の出来事を説明し謝罪した。最初は魔物を手なずけるなど……と半信半疑だった人々もドライブレコーダーの映像を見せた途端、額に汗をにじませた。
村長の処遇は任せて欲しいという彼らだったが、その表情はみな引き攣っている。
後からこっそり聞いた話によると、彼らからすれば村長の一件より六匹ものハイウルフを数秒で倒してしまった俺たちの存在の方がよっぽど驚きだったらしく、決して逆らってはいけないという空気が流れていたらしい。
「なんか……色々と有難うございました」
事の全貌を知ったアレンさんとその家族からはとても感謝された。俺達としてもハイウルフを六匹仕留める事ができたので、これを王都に持ち帰って売ればそれ相応の報酬になるだろう。
「では一日遅れてしまいましたが王都へ戻りましょうか」
「はい、宜しくお願いします」
こうして俺達は、アレンさんとそのメイド、子供たち、そしてトランクルームにはハイウルフの死骸を六匹乗せ再び三時間の道のりを王都へ向け走り出した。
「それでは王都の向けてしゅっぱーつ!」
この村にも王宮の支部はあり、さっき仕留めたハイウルフはそこで売却する事も出来るのだが手続きにはそれなりに時間がかかってしまう。
元々アレンさんの依頼で来ている訳だし、王都まではどうせ三時間程度。今は帰るのを優先させ売却は後でゆっくりやれば良いだろう……まさか後であんな事になるなんて思いもせず俺はそう軽く考えていた。
バスの燃料は満タン。ミスズは子供に気に入られたようで帰りも一緒に遊んでとせがまれている。
「本当にありがとうございました、母も聞いていた程重症ではなくまた来ると約束したので次回も是非お願いします」
これならリピーターを確保できそうだ。
途中、赤ちゃんのおむつ替えなどで何度か停車した物の三時間はあっという間に過ぎ、夕方ごろには "雑貨屋 旅のしっぽ" へと到着した。
「「ご利用ありがとうございました」」
店にはアレンさんの屋敷の人が心配したのか迎えに来ている。アレンさんと子供たちを見送った頃にはもう既に日が傾きあたりは暗くなっていた。
この時間になると王宮の買取窓口は閉まっているし、持って行くのは明日にしよう。鮮度が落ちるとその分買取価格が下がってしまうけど仕方ない。
「「ただいま」」
「あっ、もう心配しましたよ二人とも。日帰りって言ってたのに昨日帰って来ないんですもの」
閉店準備をしていたムツキが荷物を抱えたままこちらに近づいて来た。
「旅にはいろいろトラブルがありますので……」
「うん、ハイウルフを六匹ほど仕留めたから明日売りに行こうと思って」
それを聞いたムツキは呆れた表情になり「副業ですか?」と冷たく言って来る。
「ち、ちがいますっ! 私とシュウ君は人助けをしていたんですよっ」
店番をしていてくれたムツキによるとこの二日間にバス関係の依頼人は来なかったという。さあ明日からはレイク村へのバスツアーの方を進めなければ。
こうして "雑貨屋 旅のしっぽ" 初の単独依頼を完了させた俺達は建物の裏手にバスを止めたまま黒猫亭の二階の部屋へと帰った。