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ハイウルフの討伐(3)

【今回の登場人物】

村長…オーラド村の村長

 最悪気付かれても良いとはいえ、気付かれないに越した事は無い。


 視力を自慢するミスズが村長を目視した後は、最大限の距離を保ってゆっくりとついて行った。村長は魔物が怖く無いのかどんどんと森の奥へと入って行く。


「村長どこまで行くんでしょうか」


「武器も持っていないみたいだけど」


 そして村長は道から少し外れた所にある大きな洞窟へと入って行った。


「どうしよう、さすがに降りて後を付けるのは危険すぎるよな」


「それは止めましょう」


 俺はバスを洞窟へと近づけ、中をヘッドライトで照らした上で思いっきりクラクションを鳴らした。


≪ブァァァァァーン≫


 何度かクラクションを鳴らしていると奥から慌てた様子で駆け出してくる人影があった。村長だ。しかもその背後には何匹かのハイウルフがいる。


「村長がハイウルフと一緒に!?」


「何で襲われないんでしょうか」


 音の正体が俺達の乗り物だと分かった村長の顔は大きく引き攣り、ハイウルフ達に何か指示をしている。その直後、ハイウルフ達が一斉にバスへと襲い掛かって来た。


「まさか村長がハイウルフを手懐けてたって事!?」


「そんな事ができるんですか!? どうやってやるんでしょうか……」


 今まさに高ランクの魔物に襲われようとしている者達の会話とは到底思えない、バスに乗っていれば安全だと分かっている二人だからこその余裕だった。


 更に俺としては燃料がもう少しで無くなりそうだったので、このタイミングで魔物をけしかけてくれた村長には感謝しかない。


ドンッ ドンッ ――


 少し鈍い音がして、バスへと突進して来たハイウルフ達がその場に崩れ込んでいく。村長はと言うと目の前で起きた事が信じられないといった様子で唖然としながら立ち尽くしている。


「村長、これはどういうことですか?」


 がっくりと項垂(うなだ)れる村長をバスへと引き込み問い詰めるが、村長は何も話そうとはしない。


「話して頂けないなら村に帰ってこの事を公表しても?」


「ふんっ、そんな事をしても誰も信じる訳がないだろ」


 しかしこのバスには以前にも大活躍したドライブレコーダーがある。面倒に思いながらも録画された映像を村長に見せると観念したのかぽつりぽつりと話し出した。


「実は半年前、たまたま森の中で遭遇したハイウルフから逃れる為に持っていたエサを投げた所、懐いてしまったようで……」


「「懐いた!?」」


「はい、最初は恐怖心もあり貢物として時々巣までエサを持って来ていたのですが……だんだんと私に懐くハイウルフが増えて行き、ある日旅人を襲った時に拾って来たであろう荷物を私に差し出しました。


彼らからすると食べられもしない旅人の荷物に価値はない。それを私へ捧げる代わりにエサをくれ……そう言った所だったんじゃないでしょうか。


しかしその荷物の中には大量のお金も入っていました。


ウルフたちが旅人や商人を襲って荷物を私へ差し出す代わりに私はエサを持って行く。私も大量の金貨を前にして欲が出てしまい、それがだんだんと慣例化してしまいました。


誤算だったのはハイウルフのおこぼれ目当てに弱い魔物が集まってきてしまった事で、それをどうにか皆さんに討伐して貰おうと……」


 村長の有罪が確定した瞬間だった。もちろんこの証言はドライブレコーダーでしっかりと録音されているので万が一の際には利用させてもらおう。


「だからハイウルフを討伐されるのは都合が悪く、偽の巣穴の場所を俺達に教えたんですね」


「はい……申し訳ありません」

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