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初めての依頼(1)

【今回の登場人物】

アレン…オーラド村の母に会いたい二児の母

「ベッドにもなりますし素晴らしく快適な椅子です。お手洗いまであって、噂に聞いていた以上で何も言う事はありません」


 アレンと名乗ったその貴族は感動した様子で是非依頼をしたいと言って来た。


「それで、金貨何枚でお受け頂けるのでしょうか……」


 さっきこっそりミスズから聞いた話によると、馬車と護衛を手配してオーラド村まで往復した場合金貨三〇~四〇枚が相場だという。かなり高く感じるが、高ランクの魔物が出る以上は仕方ないのだろう。


 事情が事情なので同情する気持ちは少しあるけど、それで安くしてしまうと今後の為にもあまり良いとは思えない。明らかに馬車より条件は良いので、相場に少し上乗せした額を提示するべきだろう。


「オーラド村までは日帰りでも大丈夫ですか?」


 しかしアレンさんはポカンとした表情、まるで意味が分かっていないかのような反応だった。


「あの……日帰りとはどういう意味でしょうか?」


「「……ん?」」


 何度もバスに乗っている俺達の感覚は完全に麻痺していた。


 バスが馬車より速い事は王都でも知られている。しかし正確な速度までは伝わっていないようで、いくらなんでも馬車で四日の距離を数時間で行けるとは思っていないらしい。


 その原因の一つとして、俺たちが王都の敷地内を走る時は事故を起こさないようゆっくり走行しているという事があった。それを見た人達は「ああ、あんなもんか」と思っていたのだろう。


 俺の説明を聞いたアレンさんは暫く間を置いて驚きの声をあげた。せいぜい一日ぐらい行程が短縮される程度と思っていたらしい。


「はい、日帰りでも十分です」


「では最初のお客さんなので特別サービスって事で……金貨二〇枚でいかがでしょうか」


……ちょっと安いけどまあいいか。


 実際に車内を見てその凄さを実感し、日帰りができる程の速度と聞いた事で依頼料は金貨二〇〇枚、いや三〇〇枚を超えても仕方ないと思っていたらしく、下級貴族には厳しい出費になるがなんとか工面しようと覚悟をしていたらしい。


「是非お願いします」


「出発はいつが宜しいですか?」


「できるだけ早い方が良いですが……」


 相談の結果二日後に王都を出発する事になり、朝一番に "雑貨屋 旅のしっぽ" へ来て貰う約束をした。


「王都の人達ってバスは馬車よりちょっと早い……ぐらいのイメージだったんだね」


「そう言われれば私も最初はそんな早く移動できるなんて思ってもいませんでした」


「魔物に対する安全性とか、これからはもう少し丁寧に説明するようにしよう」


 それに加えて今回のような単独依頼については距離で料金を決める事にした。馬車で一日ごとに金貨十枚、オーラド村なら片道四日だから金貨四十枚と言った具合だ。


 結局俺たちは王都まで戻って来なければいけないので、往復か片道かは関係なく同じ料金にする。


「そのオーラド村までの道って高ランクの魔物が出るなら人通りも少ないんじゃないの?」


「はい、あまり通る人は居ないと思います」


「じゃあ道は大丈夫かな……バスが通れない程荒れていたり狭かったり……」


「あっ、それは大丈夫だと思います。南側はほとんど木も生えていない草原ですから」


 まあバスがあればどうにかなるだろう。

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