表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/143

共同出店計画(3)

【今回の登場人物】

シュウ…バスと一緒に転移した主人公

ムツキ…王都へ上京し雑貨屋開店を目指す少女

国王陛下…国王様

クラ…国王様の孫娘

 クラちゃんに言われるがまま、俺とムツキは店の近くで待機していた馬車へと乗せられた。そういえばこの世界に来てから馬車に乗るのはこれが初めての経験だ。


 王宮の馬車というだけあって中は豪華に作り込まれ椅子の座り心地もそれなり良い。それでもバスには到底かなう筈がなく、みんながバスの乗り心地に驚く気持ちが少し分かった気がした。


「ご無沙汰しております、国王陛下」


「は……初めまして、国王陛下」


「久しぶりだね。そしてムツキちゃんと言ったかな? 改めて、私の孫娘を助けてくれた事心より感謝する」


「い、いえ、当然の事でござります」


 ムツキが国王様と会うのはこれが初めて。相当緊張しているらしくガチガチに固まって少し変になっている。


「それはそうとクラから話は聞いたよ。バスの窓口となる雑貨屋を開くそうじゃないか」


「はい、そこで国王様に開業の許可を頂きたいと思いまして」


「許可? そんな物は必要無いが?」


 やっぱり……クラちゃんの様子から何となく察してはいたけど、あれは俺達を王宮へと連れてくる為の口実だったんだな。クラちゃんから聞いた事を話すと国王様は少し申し訳無さそうな表情になりこう続けた。


「クラがそんな事を言っていたか……いや申し訳ない。最近よく君たちの所へ遊びに行っているみたいだし、あの子も何か手伝いたかったんだろう」


 クラちゃんが遊びに来ていた事ちゃんと知っていたんだ。無許可で抜け出して来たんじゃないと分かった俺は少し安心した。


「ところで出店場所はもう決まったのかね」


「「いえ、まだこれからです」」


 さっきマルセルさんの所でも同じ事を聞かれたけれど、今日はまだ一日目。ムツキの引っ越しさえも落ち着いていないので出店計画なんて白紙の状態。


 俺たちが口を揃えて言ったその言葉を聞いて国王様は少し安堵の表情を浮かべた……ような気がした。


「一つ提案なんだが、このすぐ近くにある私の土地と建物を君たちに無償で貸し出すというのはどうだろう? ただし約束をして欲しい事がある」


「約束とはどのような事でしょうか」


 無償で貸してくれるというのは嬉しいけれど、それだけの好条件となると相当厳しい約束なのかもしれない。売り上げの五〇%を税として納めるとか?


 そんな不安をよそに国王様は全く関係ない事を話し出した。


「周辺の街や村と比べて、ここ王都では食料品が安い事に気付いているかな?」


「はい、国王様の方針と聞きました」


「その通り。食品流通の大部分を王宮が握る事によって価格を特に低く維持しているんだ。しかし君達のバスがあれば王都で安く買い付けた食品を近隣の街で販売する事も簡単に出来てしまうのではないだろうか」


「恐らく問題無いと思います」


「それをされてしまうと、王都での食品供給バランスが著しく崩れてしまい仕組みを維持する事が出来なくなってしまう。だからと言って王都からの食品持ち出しを一切禁止するという訳にもいかない」


「つまり、食品の大量持ち出しは自粛して欲しいという事でしょうか」


「そういう事になる。もちろん自己消費分や王都の特産品などを少々持ち出して販売する分には構わないのだが、継続的に極端な量を持ち出す事は控えて貰いたいというのが条件だ」


「そのような事をするつもりはありませんのでご安心ください」


「その言葉が聞けて安心したよ。それでは約束通り土地と建物はこちらで用意しよう」


 俺とムツキは顔を見合わせ頷き合った。


「「ありがとうございます、お言葉に甘えて」」


 こうして俺達の共同出店計画は驚く程順調に進み、ムツキの王都移住後一日目にして出店場所が決まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お読み頂き有難うございます。

日刊更新を目指し頑張りますっ! 皆様からのブックマークや評価・感想などが執筆の励みになっております、どうもありがとうございます。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ