表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/143

ムツキの決断(3)

【今回の登場人物】

シュウ…バスと一緒に転移した主人公

ネネ…シュウが住む黒猫亭のオーナー

ミスズ…シュウといつも一緒にいる商家の娘

ムツキ…ハラジクの街で雑貨屋を営む少女

「ネネさん、おはようございます」


「おはよう、今日はムツキの所へ行く日だっけ?」


「一緒に行きますか?」


 今日はムツキの引っ越しを手伝う約束をしていた日なのでハラジク領まで行かなければいけない。いつもより早く起きて出発の準備を整えた俺は一階で忙しそうにしているネネさんにも一応尋ねてみた。


「いや、私はこの間行ったばかりだし今日はお店で待ってるよ」


 今までは片道六日、往復で半月近くかかっていたハラジクだったけれど、バスのおかげで安全に日帰りできるようになって “ちょっとそこまで” 感が強くなってしまったのは薄々感じている。



≪ガラガラガランッ≫


 ネネさんからお昼用のお弁当を受け取り、そろそろ出発しようかと思っていたちょうどその時、お店のドアベルが鳴り響いて一人の少女が入って来た。


「おっはようございます、シュウくん!」


「おはようミスズ……どうしたのこんな朝早くに」


「今日はムツキちゃんを迎えに行くんですよね。私も行こうかと思いまして、朝ご飯を我慢して来ました」


 言ってる意味が分からないが、おおよその見当はつく。どうせハラジクの街で美味しいスイーツをお腹いっぱい食べる為に朝食を抜いて来たって事だろう。


「いいけど、遊びに行く訳じゃないからハラジクではそんなに長時間滞在しないよ」


「分かってますよそれぐらい」


 こうして一緒にバスへと乗り込んだ俺達は、途中で何匹かの魔物に遭遇はしたものの極めて順調に進み、お昼前には無事ムツキと合流できた。


「さあ、どんどん積んでください!」


「いや、少しは手伝うけど自分で積み込もうよ」


 到着早々どこかへ行ってしまったミスズに代わって俺は仕方なくムツキの引っ越しを手伝っている。四時間もバスを運転した後なんだから少しは労わって欲しいのに……。


 そして「乙女には色々な物が必要なんです」と言うムツキと一緒に大量の荷物を積み終えた俺は、満足そうな顔で戻って来たミスズと一緒に再びバスへと乗り込んだ。


「それじゃあ、王都へ帰りましょうっ! しゅっぱーつ!」


「本当に今日の仕事は引っ越し業者だったな……」


 帰り道運転をしながら俺は考えていた。

 王都へ引っ越して来たムツキはこれからどうするんだろうか? 雑貨屋を開きたいと言っていたけどツテも無い王都でいきなり店を開くのは無謀だし……またしばらく隣の部屋で暮らすのかな。


「ムツキは王都に来たらどうするつもりなの?」


「どこか物件を探して雑貨屋でも開こうかなって思ってます」


「でもいきなり王都で店を開くって大丈夫?」


「大丈夫ですよ、だって今の私にはクラちゃんが居ますから! 王宮お墨付きですよ」


「いや、別にお墨付きって訳じゃないと思うけど……」


 まあ、国王様も何かあればいつでも相談してくれと言っていたけど……。実の所あれから時々クラちゃんは黒猫亭に遊びに来ている。本人はちゃんと外出許可を取って来たと言っているけど、ちょっと怪しい。


「ねえムツキ、ひとつ提案があるんだけど」


「何ですか?」


「その雑貨屋、共同店舗って事で俺と一緒にやらない?」


「「な、なんですかそれっ!?」」


 ミスズとムツキの二人が揃って驚きの声を上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お読み頂き有難うございます。

日刊更新を目指し頑張りますっ! 皆様からのブックマークや評価・感想などが執筆の励みになっております、どうもありがとうございます。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ