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キングボア大量発生の理由(6)

【今回の登場人物】

シュウ…バスと一緒に転移した主人公

 ドライブレコーダーから抜き取ったメモリーカードを、この世界へ来てから活躍する事の無かったスマートフォンへと差し込み、再び録画されているデータを確認するとやっぱり転移した日の映像と思われるデータが残っている。


「これで全てが分かるのか……」


 期待に胸を膨らませつつ再生ボタンを押すと、最初の動画には高速道路を走る風景が録画されている。しばらくするとバスはサービスエリアへと入り停車した。


 乗客が寝ている俺一人だったからなのか、夜だったからなのかは分からないが、特にアナウンスなどは無くそのままドアが開いて運転手が降りて行くような音が記録されている。


 しばらくすると運転手がバスの正面に回り込んで来きた。どうやらフロントガラスに付いた汚れが気になっているらしく、備品の入った箱を持って来て、ガラスを拭こうとしている。


 その数秒後の出来事だった。


 突然画面が真っ暗になってしまい、その状態が一分ほど続いた後、少しの揺れと共に俺が目を覚ました森が画面に映し出された。


「転移って意外とあっさりした感じなんだな……」


 もっとこう、幾何学模様やフワフワした物とかが浮かんだ変な空間を通って行くのかと思っていた俺の第一印象はそれだった。


 ひとまず転移後に運転手が居なかった事とトランクルームから備品の入ったケースが消えていた謎はこれで解けた。サービスエリアへ置いてきぼりにされた運転手からは突然バスが消えたように見えたのだろうか……?


 俺がそんな事を考えていると映像に変化があり、今度は何かがぶつかって来るような音と共にバスが小刻みに揺れ、その後少し間を開けて二回、ガタンッという音が響いた。


 何の音だろうと疑問に思っていると、画面には俺のスーツケースを引っ張って来る三匹の親子のようなオームボアが映し出された。最初の衝撃は突然現れたバスを敵とみなしたオームボアが突進していたのだろう。



 そして推測だが、さっき清掃の為に運転手が備品を取り出した時トランクルームは開けたままになっており、そのまま異世界に転移してしまった。


 そこへ入り込んだオームボアが俺のスーツケースを引っ張り出し地面へ落した、その後何らかの衝撃でトランクルームの扉が閉まった。それが二回のガタンッという音だったのかもしれない。


 映像はまだ続いており、ここから俺は衝撃的な光景を目にする事となる。


 中に食べ物が入っている事に気づいているのか、ロックをしていなかった俺のスーツケースはオームボアによってすぐに開けられ、三匹のオームボアは俺が買った菓子を箱ごと一心不乱に食べ始めた。


 そして全ての菓子を食べ終えた頃、三匹のオームボアは明らかに様子がおかしくなり、その場に倒れ込んでしまった。


「あれ、でも俺のお土産の包装が出て来たのってキングボアからじゃ……」


 次の瞬間、


≪ グギィィィイイイイー ≫


 鳥の鳴き声……というよりは鳥の奇声のような、苦しそうな異様な鳴き声をあげたオームボアの体は徐々に大きくなり、数十秒後にはこの間目撃したキングボアと同じ大きさになってしまった。


 その後、キングボアは再びスーツケースを引きずって森の中へと消えて行ってしまい、映像もこの後で終わっていた。


「あの三匹のキングボアって……日本の菓子を食べた事によって突然変異で生まれてしまった魔物だったのかよ……それにあの奇声のような鳴き声って……俺がこの世界に来て目を覚ました時に聞こえて来た……」


 俺はこれまでの事を整理した。異世界と日本に瓜二つの人物が居た事によって通路ができてしまい、そこを通って不思議な力を持つ猫の容器が日本へやって来た。黒猫亭が荒らされたのは転移時の衝撃による物。


 その容器をたまたま持ち帰ってしまった俺は、運転手が降りたタイミングで猫容器の能力によってバスごと異世界に転送されてしまい、近くにいたオームボアが俺のお土産を漁って食べキングボアへと進化してしまった。


 この時、オームボアがバスに触れても何とも無かったのはエンジンがかかっていなかったからだろう。


 バスの不思議な能力は猫の容器による物で、この猫容器が最終的にどうなる事を望んでいるのかは分からないが、ひとまず今はバスに落ち着いてくれている。


 これが全貌で、百匹超のオームボアの死骸が消えた謎以外はこれで一応繋がったかな。

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