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キングボア大量発生の理由(4)

【今回の登場人物】

シュウ…バスと一緒に転移した主人公

ネネ…シュウが住む黒猫亭のオーナー

ディル…フルーテ領、領主の側近

「なるほどそういう事でしたか。シュウさんの祖国には珍しい物が多いですな、こんな透明な紙なんて見た事がありません」


 この世界で包む物と言えば、革・紙・布の何れかなのでビニールなんて見た事無かったのだろう。不思議そうにヒラヒラとさせながら眺めていた。


 買取分の金貨を渡し終え、謎の物体の正体も分かった事で今回の用件は全て片付いたらしく、これからわざわざ王都まで行く理由も無いという事で、ディルさん達はここで引き返してフルーテ領へと戻るという。


「領主様にも宜しくお伝えください」


「はい、またお会いしましょう」


 一行を見送った俺は再びバスに乗り込み、今までに集まった情報を頭の中で整理しながら王都へ向けてアクセルを踏み込んだ。


「今の人ってフルーテ領の……何で?」


 俺がいかにも地位の高そうな人と話し込み、金貨が詰まった革袋を受け取ているのを見ていたネネさんが不思議そうに聞いて来た。


 事の成り行きを説明した事でネネさんは状況を理解してくれたようだったが、そんなに儲けているなら何かおごりなさいよ! と王都に着いてからお酒をおごる事に……


 その後何匹かの弱い魔物に遭遇はしたものバスは順調に進み、もうすぐ王都に着こうかという頃ネネさんが前方を指さしながら不思議そうに話しかけて来た。


「ねえシュウ君、あのピカピカ光ってるやつは何?」


「あぁ、これはドライブレコーダーって言って、バスから見える景色をいつでも見返せるように記録しておく為の機械なんです。まあこの国ではあまり活躍する機会も無いんですけどね」


「へー、なんだか色々付いてるんだね」


「……あ゛ーー!!」


 特に深く考える事も無くネネさんの質問に対してそう説明をした俺は、数秒間の間を置いた後で自分が今までなぜこれに気づかなかったのか激しく後悔した。


 ドライブレコーダーが付いているのだから、早い段階で気付いていれば異世界に転移した瞬間も映像として残っていたかもしれない。


 一般的なドライブレコーダーは、一定時間以上録画をし続けていると古いデータから順に削除されてしまう。その為、この世界に来てから相当な時間運転をしている今の状況では古い映像が残っている可能性は低い。


 俺はすぐに路肩へとバスを止め、何が何だかわかっていない様子のネネさんを差し置いてドライブレコーダーの記録を確認した。


「あっ、帰省した日の映像データが少し残ってる……」


 絶望的と思われた映像データだったが、恐らく転移した時に大きな衝撃か何かがあったのだろう。それを事故の衝撃と勘違いした機械によって自動的に転移前後の映像データだけが保護されていた。


 そうなれば話は一気に進んでくる。今すぐにここで映像を再生して事の成り行きを知りたいけど、ここは森の中。そろそろ日も傾いて来たし、あんまり道中のんびりするのは良くない。


 俺はドライブレコーダーからメモリーカードを抜き取り、王都に着いてからゆっくりと映像を確認する事にして、ひとまず帰路を急いだ。


「荷物が沢山あるみたいですが、黒猫亭の前にバスを止めましょうか?」


「ありがとう、そうしてくれると助かるわ」


 いつもは隣にあるミスズの屋敷の奥まった所にバスを止めているけれど、今日は積み下ろしの為に黒猫亭の前へと路駐。もうそろそろ王都の門が見えて来る頃だ。

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