表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/143

キングボア大量発生の理由(3)

【今回の登場人物】

シュウ…バスと一緒に転移した主人公

ネネ…シュウが住む黒猫亭のオーナー

ディル…フルーテ領、領主の側近

「にしても沢山買いましたね、一体何を買ったんですか?」


 街を後にした俺は順調にバスを走らせながらネネさんに聞いてみた。黒猫亭の一角で雑貨を売っているのは知っていたが、さすがにこれ程の量ではない。


「今ね、フルーツやクリームを薄い皮で巻いた食べ物がハラジクの街では流行ってるんだって。だからお店でも出してみようかなーって思って、その材料と焼く機械を買っちゃった。きっとミスズちゃんも喜ぶよ」


「あー……」


「あーって何よ、もうちょっとこう……食いついて来ても良いじゃない!」


 原宿と言えばクレープだもんね。何となくそう納得してしまった俺はそれ以上詮索しなかった。



 運転席へ祀られた猫のスパイスケースを横目に二時間ほどバスを走らせた所で、前方に三台の馬車が走っている事に気が付いた。真ん中の馬車が一番豪華で、前後は護衛の馬車だろう。


 速度を落としてゆっくり近づくと、その馬車へ見慣れた家紋が付いている事に気が付いた。


「あれは、フルーテ領の領主様の所の馬車……?」


 フルーテ領から王都へ向かう道は二本あり、片方は途中で俺たちが通る道と合流する。相手もバスへ気付いたようで、馬車が止まり中央の馬車からは領主の側近であるディルさんが降りて来た。


「これはこれはシュウさん、こんな所でまたお会いできるなんて光栄です」


「先日はどうもお世話になりました。これから王都へ行かれるんですか?」


「はい、畑を荒らしていたキングボアの件で今ちょうどシュウさんのご自宅に向かっていた所でした」


 彼らは再びフルーテ領まで長い日数をかけて戻らなければいけない訳だしわざわざ王都まで来て貰う必要も無い。まだお昼過ぎで時間もある事から俺はこの場で用件を聞く事にした。



「まずは、お約束通りこれが討伐したキングボア二匹を売却した分の金貨です」


 ジャラジャラと音を立て、革の袋いっぱいに入った金貨を差し出された。


 王宮の軍隊がほぼ総出で犠牲者を覚悟して討伐に当たるという魔物を二匹も倒してしまったので、純粋な肉の売却益というよりは街の治安維持に貢献したという名目で上乗せされる討伐報酬が大半を占めているのだろう。


 そもそもキングボアの肉は固くてあまり美味しく無いらしいが、その希少性から一応は売れるのだとか。俺は有り難く金貨を受け取った上で話を続けて貰った。


「あの後キングボアを解体したんですが……畑で討伐した片方のキングボアと、最初に持ち込まれていた少し小さめのキングボアの胃袋から見慣れない物が出てきまして、シュウさんなら何か知っているかなと」


 そう言うとディルさんは、バッグの中から布で包まれたそれ取り出した。


「この箱のような物が畑で討伐したキングボアから出て来た物で、こちらの不思議な薄い透明の紙は最初に持ち込まれた小さなキングボアから出た物です」


「これは……俺が買った……」


 キングボアの胃袋の中から見つかった見慣れない物とは、俺がまだ日本にいた事、高速バスへ乗る前に沢山買い込んでスーツケースに詰め込んだお土産の箱の一部、そしてその中の菓子を包んでいるビニールだった。


 つまりこの世界へと転移した後、何らかの理由で俺のスーツケースがバスの外へ出てしまい、それを見つけたキングボアが中に入っていたお土産(菓子)を袋ごと食べ、その後空になったスーツケースをハンターが見つけた……という事なのだろうか。


 何となくしっくりこない部分もあるが、今の状況で推測できるのはここまでだった。


 俺は異世界への転移という部分を伏せ、祖国から持ってきた菓子を箱ごと落としてしまい、それをキングボアが見つけて食べたのではないかという事をディルさんへと説明した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お読み頂き有難うございます。

日刊更新を目指し頑張りますっ! 皆様からのブックマークや評価・感想などが執筆の励みになっております、どうもありがとうございます。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ