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畑を荒らす魔物の正体(4)~駆除の方法~

 ヘッドライトの明りに照らされ、そこに姿を現したのは俺にも見覚えのある魔物だった。ただ一つ違うのはその大きさ、まるで牛か馬かという程の巨体で低いうなり声をあげバスの方を睨んでいる。


「これほど巨大なキングボアが……」


 そこに居たのは俺がこの世界に来て始めてバスで轢いてしまった、記念すべき魔物。オームボアの突然変異と言われ、一匹いれば村一つを壊滅させる事なんて簡単、駆除には王宮の軍隊が駆り出されるというキングボアだった。


「ロンガンさん、どうしましょう……」


 依然としてキングボアはこちらを睨みつけ低く唸り声をあげている。


「こ、このバスは大丈夫なのかね、その……疑う訳じゃないが」

「ええ、先ほど突撃して来たのも同じキングボアだとしたら恐らくもう息絶えているでしょう」


 衝撃の大きさからしてオームボアという事は無く、残量を示す燃料計の針も大きく動いていたので、一匹は息絶えていると考えてまず間違いないだろう。


 しかしこの状況にはさすがのロンガンさんも思考が追い付かないようで、この後の指示を仰ぐも恐怖に顔を引き攣らせ、取り乱した様子を隠せていない。


 一方で、このバスの力を十分理解しており、反対にキングボアの恐ろしさをあまり理解していない俺だけが一人平然としている。


「ひとまず目の前の危険生物を駆除しましょうか……」


 俺のその言葉を聞いて全員の表情が再び引き攣った。恐らく全員がここからどうやって逃げるかを必死で考えていたのだろう。恐る恐るロンガンさんが聞いて来る。


「確かに駆除できればそれ以上の事は無いが……一体どうやって……」

「ひとまず威嚇音(クラクション)でも鳴らしてみましょうか」


 ロンガンさんが何か言おうとしていたが既にその前に俺の手は動いていた。


≪ブァァァァァーン≫


 威嚇音(クラクション)にビクッとしたキングボアはバスに近づき、さっきより激しい唸り声をあげながらバスの周りを歩き出した。


 「どどどどど……どうするのかね」


 どうにかして魔物をバスへ接触させなければ倒す事はできない。しかし相手も警戒しているのか、中々バスへ攻撃を加えようとはして来ないという膠着状態(こうちゃくじょうたい)がしばらく続いた。


 いくらキングボアが巨大とは言え、大きさではバスの方が圧倒的に勝っている。しかも一匹は既に息絶えており、威嚇音(クラクション)もかなりの威圧になったのかもしれない。


 もし、キングボアがバスを自分より強い者と認識してしまうと逃げられてしまう可能性もあり、これ程巨大なキングボアを逃がしたとなれば街の安全は今後一切保証されなくなってしまう。


「……エサだ」


 少しは弱ったという演出になるかと考えバスのライトを暗くした俺は、夜食用にと積まれていたフルーツを窓からばら撒いてみた。


 しかし周辺には甘く熟れたフルーツが沢山あるからか、鼻をクンクンさせるものの全く寄り付こうとはしない。このままでは本当に街が危険にさらされてしまう。何か……何か……必死で考えた俺はある事を思い出した。

 ミスズからもらった巾着袋の中からお菓子を一個だけ取り出し、試食をしてみる。


「うん、このクラッカー中々美味しいな」


 見た目はクッキーのようだが甘くは無く、バターの香りもあって中々美味しいクラッカーだ。


「ごめんミスズ」


 俺はもう一枚取り出し、魔物へ十分に見せつけアピールした所で窓からバスの近くへと投げた。

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