フルーテ領からのお客
≪ シュウくんー お客さんだよー!! ≫
俺が急いで階段を降りると、そこにはミスズと一緒にフルーテ領の領主ロンガンさん、その娘のレンナさんがいた。
以前レイク村へ行った帰り、道に迷った俺たちは道中で熱を出している領主の娘、レンナさんをフルーテ領の屋敷まで送って行ったのだ。
「やあシュウ君、ご無沙汰してるね」
「この間は体調を崩していたとは言え、お恥ずかしい姿をお見せしました」
レンナさんは、もうすっかり元気になったようで顔には笑顔が戻っている。
「お元気になったようで何よりです」
「あの、これほんの気持ちですが、私が焼いたドライフルーツのクッキーです。甘さは少し控え目なんですが、ミスズさんと一緒に召し上がって下さい」
「「有難うございます」」
俺がクッキーを受け取ると同時にロンガンさんが話を切り出した。
「今日は娘のお礼もあるんだが、実はシュウ君に相談したい事があってね」
「相談ですか?」
「最近フルーテ領の周りにある畑を荒らされる被害が多発していてね。夜だから暗くて正体は分からないんだが、荒らされた跡を見ると大型の魔物の可能性もあってな」
「大型の魔物ですか……」
「幸いな事にまだ住人への被害は出て無いが、もし大型の魔物が領内へと入ってくるような事があれば……。しかし、相手の正体が分からない以上、討伐隊を出す訳にもいかず困っているのだよ」
「なるほど、それでバスを使って正体を調査、魔物であれば討伐までという事でしょうか」
「まあ簡単に言うとそういう事になるかな。もちろん危険が伴う以上断って貰っても構わないし、受けてくれるなら報酬は……そうだな金貨三十枚、討伐に成功したら追加で二十枚と魔物の買い取り額でどうだろう」
「構いませんよ、討伐できるかどうか分かりませんが正体が分かれば討伐隊も組めるでしょうし」
「感謝する」
「今回は待ち時間も長そうですし、夜食としておやつを多めに用意しておかなければいけませんねっ」
「あっそれでしたら私がまたクッキーを焼きましょうか」
「いや今回の依頼はさすがに危険だから、フルーテ領までは一緒に来ても良いけどミスズはレンナさんと一緒に領主様の屋敷で待ってて貰うよ」
「えー私も行きますよっ!」
「相手が魔物だったらバスに乗っていればまず安全だろうけど、もしもそうじゃ無かったら……」
それを聞いたロンガンさんが頷きながら答える。
「我々は恐らく魔物による仕業だろうと推測しているが、山賊やその他の何者かによる可能性もゼロではない。ミスズお嬢ちゃんの事は屋敷で責任をもって保護しよう」
「ありがとうございます」
「えー、私も行くー!」
「領主さんの屋敷にいたら美味しいフルーツケーキ食べられるかもよ」
「……ま、まあそこまで言うなら待ってても良いけどね」
話はまとまった。ロンガンさん達はこの後王都を周り、そのまま領地に帰るらしい。
俺たちは五日後に再びフルーテの街を訪れる約束をしロンガンさんとレンナさんを見送った。
「うん、このクッキー美味しいね」
さっきレンナさんから貰ったクッキーをポリポリ食べながらネネさんに入れて貰ったコーヒーを飲む。さすがにフルーツが有名な街という事もあって混ぜ込まれているドライフルーツも美味しい。
それを見ていたミスズは何か企んでいる様子だった。