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バス体験ツアー(1)

【今回の登場人物】

シュウ…バスと一緒に転移した主人公

ミスズ…王都にある商家の娘

マルセル…ミスズの父であり、ラマノ商会の経営者

「ミスズ、大事な話があるんだ」


「えっ、な、なんでしょうか」


 俺はミスズを黒猫亭に呼び出した。


 いつもと違う俺の雰囲気から何かを感じ取ったのか、ミスズは頬を赤らめおろおろしている。


「あれから色々と考えたんだけど、やっぱりミスズが必要なんだ。俺の隣にいて欲しい」


 マルセルさんに“できるだけ早くお願い”と言われてしまったバス体験ツアーだが、ハラジク方面は土地勘も無く道も分からない。


 そこでミスズにも協力して貰い、お客としてではなく俺と一緒に添乗員としてバスへ乗車して貰いたかった。


「えっ、あ、えっ、でもそんな急に……」


「大丈夫、添乗員と言ってもそんな大変な事じゃないから」


「……?」


 詳しい話を聞いたミスズは何故か少し怒っているようだったが、無事ツアーには協力してくれる事になった。


「それでは色々と決めなければいけませんねっ」


「ああ。でも日帰りならあまり長く滞在する事ができないから朝一に王都を発って、昼前に現地着。お昼過ぎにハラジクの街を出発という結構ハードなスケジュールになりそうだ」


「大丈夫じゃないでしょうか、今回の主目的はハラジク領のお店でスイーツを頂く事ですしそんなに長い滞在時間は必要ありません」


「……ん?」


「いえ、ですから今回の主目的はバスに乗ってどんな物かを皆さんに知って頂く事ですので、乗車時間が長いのは問題ないと思います」


「う、うん。そうだと良いんだけど……」


 最初は王都の周りを一周する位の簡単な物を考えていたのに、結構大がかりなツアーになってしまった。


 概要はある程度決まったが、これはマルセルさんにも少し協力して貰う必要がありそうだ。


「マルセルさんこんにちは」


「ただいま帰りました」


「おおシュウ君いらっしゃい、そういえばツアーの件はどうなったかね。もう色々な人から問い合わせが来ていてね」


 バスはラマノ商会の敷地に停めており、先日の王宮による没収騒動があったのも、その後バスの見学会が開催されたのも同じラマノ商会の敷地内。


 そしてその際、マルセルさんによって料理が振舞われ、丁寧に取りまとめて司会までやってくれた。


 表向きにはバスとラマノ商会は関係ないという事になっているが、ほとんどの人の認識はバス=ラマノ商会であり、必然的に問い合わせも商会主であるマルセルさんの元へと集まったのである。


挿絵(By みてみん)


「はい、概要は決まったのですが、販売をお手伝い頂く事はできませんか?」


「販売? そんな事だったら別に構わないよ」


 マルセルさんと相談した結果、ラマノ商会でツアーの申し込みを受け付けて貰う代わりに、俺は販売価格には一切口出しをしない。


 往復のバス運行・護衛代として金貨十枚を頂くが、それ以外は全て商会の利益にして良いという約束になった。



「どのぐらいの参加者が集まるかな……」


 このバスは通路を挟んで両側に一席づつという贅沢な作りになっており全部で十六の座席とお手洗いの設備がある。


 ミスズは運転席の隣にあるいつもの補助席を使って貰うので数に入れないとして、マルセルさんが参加決定で残り十五席ある。


「このツアーの注目度は相当な物ですから全席埋まると思いますよっ」


「まあ、貴族相手だし一人金貨十枚と言っても売れるんだろうね」


「十枚なんてとんでもない、百枚でも十五席ぐらい埋まりますよ!」


「ひゃ、百枚!?」


「でもお父様はツアーの趣旨を考慮して代金は取らないらしいです」


「えっ、じゃあ俺も金貨十枚なんて貰う訳には……」


「それは大丈夫です、座席の確保を条件にして商談を優先的に進めたり、契約を結んだりと色々やってるみたいですから、相当な利益になっている筈です」


「な……なるほど」


 今回は前回道に迷った時の教訓から、万が一に備えて火おこしの道具や緊急用の食料をバスに積み込んでおく事にした。

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