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王宮によるバス没収騒動(4)

【今回の登場人物】

シュウ…バスと一緒に転移した主人公

ミスズ…王都にある商家の娘

マルセル…ミスズの父であり、ラマノ商会の経営者

「シュウ君、なんだか大変でしたね……」


 ぴょこんとミスズが顔を出した。


 アラームの音に驚いて駆けつけたら王宮の人達がいて慌ただしくしているし、次々に貴族や権力者達が集まってくるし、出るタイミングを失って隅の方でこっそり様子を伺っていたらしい。


「でもさすがにあれは盛りすぎじゃないでしょうか」


 ミスズにはバレていた。


 そりゃあ何度もワイヤレスリモコンは使ってるし、防犯アラームも以前一度鳴ってしまった事があり車体に衝撃が加わる事で鳴る事を彼女は知っていた。


 それだけの事を知っていれば、魔力云々については辻褄合わせの嘘だろうと分かるし、権力者を集めた理由も容易に想像できる。


「この事はどうか秘密に……」


「大丈夫、任せなさいっ!」


「いや、本当にお願いします。またバスが狙われちゃうんで……」


「大丈夫だって!!」


 その時、マルセルさんが広場の中央に立ち集まった人達へ挨拶を始めた。


「お集まり頂きありがとうございます。対立派閥の方が王宮の名を語りバスを騙し取ろうとしていたようですが、どうやらバスとの相性が悪かったようで、皆様のお力を借り無事に元の所有者へと返却されました」


 王宮関係者とも相談した上で、今回の件は”騙し取る”という表現で問題ないと言う事になったらしい。


「バスの本来の所有者であるシュウさんによると、彼が所有している限りはバスへ乗車される方々に一切の悪影響が無い事を保証すると言う事です」


 集まった人々は静まり返り真剣に話を聞いている。


「本日はバスを内部まで開放してくれるとの事なので、この機会に何かあれば彼へ尋ねてみて下さい」


 会場がざわついたあと、数人の貴族がバスへ乗り込んだのを切っ掛けにバスへは人だかりができた。


「なんてふわふわな椅子なんだ」


「あら、お手洗いまで付いてるの? こんな綺麗なお手洗い見た事無いわ」


「ひ、光った、今光ったぞ!」


 俺にとっては当たり前と思う事でも、こちらの人々にとっては驚きの連続だったようで皆様々な場所を興味深く観察している。


 その中でも特にトランクルームは人気が高く、これだけあれば何々が積めると口々に話す様子が見られた。


「すごい人気ですね」


 ミスズもここまでの反応は予想していなかったらしい。


 今まではバスで魔物を狩りまくって儲けようと思っていたが、これはバス本来の使い方、目的地までの輸送と護衛でも商売になるかもしれない……そんな事をふと考えミスズに聞いてみた。


「良いと思いますよそれっ!」


「じゃあ今度、バスの乗り心地を体験してもらう意味でお試しツアーでも開催してみるか」


「私またハラジク領に行きたいです」


「ハラジク領?」


「はい、今流行りの雑貨屋などが多くある街です。ハラジク領まで行った帰り道で私はシュウ君に助けられたんですよ」


「あっ、あの時ね」


「王都から六日の距離ですから、バスだと四時間位でしょうか?」


 この世界では日の出・日の入り以外の正確な時間の概念はない筈だが、俺が今まで所要時間の目安としてバスにある時計を使っているのを見て、時間の考え方を大まかに理解しているようだった。


「でも乗り心地を体験して貰うだけのお試しだし、そんな遠くまで行かなくても……せいぜい王都の周りを一周する程度で良いんじゃないかな」


「それは駄目ですっ、ハラジク領の街へ行きましょう」


 いつになくミスズがその街へ行きたいと言うので、お試しとしては距離が遠すぎるが仕方ない、そのうち開催する事にしよう。


「でもほら、前にレイク村へ行った時に帰りが一日遅れちゃったでしょ。だいぶんマルセルさんに心配かけたと思うんだけど、もう遠出は許してくれないんじゃない?」


「バスがあれば安全なんだろ?」


 いつから聞いていたのか、突然後ろからマルセルさんが話に入って来る。


「あらお父様」


「ちょうどハラジク領へ行く用事があったので、それなら私も参加したい。できるだけ早めにツアーを開催してくれないかな?」

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