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王宮によるバス没収騒動(3)

【今回の登場人物】

シュウ…バスと一緒に転移した主人公

マルセル…ミスズの父であり、ラマノ商会の経営者

ダラン…王宮からやって来たらしい貴族風の男

「そ、それはどうすれば良いのだ!!」


「通常であれば、再び私達が緑の板に触れ、ダラン様がバスの所有権を放棄する旨を宣言し、前所有者である私がそれに同意する言葉を唱えれば良いのです。しかし……」


「しかし何だっ!」


「この儀式を行うにも魔力が必要です」


「何か方法は無いのかっ!!」


 相当焦っている様子だ。


「事情を説明して貴族や王宮関係者をできるだけ多くこの場所へ集めましょう。皆の魔力を集めればどうにかなるかもしれません」


「そ、そんな事できる訳じゃないか! そんな事をしたら……いや何でもない。他の方法は無いのか?」


「私もこのようなケースは初めてで……他には一ヶ月間待つしか思い当たりません」


「な、なにも貴族である必要は無いだろ! 近くにいる庶民どもを集めれば……」


「それでも構いませんが、私の経験上、庶民が多くの魔力を持っている事はあまりありません。魔力不足で一度失敗すると所有権を戻す事さえ出来なくなってしまいますので、ここは安全策として多くの魔力を持っている事が多い権力者を中心に集められた方が宜しいかと思います」


 こんな適当な設定の話しを信じてくれるかと内心不安だったが、異世界の人からすればバスは材質・大きさ・形全てが相当異質な存在に見えるようで、命令でドアが開閉した事によるインパクトは絶大だったらしい。


 そのバスが今けたたましい音と共にライトを激しく点滅させているのである。


 しばらく悩んでいた様子のダランは一緒に来ていた幹部・付き人に指示し親交のある貴族、王宮関係者を今すぐ集めるようにと指示した。


 それから一時間ほど経っただろうか、バスの周りには多くの貴族・王宮の関係者や給仕までもが集まった。


「も……もうこれぐらいで良いか?」


「一度やってみましょう」


 嘘の説明で集めていたとしても問題無い。マルセルさんは全てを見ていた訳だし、現在のバスの異常な状態や途中で叫ぶ言葉である程度察しはつく。


 権力者がこれだけ集まればバスを奪おうとしたらどうなるか十分に広まるだろうし、国王様の耳にも届くだろう。


「私、ダランはこのバスの所有権を放棄する!」


「私、シュウは破棄を承諾し再び主となる」


 一応これで茶番劇は終わったので、そろそろアラームを止めなければいけない。俺はバスへと近づいたタイミングでポケットの中のボタンを押し、ドアを開けて運転席へと乗り込む。


 さっきまでの荒れた姿が嘘のようにバスはしんと静まり返り、それを見たダランは地面へと崩れ落ちた。


「ダラン様、バスに乗ってよく調べましたが、生命力を奪ったという形跡はありませんでした。魔力不足の状態でドアを強引に開けようとされたのでバスが警告を発していただけのようです」


 それ言葉を聞いたダランは心底安心した様子だったが、その姿は本当に数十歳の歳を取ってしまったたかのような弱々しい物だった。


「シュウ君、君は大丈夫なのかね!?」


 マルセルさんが俺の元へと駆け寄って来る。色々と無茶な設定を作ってしまったので心配されるのも無理は無いが、いくらマルセルさんとは言え全部嘘ですとバラすのはやや躊躇われる。


「はい、俺は長年このバスに乗っていますので何の問題もありません」


「そうか、確かにそりゃそうだよな。だが……」


 ミスズが頻繁にバスに乗っているけど、それは大丈夫なのだろうか……恐らくそんな所だろう。父親として娘の事を心配しない筈は無いし、そのあたりの誤解は解いておく必要がある。


「ミスズさんもバスへは良く乗るので心配かもしれませんが、俺の管理下にあるうちは、乗る人に一切の害が無い事、馬車より様々な面で遥かに安全な事を保証します。どうかご安心下さい」


 外ではマルセルさんの指示で、集まった人達に飲み物や一口サイズの食事が配られちょっとした立食パーティーの会場のようになっている。


 当然あちらこちらで今回の騒動の事が話題に上がっており、おおよそ正確に経緯は伝わっているようだった。


 王宮関係者がざわついているのを見ると、恐らく国王様の指示ではなく対立勢力のトップであったダラン独断での行動だったのだろう。


 ちょうど良い機会なので、ついでに俺は集まった人達にバスを見てもらう事にした。

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