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王宮によるバス没収騒動(2)

【今回の登場人物】

シュウ…バスと一緒に転移した主人公

マルセル…ミスズの父であり、ラマノ商会の経営者

ダラン…王宮からやって来たらしい貴族風の男

 主の引継ぎが無事終わったと思わせる事に成功した俺は、用事があるからとその場を後にした。


 俺のポケットにはワイヤレスリモコンとバスの鍵がしっかりと入っている。


 乗用車と違い、一般的に大型バスは遠隔でドアを開閉できるような仕組みにはなっておらず、乗務員が乗り込む時は車外に隠されたスイッチでドアを開ける。


 しかしこのバスは非常に珍しくワイヤレス装置が付いており、以前運転席でそのリモコンを見つけていた事で意思を持つバス風の演出をする事ができた。


 あとはアレを待つだけだ。


 俺が一度部屋に戻ろうと道に出たその時、けたたましい音が商会の裏手から鳴り響く。


「もうやっちゃったのか、短気な幹部様だな……」


 どうせこのまま黒猫亭へ帰ってもすぐに呼び戻されるだろうし、仕方が無いので俺はバスの元へ戻る事にした。


「どっ、どうされたんですか!?」


 さも慌てて戻って来た風を装い渾身(こんしん)の演技でそう尋ねる。


 マルセルさんの説明によると、あれから何度かバスに向かって『開けっ!』と叫んだが一切音沙汰が無く、業を煮やしたダランが無理やりバスのドアをこじ開けようとした所、けたたましい音が鳴り響いたという。


「これは一体どういう事だ!」


 どういう事も何も、無理やりこじ開けたから防犯アラームが鳴っただけだが、そんな事を知らないダランは俺の元へ駆け寄って来てどうにかするよう急かす。


「残念ながら、主の資格を失った今の私には何もできる事はありません……」


「何故だ、なぜ私の言う事を聞かなくなった」


 それは俺がボタンを押していないからだ。


「もしかすると主であるダラン様の魔力が少なかった為に、一度のドア操作で全ての力を使い果たしてしまったのかもしれません」


「何だと? この俺の力が弱いとでも言うのか」


「いいえ、力と魔力は関係ありません。一歳の子供でも魔力を豊富に持つ者はおりますし、最前線で戦う兵士が魔力なしという事もあります。この国では魔法は使われていないと聞きましたので、魔力を認識する機会がなかったのでしょう」


 ちょっと話を大きくしすぎたかなと思ったが、ダランの表情を見ると信じ切っているようだ。よし、このままもう一押し行こう


「しかしそうなるとちょっとまずい事に……」


「ど……どういう事だ」


「恐らく魔力不足によって制御が効かなくなりバスが暴走している状態だと考えられます。このままだと主であるダラン様の生命力……つまり寿命を削り取りながらバスは暴走を続ける事になるかもしれません」


「ふ、ふざけるな! こんな物今すぐぶっ壊してやる」


 途端に顔が青くなりすぐに道具を持ってくるように指示するダラン。


「引継ぎ前にも申しましたが、主というのはバスと生を共にする存在です。今バスを破壊されますとダラン様も……」


「おい、誰か! 今すぐ私と主を交代するのだ、緑の板へ触れろっ!」


 冷や汗を流しながら他の幹部・付き人にそう命令するダランだが、誰も動こうとはしないし、そんな事は想定済みだった。


「これも引継ぎ前に申し上げた事ですが、一度主の交代を行うと一ヵ月間は他の者に所有権を移す事ができません」


「一か月……その間私は大丈夫なのか!?」


「それは私にも分かりません……」


 まさかここまで簡単に信じてくれるとは思っていなかった。


 接触した魔物はともかく、無関係の人間の生命力を奪うような事は無いだろうが、暗示にかかり信じ込んでしまうと本当に寿命を縮める事になるかもしれない。


 これぐらいでそろそろ終わりにしてあげよう。


「しかし以前の主である私に所有権を戻す方法なら無くはありません」

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