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病人の搬送もお任せ下さい(4)

【今回の登場人物】

シュウ…バスと一緒に転移した主人公

ミスズ…王都にある商家の娘

ロンガン…フルーテ領の領主様

「ロンガンさん、ご無沙汰しております」


「これはこれはマルセルの所のお嬢さん、昨日は娘が世話になったね」


 朝俺たちが食堂へと向かうと、そこには既に領主様や昨日旅を共にしたディルさんも揃っていた。領主さんとは面識があると言っていたミスズの言葉通り、二人は何度か会った事がある仲のようだ。


「私がこの街の領主ロンガンです。昨日は取り込んでいて挨拶もでできず済まなかったね、娘をここまで運んでくれた事、深く感謝する」


 名を名乗り握手を交わした俺は、ロンガンさんに勧められ新鮮なフルーツてんこ盛りの豪華な朝食を頂く事になった。メイドさんが言うには、この街はフルーツ生産が盛んで一年中豊富に果実が収穫できるらしい。


「ところでシュウ君と言ったね、早速で悪いんだが昨日ディルから気になる事を聞いてね……キングボアを倒したというのは本当なのか?」


 食事が始まって早々、ロンガンさんがそう切り出す。


 この時、まだ街で起きている騒動の事を知らなかった俺は食事の間の雑談だろう思い、軽い感じで昨日バスで話した事をもう一度話した。


「勿体ない事をしました、知らなかったとは言え高く売れる魔物を置いてきちゃったんですから」


「「「……」」」


 ロンガンさんだけでなく、給仕のメイドまでもが固まっている。


 なにやら様子がおかしい事を察した俺は、その時やっとキングボアが買取窓口に持ち込まれ、街で騒ぎになっている事を知らされた。


「ちなみにその……バスという乗り物はラマノ商会の新しい商品かね?」


「いいえ、あれはシュウさんが異国から乗ってきた物だそうで、私も初めて見ました」


「そう……だったのか……」


 残念そうに肩を落とすロンガンさん、あわよくば購入しようとしていたのだろう。だが俺には一つ気になる事があった。


「ロンガンさん、そのハンター達はキングボアの近くで他に何か魔物の死体を見たと言っていませんでしたか?」


「他の魔物の死体?」


「キングボアと衝突した所から少し王都方面へ移動した所で百匹超のオームボアに襲われました。それらの死体は道に放置したままだった筈です」


「あっ! そういえばそうでしたねっ」


 ミスズも思い出したようだったが、途端に顔色が変わる。それも当然、もしあの時ミスズ達の進む速度がもう少し遅かったら……キングボアと遭遇していたのは自分達だったかも知れないのだから。


「いや、特にそのような話は聞いていなが、それにしても百匹超とは」


 もはやロンガンは驚きを通り越して呆れているような顔だった。


「じゃあオームボアの死体はどこへ……まさか野生動物や他の魔物が食べたとか」


「あれだけの量をですかっ!?」


 段々と事の深刻さが分かり表情が険しくなって来たロンガンさんは、オームボアの大群がどこへ消えたのかもう一度周辺の道を調査するよう部下に命じた。


「君たちはこれからどうするのかね」


「一度王都に帰ろうと思います。ミスズのお父さんも心配していると思いますし」


「そういえば王都への帰り道で娘を助けてくれたんだったな」


 ロンガンは給仕に用意させた紙とペンで何かを書き記すと、娘を運んでくれたお礼と言って金貨十枚と一緒にこの手紙をマルセルさんへ渡すようにと差し出した。


「オームボアの事もあるし、レンナが元気になったら近々王都を訪ねるよ」

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