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びしょ濡れのメイド

【今回の登場人物】

シュウ…バスと一緒に転移した主人公

ミスズ…王都にある商家の娘

ミツカ…レイク村にある宿屋の娘

 二人の宿から湖までは歩いて数分。


 少し歩いた所で視界が開け、湖面に太陽が反射してキラキラと光り輝くとても美しい光景が目に入った。湖のほとりは砂浜として綺麗に整備され、一見するとまるで海水浴場のような雰囲気になっている。


「うわぁ~! なんて綺麗な場所なんでしょう!」


 それを見たミスズは靴を脱ぎ、砂浜を湖の方へと走って行った。


 宿から徒歩圏内にこんな素晴らしい砂浜、これは夏のレジャーには最高だ。暑い季節になったらバスを使って王都から海水浴、いや湖水浴? ツアーでもやってみようかな。


「すごーい、小さい魚がいっぱいいるよっ!」


 ミスズは岩場に移動し湖の中をのぞき込んではしゃいでいる。確かに水中には小さな魚が沢山いるが、まさか襲ってきたりする魚じゃないよな……俺はやや疑心暗鬼になっていた。


「魚型の魔物とかはいないの?」


「私は聞いた事ありませんけど……」


「じゃあこの湖は泳いでも安全なのかな」


「たぶん……」


 そんな会話をしていたその時、


「わっ、わっ、あわわわわわ……」


≪バシャーン≫


 スイーツ好きのお嬢様が身をもって安全に泳げる事を証明してくれた。格好よく助けに飛び込みたい所だが、ミスズの落ちた場所はくるぶし程度の浅瀬。尻もちをついた彼女の周りには魚が集まってきて何とも微笑ましい光景になっている。


「もうっ、笑ってないで助けて下さいよっ!」


「ごめんごめん」


「あぁ、びしょびしょになっちゃいました……もうっ!」


 バシャと立ち上がり、湖から出て来たミスズになぜか怒られる。風邪をひくような気温ではないけど自然に乾くのを待つ事はさすがにできない。


 仕方が無いので一度宿へと引き返してミツカに相談する事にした。


「あっはっはっ、そうですか落ちちゃいましたか」


 大笑いするミツカ。なんでも水中の魚を見ようとして湖に落ちる人は多く、そのような人たちが助けを求めてやって来るのは近くにあるこの宿なのだという。


「あそこのお魚は石を投げても集まって来るんですよ。ミスズさんが落ちた時にも集まってきませんでしたか?」


 ええ、そりゃもう沢山集まって来ましたさ。


 どうやらこの湖にいる魚は石やミスズのような水中に落ちて来た何かに反応して集まってくる習性があるらしく、魚を捕まえるのはとても簡単だが浅瀬にいる魚はサイズが小さいので食用としては今一つなんだそう。


「ちょっと待ってくださいね、服を探してきますから」


 乾燥機などの無いこの世界ではすぐに自分の服を乾かす事ができずお持ち帰りは避けられない。ミツカがトタパタと宿の奥へと消えて行き、しばらくすると白い箱を抱えて戻って来た。


「あの、もう少し地味な服は無かったのでしょうか……」


「すみません、今はこれしか無くって……」


 以前、宿の制服を試作した時に実用性が無いとボツになったメイド服が残っていたらしい。少し恥ずかしそうにするミスズだがこの際贅沢を言ってられず、メイド服を着たミスズを連れて今日の所は王都へ戻る事にした。


「「また遊びに来てください」」


 いつもの席に座り、お土産として貰ったお菓子をポリポリ食べながら早速貸して貰ったメイド服を汚すミスズ。ここから王都まで二時間ちょっとだし、暗くなる前に王都まで戻ろう。


 この時バスのガソリンの残量は八割ぐらいにまで減っていた。

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