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魔物を求めて(2)

【今回の登場人物】

ムツキ…"旅のしっぽ"の共同出店者

ネネ…シュウとムツキが部屋を借りている黒猫亭のオーナー

 普通なら魔物が出てこないという事はこれ以上ない程に歓迎されるべき事だけど、今は少し事情が違う。


 あれから時間は流れバスの時計はもう既に午後五時、このままではバスの中で夜を明かす事になってしまうかもしれない。


「暇ですねー」


「そうね」


「しりとりでもしますかっ」


「「「それはさっきやった!」」」


 みんな相当暇そうにしている。……ついにアレを出す時か。


 このバスは通路を挟んで左右に一席づつのハイグレード仕様、当然設備もそれなりで各座席にはモニターが付いており電波さえ飛んでいればTVだって見れる。


 今までこの世界では利用を控えて来たけど…俺はビデオを解禁する事にした。


 座席のモニターを操作すればいくつかのビデオや映画を楽しむ事が出来る。当然その中には日本の景色や文明が映っているので色々と質問されたら面倒な事になってしまい、上手く言い逃れが出来ないかもしれない。


 まあでもこのメンバーなら別にいいか。


「みんな魔物待ちに付き合わせちゃってごめんね、暇だと思うから芝居でも見ない?」


「「「芝居ですか?」」」


 映画やビデオなんて言ってもどうせ通じないし、この世界でも見世物小屋で行われる芝居はいくつかあるからその方が分かりやすいだろう。


「シュウくんが何かやってくれるんですかっ?」


「いや、今から見せる物の中には俺の祖国の景色や文化とかが出て来るんだけど、その内容はここだけの秘密他の人には絶対に話さないで貰えるかな?」


「「「分かりました」」」


 こうして、ムツキはアニメを、ネネさんは推理物を、ミスズは恋愛物をとそれぞれが希望するジャンルの映画を見始めた。これでだいたい二時間位は持つだろ。


 そして少しでも魔物が寄り付くようにと村で購入した焼き菓子を一つバスの前へと置いておく事にした。これに釣られて小形の魔物でも良いから来て貰いたいものだ。


 三人が映画を見終わったらそろそろ夕食、暇な俺は車外に出て火を起こし夕食の準備を始めた。普段なら匂いで魔物を引き寄せてしまう事を警戒して絶対にしないような調理も今日はできてしまう。


 村で買った肉を炙り、香辛料をたっぷりと使って味付け。パンは少し火で炙る事でまるで焼き立てのような香ばしい香りが広がった。いつも食事は黒猫亭に頼っている俺だけど、さすがにこれ位ならできるよ。


「わぁ美味しそうな匂いー!」


 一番先に映画を見終わったムツキが匂いに釣られてバスから降りて来た。


「今日は魔物を呼び寄せてしまう事を考慮しなくて良いからね」


「へー意外と美味しそうじゃない」


 そこへネネさんもやって来た。料理屋をやってる人からそう言われるとお世辞でも嬉しい。ネネさんは近くに生えていた野草をいくつか採って来て即席でスープを作ってくれた。


「お待たせしましたっ」


 ちょうどスープが出来上がった頃にミスズも映画を見終わったらしく、待たせてしまった事に罪悪感があるのか少し慌て気味にバスを降りて来る。


 満足そうな表情をしているのできっとハッピーエンドだったんだろうな。


「あっ、危ないッ!」


 慌てていたミスズはバスから降りる時に段差を踏み外し、近くにいた俺はとっさに腕を持って支えた。


「……キャ! ……あ、ありがとう」


 ……きゃ? ミスズが小さく発したその言葉の理由は分からなかったけど彼女は顔を赤らめて恥ずかしそうにしている。まあ、いくら暗かったとは言え何度も乗り降りしているバスで転んじゃったら恥ずかしいよね。


 その後みんなで焚火を囲み夕食を終えた俺達は食事の片付けもそこそこにバスで寝る事にした。もちろん俺は見張りとして起きているけど……。

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