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王都の夏祭り(2)

【今回の登場人物】

ムツキ…"雑貨屋 旅のしっぽ"の共同経営者

クラ…国王様の孫娘

「「「おまたせー!」」」


「ヴェ!?」


 元気な少女たちの声に振り向いた俺は思わず変な声を出してしまった。


 その理由は至ってシンプル、そこに立っていた見慣れた三人の少女はさっき俺が絵に描いて説明した”浴衣”にそっくりの着衣を身にまとっていた。


「ちょっと、乙女を見て ”ヴェ!?” は無いんじゃないですかシュウさん」


「そうですね、あれは私も酷いと思いますっ」


「可愛いですよねー!」


「い、いや、もちろん三人とも可愛いよ。ただちょっと驚いちゃって……どうしたのその服は」


「せっかくのお祭りなんだし、シュウ君が描いた絵を見たら意外と可愛かったので着てみたくなって……私の商会の倉庫を漁っていたらそれっぽい物を見つけたんですっ」


 ミスズの商会って本当に何でもあるんだな……


「うん、三人ともすごく似合ってるよ。ほらもうそろそろ日も暮れたし……そろそろ行こうか」


「「「はいっ!」」」


 こうして俺は浴衣を着た少女三人と一緒に夏祭りへ行くという、現実世界では超リア充イベントを異世界で経験する事となった。


 うんたまにはこういうのも良いね。


 お祭り会場に着くと、やはりそこは異世界。日本のいわゆる夏祭りとは雰囲気が全く違いアジアのナイトマーケットのような喧騒とした雰囲気の中、至る所で酒が振舞われ、音楽が演奏され、それに合わせて踊り・陽気に歌う人で溢れていた。


「凄いね、こんな賑やかなお祭りがあるんだ。でも確かにこれは浴衣って言う雰囲気でも無いかな」


「一年に一度この王都で行われる最大のお祭りなんですよっ」


 ムツキとクラちゃんは早速近くにあったゲームのお店へと吸い寄せられている。倒したビール瓶の本数によって景品が貰えるいわゆるボウリングのようなゲームだ。


「ぎやぁぁー! 一本も倒れないってこれ、おじちゃん取らせる気無いでしょ!!」


 ムツキがひときわ大きな声で騒いでいるけど、お祭りなんてそんなもんでしょ。


「シュウ君、あっちでみんな踊ってますよ。行ってみませんか?」


「そうだね」


 踊りと言ってももちろん盆踊りではない。この国で古くから歌い継がれる伝統的な音楽らしく毎年このお祭りで流すのが慣例となっていると説明してくれた。


 特に決まった踊り方は無いのか、皆それぞれ自由に身体を動かして楽しさを表現している。


「シュウ君も踊りましょ!」


 踊りなんて踊った事の無い俺は手足をぎこちなく動かすのが精いっぱいだが、ミスズは優雅に踊っている……さすがお嬢様なだけはある。


 そんな俺を見かねたのかミスズがいきなり俺の手を握って来て、釣り合わない二人による謎のダンスが始まった。



――なっ!


 踊りの楽曲として流されているこの伝統音楽、俺の耳に入って来たその歌詞は決して聞き流す事の出来ない物だった。


「わわっ、どうしたんですかシュウ君」


「”暗闇が水を包む時、静まり返った村は魔物によって滅び猫神様に力が宿る”……これって……」


「えっ、どうかしたんですか?」


「この歌って昔から歌い継がれる伝統的な物だって言ってたよね、後で詳しく教えて貰えないかな」


「わ、分かりましたっ」


 俺がこの世界に来てしまったのは猫のスパイスケース、いわゆる猫神様の影響である可能性がある。そこに力が宿るという事は……静まり返った村って……

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