王宮による調査
【今回の登場人物】
アルベロ…王宮兵の隊長
国王様…国王様
ムツキ…"雑貨屋 旅のしっぽ"の共同経営者
「アルベロさん、あの巨大な魔物は最初逃げたんですか?」
「そうだ、いくら巨大とは言えハイウルフなのに逃げ出すなんて俺も変だと最初は思ったんだが……」
やっぱりハイウルフが敵に向かって来るというのは周知の事実のようだ。それなのに俺達が討伐したあの八匹のハイウルフも一目散に逃げ出していた。
「人間が戦うように指示を出した途端に襲って来たんですよね」
「正確に言葉を聞いた訳では無いが、俺達を指さして”戦え”と命令していたような気がしたよ」
「あのハイウルフ達は敵と遭遇したら逃げるようにと教え込まれていたんだろうな」
そうなのかと不思議そうな表情のアルベロさんに、俺達が討伐したハイウルフ達の奇妙な行動と紋章付きの首輪に関する俺の推測も説明した。
暫くの間はハイウルフが村に来る事も無いだろうが、相手の正体が分からない以上は事件は解決していない。それに元々の依頼であるラフロさんの家族もまだ見つかっていない……。
その日の午後、王都へと戻って来た俺とミスズはまだ傷が癒えていないアルベロさんを交えて国王様と四人で王宮の応接室に居た。
「なるほど……私が思っていたよりも面倒な事になっているようだな」
話を聞いた国王様は頭を抱えそう呟いた。
俺が気になっていた首輪の件も王宮で調査してくれる事になり、首輪の現物が手に入った事で隣国へは遣いを出して今回の事件に対して話し合いの場を設けるという事になった。
そして国王様はこう続けた
「シュウ君、今回は大変危険な状況で協力をしてくれてありがとう。ここからは暫く私達に任せて貰えないかな……また隣国との会談の時には協力をお願いする事になると思うが……」
「分かりました。俺の方でも何か分かった事があれば報告するようにします」
「そうして貰えると助かるよ、感謝する」
俺は国王様から今回の報酬と魔物達の買い取り報酬、そしてレイク村のミツカに対しての謝礼も一緒に受け取り王宮を後にした。
「しばらく旅のしっぽを空けちゃったけどムツキ大丈夫かな……あ、でもミスズは早めに自分の屋敷へ顔を出しておきなよ」
「はーい」
岩穴の人間を取り逃がしてしまった以上、手掛かりは隣国の紋章が入った首輪だけ。暫くこの件は王宮に預けるしか無いようなので俺達はひとまず通常業務に戻る事になった。
そのうちレイク村へも行ってミツカに謝礼金を渡して……そしてラフロさんにも王様と話した事を伝えなくっちゃ。
「「ただいまー!」」
「あっ二人ともお帰りなさい! 心配したんですよもう……昨日は国王様もお店に来て大変だったんですから」
「ごめんごめん、今回の依頼は本当に大変だったんだよ」
「あと依頼をしたいという人が一人来ましたよ」
「本当に!? ありがとう」
ムツキから受け取った一枚のメモには依頼主の物と思われる住所が書かれていた。
「じゃあ早速依頼主さんの所へ行ってみましょうっ!」
「いや、ミスズはまず自宅に戻ってマルセルさんに顔を見せておいで。きっと心配していると思うから」
「……はいっ」
後から聞いた話によるとマルセルさんは上機嫌だったそうだ。なんでも国王様が直々に商会へ訪れた事によって王宮が贔屓しているという噂が立ったらしく、売り上げが一気に伸びたのが理由らしい。