深夜の捕縛作戦(4)
【今回の登場人物】
ミツカ・ヨツカ…レイク村で宿屋を経営する姉妹
アルベロ…王宮兵の隊長
翌朝、俺とミスズは負傷した兵士十七名と討伐した八匹のハイウルフ、そして巨大なハイウルフから切り取った首輪を持ち、一度王都へと戻る事にした。
一晩休んだからと言ってそう簡単に回復する訳では無く、バスを使えばほぼ負担なく王都まで搬送できる以上は王宮でけがの治療をして貰った方が良い。
それにアルベロ隊長率いる部隊が襲われた件についても国王様に詳しく状況を報告し、今後の対策を練らなくてはいけない。
「ミツカ、ヨツカ、昨晩はありがとう。宿泊代については王宮から出る筈だから後日持ってくるよ」
「いえいえ、皆さん少しだけですが元気を取り戻したようで何よりです」
帰りは怪我人が多数いるのであまりスピードを出す訳にはいかない。できるだけ揺れが少なくなるよう慎重に運転をしよう。
「アルベロさん、昨日の夜は一体何があったんですか?」
俺はバスを運転しながら後ろの席に座るアルベロさんへと問いかけた。
「昨夜俺達の部隊は例の岩穴を囲むようにして森の中へ身を潜めていた。そしたら穴から八匹のハイウルフが列を成して村の方へと歩いて行ったんだ。そこまでは予定通りだろ?」
「そうですね……村には前日とほぼ同じ頃に八匹のハイウルフ達が来たのでその場で全て討伐を行いました」
「全く……巨大ハイウルフの件と良い、八匹のハイウルフを一瞬で倒してしまうなんて本当凄い奴だよなお前は……」
少し呆れたような表情でアルベロさんはそう言い話しを続けた。
「ハイウルフ達が十分に離れたのを確認した俺達の部隊は計画通り岩の隙間に突入したんだが……そこには三人の人間と一緒に例の巨大ハイウルフが居たんだ」
「なっ……じゃあやっぱりあいつらは遠吠えでボス的な存在のあの巨大ハイウルフと連絡を取り合っていたんじゃ……」
「ああ。確かにその可能性はあったかも知れないな」
「それで、その後はどうなったんですかっ!?」
ミスズも話に食いついて来た。
「俺達を見た三人の人間達と巨大ハイウルフは一目散に穴の奥をめがけて逃げ出したんだ」
「「えっ、逃げ出したんですか?」」
「そうだ。だがその直後に一人の人間が魔物に向かって”戦え”と命じ、それを切っ掛けにして急にあの魔物が俺達に向かって来やがったんだ」
「その、三人の人間というのは隣国の兵士だったんでしょうか」
「暗くて良く見えなかったんだが、何となく俺はあいつらは兵士じゃないと思う」
「それは何でですか?」
「いや、根拠なんて無い単なる俺の第六感って奴だよ。あいつらからは何というか戦志というか戦う者のオーラが感じられなかった。どちらかと言えば魔術士とかそっちの類だろうよ」
「魔術師!? この国には魔法の類は無いと聞きましたが……」
「魔法とはまた別だよ。魔術師と言うと王都では疫病の研究や植物類を改良したり、毒薬を作り出したり……まあ植物の改良ができるんだから魔物をいじって巨大化させる事だってできるかも知れないな」
アルベロさんの話を聞く限り魔術師というのはどうやら地球で言う科学者に相当するような人たちの事らしい。
文明がそこまで発達していない以上、この世界の人達からすれば植物を改良したり疫病の原因を突き止めるなんて芸当は魔術のように感じられてしまうのかもしれない。
それに今の話の中で俺にはもう一つ気になる所があった。