異変②
「いいね、いいよ!とってもいい、その顔!絶望に歪んだその表情が見たかったんだよ!ここまで周到に準備した甲斐があったってもんだ!」
崩れ落ちたサキルの耳に、嗜虐と狂気を孕んだ声が届いた。
人の不幸を心から悦ぶ、悪魔のような声音だった。
四人ははっと顔を上げる。
かつてオーラクス城がそびえていたはずの更地に、ひとりの男が立っていた。
切れ長の大きな目に、通った鼻筋。
整った顔立ちで、黙って立っていれば好ましく映る者もいるだろう。
「君達、今どんな気分かな?」
だが、その声音と、青紫に妖しく光る瞳、そして歪んだ笑みが、すべてを異質なものに変えていた。
崩れ果てた街を前にしてなお笑っていられる時点で、まともな存在でないことは明らかだった。
着ている衣も異様だった。
着流しのような布衣を袖と裾で括り、動きやすく仕立てている。
それだけなら、戦場や労働の場でよく見かける実用的な装いだ。
だが、その布地には青と黒の波紋が描かれていた。
この世界で凶兆として忌み嫌われる文様を、男は平然と纏っている。
いつからそこにいたのかもわからない。
気づいた時には、もういた。
「不気味」という言葉では片づけられない何かが、その男にはあった。
そして何より、サキルはこの男を知っていた。
どこかで会ったはずだ。
思い出そうとするたび、頭の奥を這い回るような痛みが走る。
放っておいていい記憶ではない。本能がそう告げている。
だが、今ここで記憶を掘り返せば、それはそのまま隙になる。
サキルは痛みごと、その引っかかりを押し込めた。
それよりも、聞き捨てならない言葉があった。
——準備した。
つまりこの男こそが、オーラクスの異変を仕組み、ナバと自分達の宿願を踏みにじった元凶だということだ。
「どういう意味だ、貴様」
サキルが口を開くより早く、フェインが詰問した。
その横顔は険しく、いつになく刺すような気迫を帯びている。
並の者なら、目を合わせることすらできないだろう。
だが男は、その怒りさえ楽しむように笑みを深めた。
「いやいや、どういう意味も何もないよ。街に誰もいなくて焦って探し回って、やっと見つけた城も偽物で、そして今、絶望に堕ちた……そんな場面に、僕がわざとらしく現れたんだ。気づかない方が不自然じゃない?」
「お前は……!!」
今度こそ、サキルの中で抑えていた激情が弾けた。
この男はすべてを見ていた。
そして、それを面白がるためだけに、わざわざ姿を見せたのだ。
怒りが煮え滾る。
サキルは剣を抜き、殺意のままに男へ飛びかかった。
「貴様ぁぁぁ!!」
フェインもまた叫びと共に大地を操る。
土が盛り上がって鉾となり、猛る蛇のように男へ襲いかかる。
「許さない!!」
リセが震える手で矢をつがえる。
「ナバ様に何をした!」
普段は穏やかなホーキフまでもが怒声を上げ、剣を抜き放った。
放たれた斬撃は、先ほど偽りの空間を破った時よりも鋭い。
男に向けた濃密な殺気が、その威力を押し上げているのだろう。
怒りに呑まれていても、四人の攻撃は互いを邪魔しない。
長く共に戦ってきた者同士の呼吸が、無意識に間合いを揃えていた。
男はサキルの袈裟斬りを横に跳んでかわし、フェインの土鉾を薄緑色の障壁で受け止める。
続くホーキフの斬撃は、障壁を張らずに身を捻って避けた。
水気を帯びたホーキフの斬撃は、物理的な壁をすり抜けて切り裂く。
それを一目で見抜いたのだろう。
やはり一筋縄ではいかない。
だが、そこまでは織り込み済みだった。
三人の攻撃は、男をある一点へ追い込むためのものでもあったのだ。
「フッ!」
鋭く息を吐き、リセが矢を放つ。
矢はまっすぐ、男の着地点へと吸い込まれていく。
「くっ!」
男が小さく呻き、跳んで逃れようとする。だが、遅い。
「食らいなさい!」
リセの凛とした声に応え、矢が眩い閃光を放った。
次の瞬間、轟音が大気を震わせる。
ただでさえ何もない更地を、さらなる破壊が呑み込んだ。
あの威力なら、骨ひとつ残っていないはずだ。
あるいは障壁で凌いだか。
いずれにせよ、確かめなければならない。
四人は粉塵の向こう、爆心地に目を凝らした。
「いない……か」
「やったね」
「よし!」
サキルの呟きに、リセとホーキフが頷く。
念のため気配を探ってみたが、何も感じない。
仕留めた、と見ていいはずだ。
だが、フェインの表情は晴れなかった。
「……奴の言葉、それにこのオーラクスの有様が気にかかる。ナバ様に限ってやられるなどあり得ないとは思うが……」
オーラクスに異変を起こし、ナバ達をどこかへ消した元凶があの男なら、手掛かりそのものを吹き飛ばしてしまったことになる。
「フェインの言う通りだ。ナバ様を探そう」
サキルも同じ考えだった。
街は壊され、主の行方は知れない。一刻も早く動かなければならない。
四人は頷き合い、死の街へと踏み出そうとした。
その瞬間、あの「悪い予感」が背筋を走った。
「だめだよ、まだゲームは始まってもいないからね?」
「なっ!?」
サキルは本能のままに地を蹴り、爆心地の方へ跳んだ。
「え?」
「なんで!?」
「くっ!?」
一瞬遅れて、フェインとリセ、ホーキフも同じ方向へ跳ぶ。
消し炭になったはずの男が、四人のすぐ背後に立っていた。
「ははは、まぁまぁ、そんなに怒らないでよ。僕はただ、君達と楽しいことがしたいだけなんだからさ」
何事もなかったかのように、男は平然と笑いかけてくる。
見世物を眺めるような態度も、不気味に光る青紫の両眼も、何ひとつ変わらない。
いや、薄気味悪さはむしろ増していた。
「貴様……何が目的だ」
フェインの問いは、四人全員の疑問でもあった。
どんな手を使ったのかはわからない。
だがこの男は今、四人の意識から完全に消え、背後の至近に現れたのだ。
その気になれば、あの一瞬で皆殺しにできたはずである。
なのに、しなかった。
殺すことが目的でないなら、この男は何を望んでいるのか。
「何が目的……か。ふふふ、だから言ってるじゃないか。僕は君達と遊びたいだけなんだって。そう、面白いゲームがしたいんだよ」
はぐらかしているのか、本気でそう言っているのか。判然としない答えだった。
どちらにせよ、付き合っている暇はない。
「……貴様に構っている暇はない。ナバ様と直下軍、それにオーラクスの住民について、知っていることを全て吐け」
フェインが敵意を研ぎ澄ませる。
同時に、サキル達三人も言葉を交わさぬまま呼吸を合わせ、戦闘態勢をとった。
皮肉なことに、背後を取られたことで頭は冷えていた。
怒りはそのままに、思考だけが澄んでいく。
今のは、男が手の内をひとつ明かしたということでもある。
次に同じように意識の隙間を突かれたら、無事で済む保証はない。
だが、知ってさえいれば備えられる。
「二度と同じ手は食わんぞ」
フェインの低い声に、サキルも内心で頷いた。
数々の修羅場を潜り抜けてきた他の三人も、同じことを考えているはずだ。
もっとも、それは男の側も承知しているだろう。
まだ見せていない手もあるに違いない。慎重に、確実に追い詰めなければならない。
四人が再び踏み込もうとした、その時——
「うーん。でも、君達の愛しの愛しのナバ様の身柄を押さえてる僕に、刃向かっていいのかな?」
「!?」
刃のような一言が、四人の足をその場に縫い付けた。
言葉の中身もさることながら、このタイミングで切り出したことが、動揺をいっそう深くする。
「……貴様、まさか……いや。ならば最初からそう脅せばいいだけの話だ。貴様の戯言に乗ってやる義理はない」
フェインはすぐに我に返った。
生来の胆力か、あるいは誰よりも強いナバへの想いゆえか。
素早く筋道を立てて三人を落ち着かせ、話に付き合う無意味さを突きつける。
だがそこには、そうであってほしいという願いが、確かに混じっていた。
「ふふふ、まぁ信じたくないのもわかるさ。会ったばかりの僕の言葉だけじゃ、どうしても……ってとこかな? じゃあ仕方ない、見せてあげよう! ふふ、色んな意味で動揺すると思うけどね」
男はフェインのその願いを見透かし、憐れむように嘲った。
優越感に浸るような口ぶりの奥に、隠そうともしない興奮がある。
不用意に動くことをためらわせる、底の知れなさ。
だが——
「戯言はいい。早く答えろ。ナバ様をどこにやった」
サキルは、もう一秒たりともこの男に時間を奪われたくなかった。
誰よりも大切で、自分にとって至上の存在であるナバの命が、今まさに弄ばれているかもしれない。
そう思えば、平静を装うことなどできるはずがなかった。
「…………」
リセもホーキフも、黙ったまま男を睨み据えている。
口にせずとも、同じ想いを抱いていることは伝わってきた。
四人の態度は、脅しには屈しないという、何よりの意思表示だった。
「ははは! いいね、実にいい。その強がりがどこまで保つのか、楽しみで仕方ないよ!」
思い通りに運ばないことさえ、男は愉しんでいるようだった。
狂気を孕んだ嗤い声が、更地に響く。
「でも、まだまだ足りない! もっと……もっと絶望を見せてよ。お楽しみはこれからだ!」
男は右手を掲げ、気障ったらしく指を鳴らした。
——パチン。
次の瞬間、空間が歪んだ。
その中から——
「……ナバ様……?」
当惑の声が、サキルの口から零れた。
歪みの中から現れたのは、紛れもなくナバだった。
城跡の左手、崩れかけた廃屋の二階。
その高みに、四肢を縛られ、磔にされている。
見たところ外傷はなく、意識を失っているだけのようだ。
だが、それはつまり——
「なぜ……あれだけ探していたナバ様を、俺達は……」
城跡を見て回った時、あの廃屋も目に入っていたはずだ。
隠されていたとはいえ、すぐそばにいたナバを見落としていた。
その事実に、四人は愕然とした。
「わたし……どうして……」
フェインの声はか細く震えていた。
先ほどまでの毅然とした態度は消え、普段は決して漏らさない女言葉が零れるほどに、彼女は動揺していた。
空間を自在に操る力。
それはもはや、四人の常識の及ぶところではなかった。
「はぁあ……あんなにナバ様ナバ様って繰り返してたくせに、まさか素通りとはね。君達、一体何がしたいの? この前の戦だって、ナバ様がいたから勝てたっていうのにさ……まさか、恩を仇で返すつもりなのかな?」
男は子どもをからかうように言葉を並べ、残酷に嗤った。
「黙れ……貴様には関係ない。……だが、なぜこの前の戦のことを知っている。情報統制は敷いていたはずだ。百歩譲って漏れていたとしても、なぜそこまで詳しい」
フェインが声を絞り出す。
立ち直ろうとしているのはわかったが、動揺は隠しきれていない。
男は楽しげに目を細め、意地悪く続けた。
「ふふふ、そこは秘密ってやつさ。でも、君達のことはよく知ってるよ。軍を率いていたのはフェインくん。リセくんとホーキフくんは皆の心の支え。そして——サキルくん」
その名を呼ぶ時だけ、男の声に妙な熱がこもった。
ねっとりと絡みつくような響きに、サキルの背筋が粟立つ。
——なぜ、ここまで知っている。どうやって調べた。
疑問が渦巻く中、サキルはとうとう口を開いた。
「……お前は、何者だ」
声に、わずかな震えが混じった。
リセもホーキフも黙り込む中、その問いは本能の奥底から絞り出されたものだった。
頭の奥の痛みが、また疼く。
「いやいや、君達はもう僕のことを知ってるはずだよ。知ってるくせに知らないフリをして、僕を騙して優位に立とうとしてるんだろう?」
男は全てを見透かすように、青紫の瞳でじっとサキルを見つめた。
「だから、まずは自己紹介から始めようか」
両腕を大仰に広げる。
天に祈るような仕草のまま、神を冒涜するような笑みを浮かべて、男は言い放った。
「僕の名は、タシュア・イーライグ。巷じゃ『死眼の悪魔』とか『紫蝕の悪魔』なんて呼ばれてるけど、好きな方で呼んでくれて構わないよ!」
その名こそが、破滅の象徴だった。
運命の歯車は、この瞬間から狂い始めた——。
***
「ゲーム……だと?」
サキルはもはや警戒を隠さなかった。
タシュアが現れた時から嫌な予感はあった。
捕らえられたナバを見せつけられた今、それは確信に変わっている。
この男の言葉には、一つひとつに悪意と毒が潜んでいる。信じるに足るものなど、何ひとつない。
「そうそう。君達が勝てたら、大事な大事なナバ・セルフェウスと、その直下軍、ついでに街の人達も解放してあげるよ」
親切心から提案しているかのような調子で、タシュアは続けた。
もちろん、そんな報酬を信じられるはずがない。
本当に解放するつもりがあるのか。ナバ以外の者達が生きているのか。何ひとつ保証はない。
そもそも、ナバ達を襲って捕らえ、こんな悪趣味な遊びを持ちかけている時点で、目的はサキル達を弄ぶことでしかない。
これまでの言動が、それを物語っていた。
「もちろん、君達に選択権なんてないけどね。乗らなくてもいいけど、その場合は不戦敗。君達も含めて、全員処刑ってわけ」
タシュアは楽しげに肩をすくめる。
「まあ、僕の言葉が信用できないのはわかるよ。でも、君達が勝ったら必ず全員無事に帰してあげる。それに、僕の身柄も好きにしていい。各国で指名手配されてる僕を引き渡せば、莫大な報奨金がもらえるよ? ね、勝てばいいこと尽くめだろ?」
要するに、拒否は許されないということだ。
街の異変を偽りの空間で覆い隠し、誘い込み、捕らえたナバを見せつけ、逃げ道を塞いだ上での宣言。
直下軍も、住民も、大将軍ナバ自身も、殺さずに捕らえているという徹底ぶり。
すべては、サキル達の心を縛るための計算だった。
「…………仕方ない。そのゲーム、受けてやる」
長い沈黙の末、フェインが苦渋の決断を下した。
サキル達にとって、ナバは命よりも重い。
タシュアの言葉がどれほど胡散臭く軽薄でも、ナバを救う道がそれしかないのなら、乗るしかなかった。
だが、馬鹿正直に従うつもりなどない。
隙を突いてタシュアを引き離し、できることなら討ち取って、ナバを取り戻す。
フェインも、サキル達も、その機をうかがっていた。
「ふふふ、そうこなくっちゃね! 大丈夫、そんな顔しないでって! 僕は何があっても、約束だけは守るからさ!」
だがその言葉さえ、サキル達の腹の内まで織り込み済みであるように聞こえた。
状況の設定も、ナバを人質にとる構図も、すべてはタシュアが最初から敷いた盤の上なのではないか。
そんな疑念が、拭えなかった。
「とりあえず、君達の大事な大事なナバ様は、僕の仲間に預かってもらうね」
サキル達が最も恐れていたのは、まさに人質の扱いだった。
タシュアはそれを、あっさりと口にした。
仲間に預ける。
近くに気配など感じないのに、仲間が控えているというのだ。
その仲間がタシュアと同等、あるいはそれ以上の力を持っているかもしれない。想像するだけで胃が軋んだ。
「なっ!? 貴様、ナバ様をどこへやる気だ!」
ホーキフの怒号が響く。
「どこって? 大丈夫だよ。空間をちょっといじって、仲間のところに送るだけ。僕に勝てたら、ちゃんと出してあげるからさ」
言うが早いか、磔にされたナバの周囲で虚空が割れた。
底の見えない黒い渦が口を開け、その身体を呑み込んでいく。
「待て、それで納得すると思うのか! ナバ様を戻せ! 人質の無事がわからなければ、ゲームなど成立しない!」
フェインが食い下がる。
サキルも怒りを堪えきれず、声を上げかけた、その時——
「もう、心配性だなあ。ほら、無事ですよぉ〜っと」
同じ場所に再び空間が開き、ナバが吐き出された。
四肢は縛られたままだが、傷はない。
うっすらと目が開いている。意識が戻ったのだ。
だが、安堵したのも束の間だった。
すぐにまた空間が開き、ナバは引きずり込まれていく。
「ナバ様!!」
「貴様ぁぁぁぁぁっ!!」
サキルとリセ、ホーキフがその名を叫び、フェインが怒声を叩きつけた。
「もう、そんなに怒らないでよ。生きてるってわかったんだから、いいでしょ? じゃ、次はルール説明ね」
タシュアは何事もなかったように笑い、続けた。
「ルールは簡単。君達四人と僕で戦う。僕は君達を全員捕まえたら勝ち。君達は、僕の体のどこでもいいから、掠り傷ひとつ負わせたら勝ち! どうだい? 断然君達に有利な、サービスルールってやつだよ?」
「……待て。それではお前に不利過ぎる。何が狙いだ? それとも……俺達を舐めているのか?」
フェインが思わず問い返した。
サキル達も同じ疑念を抱いていたが、交渉を乱さぬよう口を閉ざす。
なぜ、自分に圧倒的に不利な条件を出すのか。
本当に負ければ、タシュアには何の得もない。
かといって、負けた途端にルールを反故にされるなら、勝利そのものが無意味だ。
「ぷっ、あははははっ! いいねぇ、そこまで考えてくれるなんて、本当に君達は僕好みだなぁ。疑い深いのなんのって。これまでの準備が報われるってもんだよ!」
サキル達の疑念を、タシュアは玩具でも転がすように笑い飛ばした。
その姿は愉悦に満ち、もはや快楽の域にある。
——こいつは、本当に何がしたい。
サキルは内心で呻いた。
これほど読めない相手は初めてだった。
目的も思想も語らず、ただ混沌と悪意を垂れ流している。
「御託はいい。早く始めろ」
フェインが言葉を断ち切った。
「まぁまぁ、焦らないでよ。最後に、どうしてこのルールにしたかだけ教えてあげる。深読みする必要はないよ。理由は単純」
タシュアの目が、すっと細められた。
口調は変わらない。
ただ、言葉に込められた気配だけが一変した。
「君達程度じゃ、掠り傷ひとつ付けられないと思っただけさ」
——!
場の空気が凍りついた。
四人は声もなく息を呑む。
揺るぎない自信。そしてその奥にある、圧倒的な力の実感。
それが否応なしに肌を撫でていった。
いよいよ、本性が覗き始めたのか——。
「はっ、上等だ。ナバ様に手を出したこと、ふざけた条件を突きつけたこと——その全てを後悔させた上で、葬ってやる」
サキルが剣を構え直す。
「私は特に、ナバ様に手を出したことを後悔させてあげたいわ」
「僕も、絶対に許さない」
リセとホーキフが並び立つ。
最後にフェインが、低く告げた。
「作戦は、前に打ち合わせた通りで行く。使う機会はなかなか来なかったが、今こそその時だ。あとは臨機応変に頼む」
駆け引きも理屈も、もう関係ない。
四人には、絶対に譲れないものがある。
成すべきことはただひとつ。目の前の悪魔を打ち倒すことだけだ。
「準備はいいみたいだね。さあ——ゲーム開始だ」
狂気に満ちた声が、死を招く饗宴の始まりを高らかに告げた——。




