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宿屋と傭兵



 酔いつぶれてから目が覚めると、見慣れない部屋だった。


「あ、お兄さん目が覚めた」


 若い娘が声を掛けてきた、ふらつく頭でここはと訪ねる。


「私の家」


 酒の勢いでやらかした!?、血の気が引く気がした、それを見た娘はケタケタと笑う。


「家は村にある酒場付きの宿屋よ、昨日の夜に帰ってきてから昼前ぐらいまで飲んで潰れてね、騎士の人達は奥さん達に首を引っ張られて連れていかれたけど、いつもだとそれで終わったから貴方に気が付かなくて、酒場で突っ伏して寝てたのをお父さんが貴方を見付けてこの部屋に投げ込んで行ったの」


 騎士の連中は薄情だなと思いながら身体を起こすと同時に腹が鳴った、腹が鳴った音を聞いて宿屋の娘は再び笑いだす。


「丁度良かった、お父さんが傭兵さんが起きていたら食事に誘えって」


 立ち上がり宿屋の娘の後を付いていく。

 辿り着いたのは酒場であったが客の姿が見当たらない、そして背後に気配を感じて振り返ると巨大な男が立っていた、身構えると宿屋の娘が横に来た。


「お父さん、お客さんの背後に立ったらだめって、お母さんに言われてるでしょ」

「すまん」


 宿屋の主人がこちらを向き直って話しかけてくる。


「もう体調は良いのか?」


 威圧感のある大男から心配されると何とも言えない感じがする、大丈夫と答えるとたぶん笑ったのだろう、宿屋の主人の笑顔は怖かったが、その怖い主人をお盆で叩く女性がいて戦慄を覚えた。


「あなた、お客を怖がらせてどうするの、あなたはただでさえ怖いのに笑ったら近所の子供達に泣かれるだから普通の顔をしていなさいよ」


 お盆で主人を叩いたのご婦人は、宿屋の女将さんだった。


「傭兵さん、お腹がすいているでしょう、ここに座って待っていて、ほら貴方も手伝って、あ、準備している間は、家の娘とでも話していてください」


 宿屋の女将さんは主人を連れて調理場に入っていく、席に座ると宿屋の娘は飲み物を持ってきて正面に座った。


「はい傭兵さん、二日酔いには搾りたての乳だよ」


 のどが渇いていたので助かると言って一気に飲み干す、宿屋の娘が笑顔でお代わりを持ってくる。


「傭兵さんは今は何処に住んでるの?」


 住処?そう言えば初日はダイアナの客室を借りて仮眠していたが、そのまま夜は仕事をして宿屋で酔いつぶれたから活動拠点が決まっていない事に今更ながら気が付いた。


「傭兵さんは本当に根無し草なんだね、泊まる所に困ったら家の宿があるからよろしくね」


 外を見て朝日が昇っている事から、昼に潰れてからそのまま朝まで寝ていたことに気が付いて、昨日の宿泊費を尋ねる


「お父さんとお母さんが昨日分はいいって言っていたよ、昨日は丁度よく宿泊の客が引き上げていったから部屋は空いていた問題無いよ」


 等と話をしていると女将さんが良い匂いのするスープをテーブルに並べて、主人は調理場からのカウンターに出来上がった料理を置いていた。

 テーブルに所狭しと料理を並べると宿屋の家族はお祈りする、じっと祈りが終わるのを待っている傭兵を見て宿屋の娘が聞いてくる。


「傭兵さんはお祈りをしないの?」


 傭兵は祈りはしない答える、傭兵稼業で戦場で祈りは邪魔な物でしかないのだ、戦場において司祭か信者でも無い限り祈らないのだ、傭兵なんかは死際ぐらい祈らない人種が殆どだ、たまに信仰深い奴は祈っているがと答える。


「ほら冷めるわよ、傭兵さん、この子はこの村しか知らないからね、たまにで良いからこの子の話相手になってちょうだい」


 食い物で口いっぱいになっていたので、首を縦に振って答える


「ありがとね、傭兵さん、一杯あるからたんとお食べ」


 この家族を見て思ったが、この宿屋を活動拠点にしても良いと思った、食事が終わったらダイアナに聞きに行ってみようと思った。



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