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殿(しんがり)


 契約が済んだ事で武器や防具が返却される、刃毀れや不具合と防具の解れを確認しているとダイアナが前に立って何やら言いたそうな顔をしている。

 適当な所で顔を上げてダイアナを見る、ようやく話が出来ると思ったダイアナは椅子に腰を掛けた


「早速だが今夜敵部隊に強襲を掛ける、そちにも参加してもらう」


 そうか今夜か、って今日雇ったばかりの傭兵を使うか!?、使うのは構わないが連繋の練度は傭兵に求めても無駄だけど、味方の顔すら知らないのだが、最悪同士討ちになるぞと言ったダイアナは


「大丈夫だ、そちは今回の作戦は強襲後の撤収時に殿するだけだ」


 ああ、撤収時の殿ね、それなら味方の顔知らなくても大丈夫だな───っておい、いきなり殿を雇ったばかりの傭兵使うか?


「我の兵は今欠員が出ておってな、本来なら殿は余裕が有ったのだが、そちが前回の戦場で暴れ回ってくれた御陰でな少々欠員が出ておるからの、それでは責任を取って貰うという事でそちが殿じゃ、報酬分は仕事をするのじゃろう?」


 そう言われればこっちの責任なのか、まあ、何はともあれ仕事だ、それで報酬は?


「うむ、撤収時だからな成功報酬になるが良いか?」


 報酬が出るだけましだ、酷い雇い主だと仕事が終わったら報酬の代わりに刺客を寄越してくる奴もいるからな。


「それは何とも凄い人生を歩んできたんだな」


 そうか?、周辺にいた奴らは大体こんなもんだった、それよりも出発の時間まで寝るは、用があったら起こしてくれよ。


「うむ、ではまた後でな」


****************


 光の無い深夜、まさに敵地に強襲を掛けるには絶好の夜だな、そんなことを考えるいると近付いてくる人の気配がする、灯りも無いので星の光で手前まで来てようやく顔の輪郭が浮かび上がった


「お前がお嬢がお気に入りの鳴り物入りか」


 鳴り物入り?今日初めて仕事をするのだが、どんな噂が流れているのやら、ダイアナのお気に入り?冗談だろう、お気に入りに初日から死んでこいて言う雇い主が何処にいるんだよ普通!?

まぁ、それは置いといて、それよりもあんたが隊長さんかい?


「そうだ、第一機動部隊を率いている」


 なら話が早い、撤収時の隊列なんだが二列縦隊で駆け抜けてくれ、走行可能な所に印を付けとくから、よろしくな隊長さん


「何故お前の指示を聞かねばならん?」


 柔軟性に欠ける隊長さんだな、まあ、全滅したければ別に構わないけど、全滅したらお嬢に隊長がと伝えるだけだからな。


「ぐぅ、り、了解した」


 はいはい、それじゃいってらっしゃい。

 納得していない顔で部隊に方に戻るが、流石に騎士なだけに主に対しては忠実の様だ。


 さて、隊長さんが言うことを聞いてくれるかで次第で戦局がかなり変わるな、部隊が出陣していく音を聞きながらこちらも準備に取りかかる


 騒音と共に奇襲が始まり敵陣地の至る所で火の手が上がる、その風景は暗闇が一気に夜明けのような茜色などに染める様だった、敵の混乱に乗じて目標の兵糧貯蔵庫から火の手が上がる。



 程なくして撤収のラッパが鳴り響き騎馬達が目の前を通り過ぎていく、隊長さんはこちらの言いつけを守って二列になって印通りに駆け抜けていく、横を通りすぎる際に「後はお前の仕事だ」と言って去って行く。


 森の道の真ん中で、腕を組んだ状態で仁王立ちで敵軍を待ち構える、間を開けずに追っ手が森に入って来る、迫ってくる敵を見ても未だに武器を構えずに不動を決め込んでいる。


 敵との距離が残り半分ほどになってから、ようやく手をその場で振り下ろす動作をする、すると道の両サイドから丸太や矢が飛来する、混乱が戦場を支配し始める。

 罠を通り抜ける何名かが襲来が、あと少しで届く時に突然浮遊感に襲われる、罠の中でも一番悪辣で創世以来一番多用され単純で効果的な罠つまり落とし穴である、勿論落とすだけでは無く殺傷力を高めるために落下地点には突起物を設置してある、まさに落として殺す。


 傭兵は罠に掛かった事を確認してから踵返して全速で走り出していく、馬で追っ手が追いかけてくるがその進行速度は牛歩を彷彿させる、敵の軍が罠がもう無いと思う頃に、再び罠が仕掛けられてあり、強襲部隊はおろか徒歩で移動している傭兵にすら辿り付けなくなっていた。


 傭兵は今回の撤収戦で一度も武器を抜くこと無く殿を勤め上げる、帰還してそれを見た第一機動部隊の連中が酒場に担ぎ出して各々の武勇伝などを語りあい、昼間から酒を飲む姿を見た女共に蹴散らされて解散した。

 一昨日から録に睡眠が取れていない傭兵は随分と濃厚な時間だったなと酒と睡魔で重くなった瞼を下ろして眠りに付いた。



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