忌忌しき解決編
「当言う訳ですよ、お父様」
「なんだー、おめさ、学校に行ってまでそげなみょうちくりんなこと調べて
そんなんじゃすぐはげるぞ」
「いえ、お父様の為なら、それにお父様のいがぐりぼうずは、いまだにツンツンです」
「そげなことは、ええだ、それにしても妙だな」
「何がなのですお父様」
「そうだな、おらがこのアパートの管理人さんとこに行った時だべ、管理人さんは、このアパートの人は
人好きあいっちゅうもんが、酷く酷く苦手な変人だっちゅうことだった、しかし、昨晩は、酒は出るは、話はおもしれえは、酒は出るは、酒は出るは、いやあ、あの麦焼酎、あれはうんめーぽかったな勿体ない」
「そう言えば、昨晩、三升飲んでもけろりとしているお父様が」
「そうなんだ、どうも味がおかしいが、ただ、酒であるがゆえにだ、我は、飲みに飲みに飲んだのであるが、いつの間にか眠りが近づいた」
「・・・確かお父様、薬にもお詳しかったですよね」
「ああ、そうだ、ありゃ塩酸ジフェンヒドラミンが、おおよその、俗にいう睡眠つうもんだな」
「良く分かりますね」
「そりゃぁあ、探偵っちゅうもんは、そういうもんだ」
「さすがおとぉさま」
「よせやい、てれる」
「それで犯人はお判りでしょうか」
「あぁあ、それだそれだ、このことだけでわかんべえことは、管理人さんっちゅうおひとは、どうも何かを隠したい、もしくは、記憶があやふやな精神、もしくは、もう一人いるっちゅことだ」
「それは、どう言う事なんです」
「うむ、その答えになりそうなことは、おめえの持ってきちまった話にあるべぇえ」
「私の話にですか」
「ああ、さすがおらの子だ、さすがというしかねえだ」
「おやめください、照れますだ」
「っお、普通の言葉に戻っただな」
「あっ・・や、これはちがうんだ」
「まあいいや、今朝、柚希が、人を見間違えたと言う事だんが、これがもしも、ほんとだとしたんら
それはどう言うこだと思うんかい」
「・・・それはつまり、何者かが、死体を入れ替えたと」
「それもあるかもしれんが、しかしな、あまりにも現場ちゅうもんが、綺麗過ぎたんだ
これどう思うんか」
「・・・見間違えたとか」
「当たらずとも遠からずってとこだんべえな」
「じゃあ、どう言う事なんですか」
「うんだ、あれは、女だった」
「女」
「ああ、そして今警察で取り調べを受けてるっつうのが、たぶんおじさんだろうな、いや、管理人とでもいうべきか」
「どう言う事なんですお父様」
「なぁあに、簡単な事さ、ただ、その単純さが、おらぁこわいだ」
「どう言う事なんですかお父様」
「簡単なんだぁ、ありゃ、可哀想に、二重人格っちゅうもんだ」
「二重人格、分かるか、一人の人間の中に、何人もの性格が混在する病みたいなもんだ
昔は、キツネツキだとか、狂人だとか」
「おかしい、死んだはずがない、さっき見た
死んだはずの人間は、幽霊でもない限り、幻覚でもない限り
作成ではない限り、偶然ではない限り、見えるはずがない、つまりは、わざと見せた
もしくは、始めからなかったか
どうして、おらが、眠ってしまったか、いや、眠らす必要性があったか
単純に、人間を、二人に見せるため、いわゆる変装して皆の前に出た
これで、顔見知りにしようと持ったわけだな」
「なんぜえ、そんあめんどくっせえ、そんなこんとしたかといえんば、これまた単純なんだべ
そいつが、管理人として怪しまれないようにだ」
「たぶんんだが、管理人さんは、おなごにさなりたかったんだろうな
そんで、そんなときに、親戚の人間に、自分と似た人間がいたんだろうな
そこら辺から人間が狂っちまったんだろうか
女でありながら、男になろうとするなんて、とても容易に、いや、考えられない事だったんだろう
そしていつしか、入れ替わることが、絶対だと思い始めた
そう考えれば話はいよいしょ終着だ」
「お終いですかお父様」
「ああ、顔が似ていることを使い
殺したものを、地面に付き落とした
そんな時、睡眠薬入りの酒を飲んでいない
子供さが、見てしまうが、戻った
その隙に、髪さ、切ったんだろうな」
「・・・この後どうするんですか」
「・・・どうすんべぇーかな」
男はそう言うと、畳の上で、いよいよ胡坐を崩せずに
泣いたような顔をしている




