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ニセモノ?ホンモノ?  作者: 名無幸
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偽物生活スタート2

放課後、部活動を終えて帰ろうとすると


「よう。今帰り?」


自分より頭ひとつ高い女生徒に呼び止められた。


高平 夕希。バスケ部期待のホープであり、去年からの友人でもある。


「ああ、夕希も今帰りかい?」


「そうだよ。一緒に帰ろうか?」


「そうするかー」


夕希と二人で並んで歩く。並ぶたびに思う。これでまだ成長中なのだから一体彼女はどこまで大きくなるんだろう。現時点でも180超えだから…2mとか?


「ところでさー。面白い話を聴いたんだけど」


夕希はいたずらっぽい笑いを浮かべながら慧の方を見る。


「なんだよ、それ?」


「またまたぁ、とぼけちゃって。何と雪村慧君に彼女ができたって話じゃないのお」


「ああ、それね」


「何よその反応は?めでたいじゃないのー」


そういって慧の背中をバンバン叩く。


「あいたた、それがめでたくもないんだよ」


「ん? どゆこと?」


夕希が首を傾げる


「その彼女って話は…」


と、言いかけて止める。そんなに簡単に口外していいものなのだろうか?


夕希の口が軽いわけではないが、ここは隠しておいたほうがいいだろう。


「彼女って話は何さ?」


「いや、何でもない。素敵な彼女が出来てよかったけど、敵も多いなあって」


「あんたそんなの気にしないじゃん。いやーめでたい」


また背中をバンバン叩いてくる。


「あいたた…。そんなにめでたいかな?」


「めでたいに決まってんじゃん。それなりにモテるのに何の興味も示さないあの慧に彼女! だよ」


夕希はケラケラと笑う。


「面白がるのは勝手だけど、お前はどうなんだよ?」


「え、あたし?」


「そ。お前だって見た目はそんなに悪くないし、モテそうな気がするけど」


「またまたぁ、お世辞はいいよ」


「結構本気なんだけど」


「え…」


夕希はどきりとした顔をする。


「なーんてね。お前みたいなデカ女じゃ男子が裸足で逃げるんじゃないか」


そう言って走って逃げる


「けーいー! まてー」


夕希はプンスカ怒って追いかけてくる


「待ちませーん。じゃあ僕はこっちだから」


「ああ、ちくしょー。明日覚えてろ―!」


夕希と分かれて一人家路を急ぐ


この生活。上手くいくのかなあ


一日目で挫折しそうな感じを抱きつつ家に戻った。


学校を出て20分。「ひまわりの丘」と書かれた門をくぐる


ここが僕の家、いわゆる児童養護施設だ。


家に戻ると、共用スペースにいた島津 凛と鉢合わせた。


「あ、慧。お帰り」


「ただいま。凛」


「そろそろご飯だから、早く着替えた方がいいよ」


「りょうかーい」


ひらひらと手を振って自室に戻る


ベッドと机、本棚しかない簡素な自室に戻る。


着替えをすませてベッドに寝そべる。


偽物役ってなにすればいいんだか…


考えることは先日結んだ偽物契約のこと。


そういえば優子が彼氏ができたって騒いでたな。


優子もこのひまわりの丘の住人で、年は一つ下の高校1年生である。


そんなにいいものかな、彼氏彼女がいるのって。


そんな事を考えているとコンコンと部屋のドアをノックする音がした。


「はーい」


「慧兄ちゃん。ご飯だよ。もうみんな揃ってるから急いでね」


ドアの脇からこの施設の最年少、紀田 沙織が顔を出す。


「はーい、すぐ行くよ」


部屋を出て、共用スペースに向かった。


共用スペースのテーブルには僕とあと一人を除いて施設の住人全員が揃っていた


「慧兄おそいー」


「おそいー」


十日市兄妹(ちなみに双子である)に文句を言われる


「ごめんごめん、あれ? 千治(ちはる)は?」


「部活で遅くなるみたい」


「あ、そうなんだ。大変だな、野球部は」


千治は中学1年生で野球部に所属している。何でもまだ球拾いが多いとかどうとか。


「慧。座りなさい」


「あ、すみません」


保育士の梶山先生に言われて椅子に座る。


「では皆さん、いただきます」


「「いただきます」」


この施設の長である戸倉先生の号令がかかり、皆食事を始める


そうだ。ちょうどいいから優子に聞いてみよう。


「なあ優子」


「ん? 何慧兄?」


優子が夕食のコロッケを箸でつまみながらこちらを見る


「彼氏って何すればいいんだろう?」


優子がその言葉にコロッケを皿に落とす


「え! 慧兄彼女できたの?」


優子は身を乗り出す


「あらあら。めでたいわね~」


そのとなりでこの施設の最年長。高校3年生の能島 奈津紀がニコニコと微笑んでる。


「へええ、やるね慧」


「青春ね~」


高校生組と保育士は色めき立った


「あ、将一。私のコロッケとらないでよ」


「いいじゃん。食べるのが遅いんだよ祐子は」


「…」


小学生組は興味なさそうにしている。まだ子どもということか


「いや、ちょっと友達に彼氏のフリして欲しいって言われてさ」


「えー。何それ?」


優子は期待はずれだったのか、ため息をつく


「それで、何すればいいんだろ?」


「フリなんだから、ちょっと一緒にいる時間とか作って周り見せつければいいんじゃない?」


「そうね。彼氏です、って顔してればいいと思う」


凛が優子に同調する


「なるほど。じゃあやっぱり特別なことはいらないわけだ」


「それにしても、彼氏の『フリ』ねえ。慧兄もちゃんと彼女作ればいいのに」


優子は肩をすくめる


「うるさいな」


「大丈夫よ~。慧くんならそのうちきっと素敵な彼女さんができるわよ」


「フォローありがと。奈津姉」


「さあ、おしゃべりはそこまでにして、ちゃんと食べなさい」


「「はーい」」


賑やかな夕食の時間が過ぎて行った。


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