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ニセモノ?ホンモノ?  作者: 名無幸
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浮気?

さーて、何をしよう?


共用スペースのソファに寝ころんでテレビを見ながら何をしようか考える。


最近試合が続いたため、部活も休みで今日は久しぶりの休日。…しかし何もする事がなく、もう1時間以上もテレビのチャンネルを回しながらソファでゴロゴロしている。


…いかんな。休みだからといってだらけていては。


テレビから流れてくる音声を右から左へ流したまま、休みの日にしかできないような事は何か無いか考える。


休みの日にしかできない事…ないな。


まあそうは言ってもゴロゴロしていだけというのも味気ない。


本でも読みに行こう。


自室へ戻り、出かける支度をして街へ出た。


気が付くと行きつけの本屋のある通りに辿り着いた。


そこで見慣れた長身の男を偶然見つける


「まさあ…」


声をかけようとして、そこに現れた人物に驚く


現れたのは瑞音だった。二人は待ち合わせでもしていたかのように何か会話している。


え? どういうこと?


しばし状況の整理を整理していると、二人は駅前通りへ向かって歩き出した。


…追ってみるか。


二人の後をつけてみることにした。


気付かれないように付かず離れずの距離で二人を追いかける。


二人は駅前通りを並んで歩きながら、時折笑顔を交えながら何かを話している。事情を知らない者から見れば、あれはどうみても恋人同士にしか見えない。


奴は一体何を考えているんだ?いや待てよ…もしかしたら瑞音から誘って…。という事は…。


気が気でないまま20m程離れた電柱の影から、前を歩く二人の様子を見る。


あ…喫茶店入った。


確かあそこは最近出来た所だ。何でも可愛い娘が多いだかで野郎どもに人気の店だ。優子がチェックしていたが、立地条件が良いのと、可愛い娘が多いだけでそれ以外は全部他の店の方が上だって言ってたな…。


正明と瑞音は店にはいると窓際の席につく。


…出てくるまでとりあえず待つか。


電柱の影から二人の様子を覗き見る。


何やら会話しているが、内容まではさすがにわからない


電柱の影から二人をじっと見ていると


「貴方一体何をしてるの?」


「!」


背後から突然声をかけられてビクリと身体が硬直する。


そして恐る恐る振りかえると


「……」


不審者を見るような目でこちらを見つめる薫が立っていた。


「こ、こんにちは薫さん」


「…貴方ってストーカーの気があったの?」


「いえ、そういうわけでは…」


「じゃあ何をコソコソしているわけ?」


薫の視線が更に鋭くなる。


「別にコソコソなんてしていませんよ」


「物陰に隠れて向こう側を覗き込むのがどこがコソコソしていないって言うのかしらねえ?」


ま、まずい。このまま薫に捕まっていたら見失ってしまう。


「あ、あの急いでますので失礼」


逃げようとするが


「待ちなさい」


肩を掴まれて強制的に半回転。


「は、離してくれません?」


「一体誰を尾けているわけ?」


「い、いやだなあ人をストーカーみたいに…」


「誰?」


段々薫が殺気立ってきた。肩を掴む手がいつの間にか首筋に移動している。


「え、えーと…」


「答えなさい。それとも…死にたい?」


首を掴む手に力が入る。


「……」


ま、まずい、意識が遠く…。は、白状しないと殺される…。


「さっさと白状しなさい」


「わ…」


白状しかけてある事に気がついた。


待て…教えていいのか?今の二人の様子を見せれば、10人が10人デートだと思うだろう。あいつが何を考えて瑞音と二人でいるのかは謎だが、薫しか見えてないようなあいつが他の娘をデートに誘うはずもない。…つまり正明にとっては今の状況を薫には絶対に見られたくないはずだ。


「……」


「死にたいらしいわね」


薫は更に手に力を入れる。


「……」


……段々視界が狭くなってきた。だめ…だ…もう…お…ち…。


意識を失いかけた瞬間首から手が離れた。


「ゲホッゲホッ…」


慌てて息を吸い込む。


「珍しく口が堅いわね」


「これだけは言うわけにはいかないので」


「まあ貴方が誰をストーキングしていようがどうでもいいわ。貴方に聞きたい事があったのよ」


「ゴホッ…な、何でしょうか」


「山名君が何をしているか知らない?」


薫の口から意外な人物の名が飛び出す。


「は?」


「今日は…その、彼に用事があるのよ。それで、家に来て欲しくないのか彼の方が場所を指定してきて、それなのに時間になっても来ないのよ」


薫は視線を泳がせながらやや早口で言う。


それは用事と言うのかな?…いや、詮索しない方が身のためだな。


「そうですか。残念ながら僕も彼が何をしているかは知りません。彼はそういった事をする人では無いんですけどね」


「それで、携帯電話にかけてみたけど出ないのよ」


「ああ、おそらく家に忘れたんでしょう。彼は結構慌て者ですから」


「まったく…どこで何をしているのかしら」


薫は話しててまた怒りが込み上げてきたのか、再び目つきが険しくなる。


「き、きっと何か急な用事が出来たんですよ」


「私に連絡の一つも入れずに?」


「おそらく、相当急いでいたんですよ。彼は結構一つの事に集中すると周りが見えなくなりますから」


何故か僕が必死になってフォローする。


「なるほどね…。普段から一緒にいる貴方がそう言うのなら、そうなんでしょうね」


「そうです。薫さん、彼は理由も無しに約束をすっぽかすような人間ではないですから、そこだけは誤解しないでやってください」


「…わかったわ。じゃあ山名君に一つだけ伝言頼めるかしら」


「何でしょう?」


「『月曜日が楽しみねえ』とだけ伝えておいて」


薫が見るものを凍り付かせるような冷ややかな笑みを浮かべる。


「は、はい…」


「邪魔したわね。じゃ、ごゆっくり」


薫は言いたい事を言って去っていった。


薫が去ったのを見て、大きく息をつく。


まったく…どうして僕がとばっちりを受けなきゃならないんだ?


…あの阿呆め。薫との約束すっぽかしてまで人の彼女と一体何やってるんだ?…しかも何で僕がそれで必死にフォローしなきゃなんないんだ?


今度昼ご飯奢らせてやる。


正明への怒りを覚えつつ、再び喫茶店の方へと目をやる。


すると、二人が店の方から出てきた。


二人に見つからないように注意しながら尾行を続ける。


見つからないように人混み等に隠れながら後をつけると、二人は瑞音の家の前へと来ていた。


喫茶店を出た二人はその後は互いに何も話すことなく、どこに寄り道する事もなく真っ直ぐここまで来ていた。


まさか家にあがってく…わけはないか。


正明は誘われても女の子の家に上がるのはためらうだろう。…愁一なら案外抵抗もなく上がるかもな。


二人が瑞音の家の前で立ち止まって向き合う。


そして二言三言会話した後正明が去っていき、瑞音も家の方へと入っていった。


一体何をしていたんだろうか?


まさか、正明の奴が略奪を企てているのか?


…いやいや、友人を疑ってどうする。まさか正明がそんな真似をするはずがないじゃないか。どうも悪い方向に考えがいってしまう。

ただ二人でお茶してただけじゃないか。何をそんなに慌てる必要があるのだろう。…ここにいてもしょうがない、帰って掃除しよう。

店の前を離れ、家へと戻る事にした。


その夜


羊が4078匹羊が4079匹…寝付けなかった。

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