病気になる?
今日は朝から何か体がだるい。昨日眠れなかったから、寝不足かな?
重たい体をベッドから引きずり出し、学校へ行く準備を始めた。
学校につくと、周囲の様子が違うことに気づく。
こちらを見て、女子は何やら楽しそうにひそひそ話を始めるし、男子は男子で何かただならぬ視線を向けてくる。
まああれだけ目立つことしたんだから当然か。
気にも留めずに教室に入る。
もう秋に入り気温も下がってきている。そのため夏と違い過ごしやすい…が。
それにしても今日は寒い。天気予報では一日中暖かいって言っていたはずなんだけど。
…心が寒いと何をしても寒いままだって言うからね。今はまさにそんな状態らしい。
アホなこと考えてたら、何か頭もボーっとしてきたな。ほとんど寝ていないから当然か。
「おーす」
こちらの事情など露知らず、正明は今日も元気に登校してきた。
「おはよ…」
「お前、何かいつも以上にボーっとしていないか?」
正明はこちらを見て驚いた顔をしている。
「ああ、ちょっと寝不足で」
「寝不足?」
「そ」
「うーん…それにしては…何かこう」
正明は何かが引っかかるのか、首を捻る。
「どうかした?」
「お前、昨日何かあったのか?」
正明が突然真剣な顔になる。
「何で?」
「とぼけなくていい。一体何があった?」
正明は肩を掴んでくる。
「…別になにもないよ」
「いや、何かあったはずだ。そうでなければ、ただでさえ朝は抜け殻のお前が、ここまで酷い状態に…」
「一言多い」
「ぐごっ!」
ボディに一撃をかまされ、正明は崩れ落ちた。
「心配するのは有り難いけど、さりげなく酷いこと言わない」
「ゲホッゲホッ! 息が止まるかと思ったぞ!」
正明は涙目になっている。どうやら相当いい所に決まったらしい。
「悪い。手加減できなかった」
「お前なあ」
正明と漫才をしていると
「二人して朝から騒がしいわねー」
朝練から戻ってきた夕希がやってきた。
「おはよう、高平さん」
「おはようございます、姉御。愁一は?」
「ああ、愁一の奴はギリギリまで練習するってさ。久しぶりの部活だから張り切ってたよ」
「そうか。あいつも頑張るな。俺達も負けてらんないぞ。慧!」
正明は人の背中を思い切り叩く。
「いたい…。朝から勘弁して」
「お前がそんな腑抜けた顔してるからだ」
「何、慧。腑抜けてんの?」
夕希は意外そうな顔でこちらをじっと見る。
「な、何?」
「あんた、いつも朝は丘に上がって干上がった魚みたいだけど、今日は死んだ魚みたいだね」
「…みんなして、そんなに酷いかねえ?」
「うん、何か変なオーラが出てるよ」
「ああ。覇気の欠片もない」
こいつらは…。
「皆さん、おはようございます」
二人に対する怒りに震えていると、仁科さんも登校してきた。
「おはよう」
「や、おはよ」
「ボンジョルノ」
「あれ? 雪村さん、どうしたんですか?」
仁科さんまで驚いた声を上げる。
「…そんなに、腑抜けたように見えるかな?」
「はい、いつもは気が抜けた感じですけど、今日は魂が抜けきったみたいです」
「そうでございますか」
普段自分がどう見られているか良くわかった気がした。
授業が始まると体に異変を感じた。
今日は寒いな。身体が震えてきた。
何でみんな平気なんだろう? 周囲を見回すが、寒そうにしているのは自分だけだ。
何か余計に頭もボーっとしてきたし、やっぱほとんど寝てないからかな? 段々先生が言っていることが右の耳から入って左の耳から通り抜けて行ってしまっている。
…なんか意識も遠くなってきた。あ…やばいかも
………
「村…雪村!」
「ふぁ?」
気が付くと目の前には青筋を立てた権田原が立っていた。
どうやら眠ってしまっていたらしい。
「そんなに俺の授業がつまらんか? では廊下に立っていろ」
「はーい…」
適当な返事をして立ち上がり、廊下へ向かった。
…今日は厄日か?いや、自分で居眠りしておいて厄日も何もないか。
この後、今日は何故か睡魔に勝てずにすべての授業で居眠りをしてしまった。そのおかげで丸めた教科書で叩かれるわ、耳元で指鳴らされるわ、チョークはバキバキ折れるわ…散々だった。
しかし…そんな授業で受けた罰よりも問題なのは一向に体調が良くならない。むしろ悪くなっているような気がする。
「慧。お前、今日の部活どうする?」
正明が心配そうな顔で聞いてくる。
「悪い。何か体調が悪いから休む。これ監督に渡しといて」
正明に今日は休む旨を書いたサッカーノートを渡す。
「わかった。じゃあな」
「じゃあな」
正明と別れ、さっさと家に帰ることにした。
家に帰ると凛に驚いた顔をされた
「慧、あんたどうしたの?なんかふらついているよ」
「んー。ちょっと体調悪くて…」
「どれどれ。わ、熱い!」
凛が僕の額に手を当てて驚いた声を上げる
「ありゃ。風邪引いてたか。どうりで調子悪いわけだ」
「先生に言っておかゆ作ってもらうから、慧は早く部屋に行って寝なよ」
「ああ、頼むわ」
凛と別れて部屋に戻るなり、ベッドへ直行する。
しばらくして
コンコンとノックの音がなる
「はい」
「慧クン。大丈夫?おかゆ持ってきたわよ」
園長先生が入ってきた
「ありがとうございます」
「食べ終わったら、鍋は取りに来るから置いておいて。それと薬持ってきたから食後に飲んでね」
「はい」
「じゃあ、しっかり食べて休んでね」
園長先生はそう言って出て行く。
おかゆを口に運ぶ。調度良い暖かさが身にしみる
食べ終わったあと薬を飲んで、眠りに落ちた。




