契約成立
恋人宣言された直後に戻ります。
時間軸がわかりにくくなってたらすみません。。
――時は放課後、告白現場を目撃した時点に戻る。
「あの、一体どういうこと?」
中庭まで連れて来られた所で花丘さんの手を振りほどき問い質す。
「ごめんなさい!」
花丘さんはすかさず頭を下げる
「いや、謝らなくてもいいから事情を…」
「火影くん、だっけ? 彼に告白されて、断ったんだけど中々納得してくれなくて…」
花丘さんは事情を語りだす
「そこで通りすがりの僕を彼氏ということにして、逃げたと」
「ええ」
「なるほどね。でもどうするの? 多分明日には皆に知れ渡るけど」
「そこで、お願いがあるんだけど…」
花丘さんはそう言って僕を見つめる。
「まさかこのまま付き合っちゃいましょうとか?」
僕は冗談めかして言う
「ええ、そうよ。お願いします…偽の彼氏として」
花丘さんは再びペコリと頭を下げる
「いやいやいや。あまりに唐突すぎると思うんだけど……へ?偽?」
「そう。暫くの間だけでいいから、彼氏のふりをしてほしいの」
「いやいやいやいや。偽とはいえ僕なんかでいいの?」
花丘さんの提案に困惑する。
一体どういうつもりなんだ? このアイドル様は。
「あ、もしかして雪村くん彼女持ちだった?」
「いや、彼女はいないけど」
「じゃあ、お願いします!」
花丘さんは三度頭を下げる
「…」
どうしたものかと考える。
目の前にいるのは学園のアイドル。偽とはいえ恋人関係になれるとは男子生徒なら泣いて喜びそうなものだ。
ただ、どうしてもその気にはならなかった。偽という関係が気に入らないわけではない。単に、彼女を作る気がなかった。
「一つだけ確認させてもらっていいかな?」
「なに?」
「偽の恋人ってことは、なんか特別なこととかしなくてもいいんだよね?」
「そうね。彼氏ですって事にだけしてもらえればいいわ」
「了解。じゃあ契約成立ということで」
手を差し出す
「ええ。よろしく、彼氏さん」
花丘さんが手を握る。
――こうして、『偽物』のカップルが誕生した。
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多少なりとも楽しんでもらえれば幸いです。