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ニセモノ?ホンモノ?  作者: 名無幸
20/49

買い食い

夏休みに入り、一段と暑くなってきた今日このごろ


たまには違う道を歩いて帰ろうと思い、部活の帰りに臨海公園へとやって来た。


土曜日だから結構人もいるな


周囲を見渡すと、遊んでいる子供や家族、カップル、仕事休み中のサラリーマンなどで公園は賑わっている。


「あ、雪村くん」


「!」


突然後ろから声をかけられ、振り返ると


「今帰りですか?」


「どうしたの?こんな所で」


仁科さんと花丘さんが立っていた。


「ああ、部活の帰りでたまには違う道を帰ろうかと思ってね」


「そうだったんですか。山名さんは?」


仁科さんは正明がいない事を意外に思ったようだ。


「ああ、正明は用があるってさっさと帰ったよ」


二人に事情を説明する。


「そうですか」


仁科さんは納得したようだ。


「二人は買い食い、かな?」


「え? どうしてわかるの」


「どうしてわかったんですか?」


二人とも一様に驚いている。


「確かここにあるクレープ屋のクレープは美味しいと評判だからね。もしかしてそれを食べに来たんじゃないかと思ってね」


「へえ、凄いですね、その通りです」


「まあ、買い食いに来たのは当たっているわね」


一人は当たりだが、一人は半分だけ当たりらしい。


「じゃあ、花丘さんは何を食べに?」


「知りたいなら、雪村くんも一緒に食べない?」


花丘さんは笑顔で誘ってくる


「いいでしょう」


二人と共に屋台に向かう事にした。


「で、花丘さんは何を食べに来たの?」


「これよ」


花丘さんが指さしたのは、クレープ屋の隣のたこ焼き屋だった。


「え?」


「何よ、意外そうな顔して」


花丘さんは少し腹を立てている。


「ああ、ごめん。ちょっと意外だったもので」


「確かにクレープよりたこ焼きって娘はあまりいないものね」


そう言って笑う花丘さん。


「私はフルーツミックスにしますけど、雪村さんは何にするんですか?」


仁科さんは僕がクレープを食べるものだと思いこんでいる。


「あら、雪村くんもたこ焼きにするんじゃないの?」


こちらは僕がたこ焼きを食べると思いこんでいるらしい。


「僕は…たこ焼きにしようかな」


「そうですか…。クレープ美味しいのに…」


仁科さんは残念そうにしている。


「じゃあ早速並びましょう」


花丘さんに促され、たこ焼き屋の前の列に並ぶ。ここのたこ焼き屋もクレープに負けず劣らず評判はいい。


「ここのたこ焼き美味しいわよねえ」


花丘さんはたこ焼きが待ちきれないようだ。


「確かにね。よく来てるの?」


「たまにしか来ないけど、でもお気に入りなのよ、ここのたこ焼き」


花丘さんは先程から落ち着きがない。普段はこんなことがないので、少し新鮮な気がする。


「よっぽど好きなんだね…」


「そうよ。あ、私達の番みたいよ」


やっと番が回ってきた。


「いらっしゃい。お、姉ちゃん、また来てくれたのかい?」


「はい。3パックください」


花丘さんはそう言って、3パック分の代金を出す。


「へい、おつり。毎度」


親父はたこ焼き3パックとおつりを差し出した。


「え?丁度のはずですよ」


花丘さんは困惑している。


「俺からのサービスだ。気にするな」


親父はそう言ってお世辞にも白いとは言えない歯を見せる。


「ありがとうございます」


「じゃあ、ありがたくいただきます」


花丘さんと一緒にたこ焼き屋の店主に礼を言い、仁科さんと合流する。


「二人とも遅かったですね」


「ごめんなさい」


花丘さんは軽く謝る。


「あそこのベンチが開いてますから、行きましょう」


開いているベンチに三人で腰掛けた。


「はい、これ雪村くんの分ね」


花丘さんからパックを渡される。


「ありがとう。はい、これお金」


「いいわよ。私のおごりよ」


花丘さんはお金を受け取ろうとしない。


「駄目、そういうのは。だから、はい」


無理矢理渡す。


「…わかったわ」


花丘さんはお金を受け取った。


「うん、やっぱり美味しい」


その横で仁科さんは早速クレープを食べ始めている。


「じゃあ私達もいただきましょ」


「そうだね」


我々も食べ始めた。


「やっぱりここのたこ焼きは最高ね」


花丘さんは満足そうに食べている。焼きたてなので熱いにもかかわらず、そのペースはなかなか速い。


「そうだね」


久しぶりに食べたが、相変わらず味はいい。


「たこ焼きにして良かったでしょう?」


花丘さんは笑顔で聞いてくる。


「えー、クレープも美味しいですよ」


仁科さんは不満そうだ。


「まあ確かに美味しいからね。でも今度はクレープも食べようかな?」


「そうしてください。きっと気に入りますよ」


仁科さんは自信満々で言い切る。


「あら、浮気は駄目よ?」


花丘さんはからかうように言う。


「別に浮気じゃないでしょ? それにしても…」


「どうしたの?」


「何で3パックなの?」


「もちろん、私が食べるからよ」


花丘さんは事も無げに言う。


「あ、そう」


「そうよ。こんな美味しいもの1パックだけじゃ勿体ないじゃない?」


花丘さんはそう言って2パック目に手をつける。


「あ、水音ちゃん!また2パックも買ったんですか?駄目じゃないですか!」


仁科さんはたしなめる。


「いいじゃない、大丈夫よ」


「そういう事を言ってるからすぐ『太った』って言い出すんです!」


仁科さんは説教を始める。


「う…」


花丘さんは反論できない。が、手は止めない。


「まあまあ…仁科さん落ち着いて。」


「雪村さんもちゃんと止めないと駄目じゃないですか!」


「はい…」


何故か僕まで怒られてしまった。


「はあ、美味しかった。」


仁科さんの説教が続く中、結局花丘さんは2パック食べてしまった。


「ああ…。もう、太ったって知りませんよ」


仁科さんは呆れている。


「大丈夫よ。じゃあ食べ終わったし、行きましょうか」


花丘さんはパックをゴミ箱に捨てるとさっさと歩いていく。


「ああ、待ってくださいよ。じゃあ雪村さん、失礼します」


「ああ」


仁科さんは慌てて花丘さんの後を追っていった。


食欲旺盛だねえ…。さて、いつまでもこうしていてもしょうがないし、帰りますか


臨海公園を後にした。

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