中間考査だ
もうすぐ中間テストという事で、教室は朝から慌しい。1人で黙々と復習する者、友人に助けを求める者、集まって互いに教え会う者など、皆それぞれの方法でテスト対策を練っているからである。僕もまた例外ではなく、忙しい時間を送っている。
「雪村ー。ここ教えてくれー」
早速お声がかかり、呼びだした者のところに行く。
「はーい。ああ、これはこうして…」
「おお、なるほど。ありがとな」
「どういたしまして」
「雪村くーん。ここの和訳教えて」
1人終わればまた1人呼び出しがかかる。
「はいはい。これは………だよ」
「ありがとー」
「どういたしまして」
「雪村ー。この文訳してくれー」
次から次へと依頼は続く。本当はのんびりと過ごしたい所なのだが、無下に断るのも気が引ける。
「はいはーい。えーと、これはこんな感じかな」
「助かった。サンキュな」
「いいえ」
テストの前になると毎回こんな調子である。しかし別に僕だけが忙しく質問に対応しているのではなく、花丘さんや副委員長など、このクラスにいる成績優秀な人間は皆同じである。そんな皆が忙しくテスト対策を練る中、ただ一人暇そうな人間もいる。
「みんなぁ!! 俺はいつでもみんなの助けになるぜぇ!!!」
火影は皆への気配りなど全くなく、いつも通りに騒々しい。
「補習上等のお前の助けなんていらねえよ。大人しく寝てろ」
「うるさいから、静かにしてよ! みんな真剣なんだから」
「人に教えている暇があったら少しでも勉強しなさいよ」
「お前に教えてもらう事なんてねーよ」
本人は教える気まんまんだが、補修上等な人間に誰がどう考えても教わろうとは思わない。しかし本人はその事にすら気が付いていない。そのため容赦のない罵声が浴びせられる。
「うおお!!! 何故だ!!!! 何故誰も俺に助けを求めない!!!!!」
火影自身は誰かの役に立とうとしていると考えているようだが、誰が見ても邪魔をしているだけにしか見えない。
仕方ない、黙らせるか。
火影の席へと向かう。
「火影」
「おお!! 雪村よ!!! 俺の助けが必要なのか!!!!」
火影は立ち上がって歓迎する。
「黙って寝ててくれないかな?」
そんな火影に容赦なく腹部への一撃を繰り出す。鈍い音が響くと火影は机に崩れ落ちた。
「おおー、よくやったぞ雪村」
「ありがとう、これで集中できるわ」
「いい気味だな」
邪魔者を排除した事により、歓声があがる。手を上げて答えると、席に戻った。
席に戻ると、夕希が慌てて教室に入ってきた。そして、僕の席に一直線にやって来る。
「慧、頼む!」
「はい」
僕は予測済みといわんばかりにルーズリーフのバインダーを手渡す。
「ありがとう。放課後には返すね」
「はいはい」
バインダーを受け取った夕希は席に戻り、必死にノートを写している。去年から続く、テスト前の光景である。
いい加減進歩しないのかと思って夕希がノートを写す様子を見ていると、同じような人間が僕の元へとやって来た。
「慧ぃ」
「はい。試験後の自主練の後片付けは頼むよ」
交換条件と共に、要点をまとめたノートのコピーを渡す。
「ああ、いつもすまないな」
「困ったときはお互い様」
「よーし、今回もこれで何とかなる」
正明も席へと戻ると、もらった物に必死に目を通す。
僕らの通う風見ヶ丘学園は、基本的に自由な校風なのが特徴だが、試験で赤点3つ以上取るとその後3週間部活動への参加が禁止されるという決まりがある。そのため、運動部連中は特に必死なのだ。
席に戻ると
「雪村君も忙しそうね」
花丘さんが話しかけてきた。彼女は彼女の席に集まってきた皆さんに勉強を教えている。
「そっちもね」
「そうね」
花丘さんは忙しいのに笑っている。
「瑞音ー。これどうやるの?」
質問が飛ぶ。
「ああ、これはここが…」
花丘さんは丁寧に教えている。
邪魔しない方がいいと思い席に座り周りを見渡しながら、自分の試験対策に入る。
さて…、今回は…80平均くらいだな。
こちらも試験の対策を考えた。
ちなみに僕の試験対策は皆とはすこし異なる。どちらかというと薫対策である。
僕は薫に負けなくてはならないからだ。
去年勝った際に『私より成績が良いんだから当然教えてくれるわよね?』の一言で試験期間中はずっと勉強に付き合わされた。
あれは地獄だった。
なにせ薫はすぐ手が出る。下手なことを言うたびに殴られた…。あんな日々はもうゴメンだ。
それ以来、試験では常に薫に合わせて点数を調整することにした。
今回もうまくいきますように
心のなかでそう願いつつ、試験対策を進めた。




