必殺のナントカ
やっと放課後がやってきた。今日は部活も休み、久しぶりに早く帰れる。
「正明ー」
正明の所へ行こうとしたら
「慧、帰るわよ」
「はい」
いつの間にかやってきていた悪魔に捕まってしまい、2人で帰る事となった。
薫と並んで通学路を歩く。
「そういえばもうすぐ中間試験ね。あなたは試験勉強の方は順調なのかしら?」
「は、はい。今のところは順調に進んでおります」
「そう」
「何故そんな事を聞くのでしょうか?」
「…悪いかしら?」
薫は不機嫌になる。
「い、いえ。そんなことは…」
「だったらいいじゃない。大体、貴方が頑張らないと張り合いがないのよ」
「はあ…」
「夕希じゃ差がありすぎるしね」
「だったら花丘さんあたりを相手にすればいいのに…」
「何か言ったかしら?」
薫はこちらを睨みつける。
「…何でもありません」
「ねえ」
「何でございましょう」
「私と話すときだけ何故敬語になるのかしら?」
「それはですねえ。何故かこうなるのですよ」
「…真面目に答えなさいよ」
薫の声の調子が変わる。怒っている証拠だ。
「真面目に答えていますよ。別にあなたの事をバカにしているとか、そういうことではありませんから」
「そう。でも何となく気分が悪いわ。私と敬語で話すのはやめなさい」
「わかりました。やめさせていただきます」
「全然わかってないようねえ」
殺意に満ちた笑顔を見せる薫。
「あ、あの…やめろといわれましてもですね、どうしてもこうなってしまうわけで…」
「じゃあ何故そうなるのかしらねえ?」
「そ、それは…」
あなたが一番わかってるじゃないですかとは言えない。
「…痛い目に遭わせた方がいいかしらね」
そう言って構えを取る薫。
「わかった。わかったから、それは勘弁してくださいまし」
「やればできるようね。じゃあ今回は特別に勘弁してあげるわ」
「ありがとう」
難は逃れたか…。
それからは極力喋らないようにして歩いた。
「……」
「……」
無言のまま、しばらく歩いていると、薫の方から口を開いた。
しばらく無言のまま歩いていると
「そういえば、貴方いつからジェットコースターが苦手になったのかしら?」
「え?」
「確か、子供の頃はそんな事なかったはずよね?」
「そ、そんな事はないですよ。小さい頃から苦手ですよ」
「そんなはずないわ。だって子供の頃一緒に遊園地に行った時平気で乗っていたじゃない」
「そんな事はないですよ。大体、小さい頃遊園地に行った事ありましたか?」
「………」
薫はわなわなと震えている。
…しくじったか。
「慧」
たっぷりと怒気を含んだ声。
「は、はい」
「まさか、忘れたんじゃないでしょうねえ」
「…忘れてます。はい」
「……思い出させてあげましょうか?」
拳を鳴らす薫。
「す、すみません。僕が悪うございました。どうかそれだけは…」
「そういえば、いつの間にかまた言葉遣いが戻っているわねえ」
「そんな事はありませんよ」
「あるじゃない!!」
彼女の必殺の左足が炸裂する。
ドゴォ
蹴りを腹部に受けて僕は派手に吹き飛ぶ。
「痛い思いをしたくなかったら、もう敬語で話さないことね。さあ、いつまでも寝てないで行くわよ」
「は、はひ…」
薫に助け起こされて、再び歩き始める。
流石空手の有段者。恐ろしい一撃だった。
今度から気をつけよう




