捕虜
ここなら安全だ。
俺はやっと安全な場所に着けてひと安心した。
ここに着くまでは本当に大変だった。
平和に暮らしていた俺たちの集落は名も知らない襲撃者に襲われた。
親兄弟に気を使うまもなく散り散りにされ、
俺はかろうじて側にいた妹と一緒に逃げ延びた。
襲撃は俺たちを一掃するまでいつまでも続いた。
奴らはしつこく俺たちは休む間もなかった。
仲間の中には進んで奴らに身を任せる連中もいたが
俺はそんな軟弱な連中とは違う。
最後まで逃げていた俺と妹は疲れ果ててしまった。
息も絶え絶えに岩陰で休んでいた俺たちも奴らに見つかってしまった。
逃げる気力もなくした俺は妹と一緒に捕まってしまった。
奴らの俺たちへの対応は思いのほか悪くなかった。
食事も出してくれたし、寝る場所も与えてくれた。
大勢の仲間と共に大型車両で輸送された俺はもうどうにでもなれという気持ちだった。
長い時間、車に揺られた俺たちはここで再び束の間の自由を見つけた。
ここは天国かも知れない。
妹は毎日与えてもらえる食事に満足している。
俺もこの深い谷の向こうで笑うあいつ等さえ居なければ
この場所で一生を終えるのも悪くないと思っている。
「久しぶりに見たら綺麗になってるわね」
「お母さん、みんな楽しそうだね」
「あのお猿さん達は北の動物園から来たばかりなのよ」