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国王「ウチの息子アホっぽいなー。せや!優秀な公爵家の令嬢婚約者にしてフォローさせたろ!」

掲載日:2026/08/06

国王は悩んでいた。10歳になる一人息子がどうにもアホっぽく、王太子教育もサボりがちで貴族達から将来を不安視されているのです。

「せや! 筆頭公爵家んとこの令嬢がめっちゃ優秀って話やし婚約者になってもろて息子のフォローしてもらえばええんや!」

さっそく幼馴染で宰相を務める公爵に婚約を打診。返事は……

「謹んで辞退させていただきます」

「なんで???」

貴族なら王家との繋がりは欲しいはず。そう不思議そうに首を捻る国王に、公爵はクソデカため息をついて説明しました。

「あのなぁ。王家との繋がりもクソもウチは五代前に優秀すぎて兄を差し置いて祭り上げられそうになった第二王子が臣籍降下して出来た公爵家、しかも私の母は先先代の陛下の弟の娘、妻に至っては陛下の妹でしょうが。おまけに私の役職は宰相。繋がりは充分だし、そもそも血が濃くなりすぎるから次代は王家との婚姻は避けたいって言ったよな? 俺言ったよな!」

「一人称ブレとるでー」

「やかましい! あとその謎の訛りいい加減にやめろと学生時代から言ってるよな!」

ちなみに国王の訛りは王国西部の方言……を元にした一部界隈で使われている猛虎弁なるエセ方言なので西部の人間が聞くと顔をしかめます。学生時代に魔導ネットワーク掲示板で使っていたら喋り言葉にまで侵食してしまったというアホな理由です。

「そもそも殿下はまだ10歳だろう。しっかり教育すればまだ間に合う……はず」

「何でちょっと自信なさげなんや。いやワイも勉強させようとはしたんやで? でもアイツ逃げてサボるんや」

「捕まえて閉じ込めて強引にやらせろ」

「最近隠密スキルと回避スキルと鍵開けスキルが上級になったらしいで?」

「王家の影に弟子入りでもさせたのカナ?カナ?」

無駄に優秀です。その能力が王としてはカケラも役に立たないと言う問題はありますが。

「ともかく、ウチの娘に尻拭いさせようとするのはやめろ。だいたい若いうちから他人をあてにさせるとアホが加速するぞ」

「くっ……だがワイも息子は可愛い……! 故にトラップカードオープン! 「王命による婚約」を発動! フハハハ! これを拒否した場合、相手は不忠の誹りを受ける!」

高笑いする国王に、公爵は顔をしかめて考え込みます。と言うか息子の婚約がトラップって自覚あったのね……

「……なるほど。確かに我が公爵家は王家の忠臣を標榜している。王家派のまとめ役もしている以上、王命に逆らう事は問題になる……」

「せやろ? だから……」

「だ が 断 る !!!」

「なんでぇっ!?」

公爵は目をクワッと見開くと、立ち上がって全力で拒否しました。

「うるせぇ! 先王陛下に「アイツ優秀だから息子のフォローさせよう!」とか言う理由でテメェの尻拭いする事20と余年! 俺はもう諦めたつもりだったが可愛いウチの娘までおんなじ目にあわせるっつーなら話は別だ! 不忠だろうが反逆だろうがどうでもいいわ! もうやめた尻拭い役も宰相ももーやめた!」

賢明なる読者諸君はもうとっくにお気付きでしょうが、アホ王子のアホは紛れもない遺伝だったのです。なんなら公爵家の初代が祭り上げられそうになったのも兄王子がアホだったからです。ちなみに初代公爵は長子継承の原則を破るのを嫌がって臣籍降下しましたが、兄の息子、そのまた息子もアホで子や孫が尻拭いに苦労しているのを見て「こんな事なら王になっとくべきだった……」と後悔していたそうな。そして嫁を取っても一向に薄まらないアホ遺伝子の脅威。

ちなみに貴族達が不安視していたのは王子の将来ではなく王国そのものの未来だったりします。さもありなん。

キレて叫ぶ公爵にポカーンとする国王。だが慌てたのは周りの人間でした。

「まって!? 閣下が仕事投げ出したらこの国終わっちゃいますから!?」

「落ち着いて下さい閣下! 陛下に不満があるなら王位簒奪とか他に色々あるでしょう!? やるんなら協力しますからむしろ是非やりましょう!!」

「なんなら殺るでもいいんですよ? むしろ是非殺りましょうそうしましょう(チャキッ)」

ちなみに周りにいたのは国王の護衛たる近衛の皆さんです。護衛とは??? なんか鯉口を切ってる奴がいるんですけど?

「なんか近衛に殺る気マンマンのヤツがおるーっ!」

「あ、彼は先週お前が軽い気持ちで夜伽に誘ったメイドの彼氏だな」

それなら仕方ないね。

「いやいや、相手がいるなら断っても……」

「国王に求められて正式な婚約者がいるわけでもないのに拒否できるとでも?」

それはそう。ちなみに誤解のないように言っておきますが、そのメイドさんはベッドに連れ込まれる前に公爵閣下がドロップキックで国王を吹っ飛ばして救出したので犯行は未遂です。ただし彼女はそれ以来職を辞して王宮を去り、家から一歩も出なくなったそうですが。

さて、そんな話をしてる内に件の彼氏さんが抜刀して一足一刀の間合いへと摺り足で(にじ)り寄ります。

「死ねぇぇぇっ!!」

もはや殺意を隠してすらいねぇな!? それを見ていた同僚の近衛達も流石に見すごせなかったのか、国王へと駆け寄ります。

「よし! 助太刀する!」

「囲め! 逃すな!」

あれーっ? 誰も助けようとしませんよ?

「ちょ! 待っ! 公爵ーっ! 助けてーっ!」

「……あー、今日はいい天気だなー」

おっと、公爵閣下、席に戻って窓の外を見ながらお茶を飲んでいて気付いていないようです。なら仕方ないね!

「ぬおおおおっ! 死んでたまるかーっ!」

しかし国王、憎まれっ子世には馬鹿る……もとい(はばか)るとの言葉通りそう簡単にはやられません。

王家の血統に宿る強大な魔力を使用して身体強化を発動すると、身を伏せて攻撃を回避、そのまま四つん這いで近衛達の足元を縫うようにして包囲網をすり抜けました。

「うわ動きキモッ!」

「Gかコイツは!?」

「似たようなもんだろ元々!」

【悲報】国王陛下の扱い、Gと同列。

そうして国王が部屋の出口へと近付いた瞬間、扉が開かれ一人の人物が部屋の中へと足を踏み入れます。

「何事だ! 騒々しい!」

白髪混じりの髪に口髭、顔に刻まれた皺。老人の域に入るであろう風貌に反して肉体は鍛えられてがっしりしています。その肉体を包むのは金モールが目立つ儀礼用の軍服、胸元には数多くの勲章が飾られています。

「おおっ! 軍務卿! 助けて近衛に反逆された!」

それは一兵卒からの叩き上げで軍の最高責任者にまで上り詰めた王国の英雄たる軍務卿でした。

「陛下!? おのれ痴れ者ども! 陛下! 私の後ろへ!」

軍務卿は驚き目を見開くも状況を一瞬で把握、国王を庇うように一歩前に出ます。近衛達も命令系統が違う(なお直属の上司たる国王を襲っているので命令系統もクソもない)とは言え尊敬する王国の英雄の前に躊躇して足を止めてしまいます。

「助かったぞ軍務ky……」

そして国王が軍務卿を盾にしようとその横をすり抜けようとした瞬間、軍務卿がワシッとその腕を掴みます。そしてそのまま流れるように体を引き寄せ、あっという間に羽交い締めにしてしまいます。国王は反射的に暴れて逃れようとしますが、流石は歴戦の英雄、自らも身体強化を行い出力の差は身体を動かす技術で埋めて完全に拘束する事に成功します。

「貴殿ら! 構わぬ! ワシごとやれぇぇぇっ!」

「義父上!? くっ、わかりました!」

「何でぇっ!?」

「そりゃ件のメイドが軍務卿の溺愛する末娘だからなぁ……」

ちなみに軍務卿は着々とクーデターの準備をしていましたが、この好機を見逃せずに衝動的に行動してしまった模様。

「さあ殺れ! あと貴様に義父呼ばわりされる筋合いは無い!」

「僕達は愛し合ってるんです! 認めて下さいお義父さん!」

「はっ!? その剣、さては貴様反対するワシを亡き者にして娘を……」

「いや貴方がワシごと殺れって言ったんでしょう!?」

風前の灯と思われた国王の命ですが、軍務卿パパと娘の彼氏近衛くんの間で謎の争いが勃発して膠着状態になってしまった模様。

公爵は再びクソデカため息をつくと、状況を打開すべく立ち上がり、わちゃわちゃする国王達の元へ歩み寄るのでした。


その後、捕えられた国王(公爵が命まで取る気がなかったのて止めた)と王子は魔物の蔓延(はびこ)る辺境へと追放。公爵が国王の座につく事になりました。この決定に閣僚は元より離縁して実家に戻される王妃すら反対はしませんでした。なんなら王妃は公爵に対してにこやかな微笑みで拳を握って親指を上に立てていたそうな。息子への愛とか無いのか?と思うかもしれませんが日に日に父親に似てくる息子に恐怖と絶望を感じ、今は解放された喜びしか感じていないんだとか。

さて追放された元国王親子ですが、

「ヒャッハー! レッサードラゴン狩ってきたぞー! 息子よ! 今日は新鮮な肉(ドラゴンステーキ)だー!!」

「父上すごいウゴ! 俺も頑張ったけどアーマードベア(立ち上がると5m程になる全身甲殻に覆われた凶暴な熊)がやっとだったウゴ! 尊敬するウゴ!」

「ヒャッハー! 10歳でそれなら充分過ぎるぞ息子よ!」

その魔力と無駄だった才能を活かし、無事野生化した模様。彼らが魔獣を狩りまくったため、辺境の安全度が増して人口も増えていきます。その流れで国境の向こう側に入植する者達も出てきて、彼らからは元国王親子は尊敬されているのだとか。

「そう言えば我が国が建国されたのは王家の人間が魔獣を狩って人類の生存圏を広げたからだったな……」

歴史は繰り返すのだろうかと元公爵な国王をはじめとする王国上層部は微妙な気分になっています。

その後、敵対する訳でも無いが妙に交流を避けていた隣国から使節が訪れ、交流を避けていた理由が「貴国の元王家がアホ過ぎて追放された我が国の元国王の子孫だったから」と聞かされて白目をむく事になるのでしたとさ。

邪神眷属討伐計画H-103A3《英雄因子》

邪神と呼ばれる外からやってきた侵略者がこの世界の生物を抹殺すべく放った『魔獣』、この因子の持ち主はそれを討伐し、人類の生存圏を広める為に神が作り出した生体兵器となる。

強大な魔力とそれを効率的に身体強化として運用するために調整されており、圧倒的な身体能力と骨折すら一瞬で治る再生能力を持つ。また、危険察知や回避と言った生存に必要なスキルへの適正も極めて高い。

しかしながら人間に与える事が出来るリソースは一定値を超えられない為、あえて知能を落とし三大欲求への耐性を落とすなどの欠点を作る事でそのマイナス分を能力強化に加算している。また三大欲求のうちで特に食欲は「新鮮な魔獣肉」、それもより強大な魔獣のものを好むように調整されている。

あまり数が増えても困る為、基本的に直系長子にだけ発現する。

なお神も無秩序に生存圏を広げ人類社会が混乱する事は望んでおらず、一定の生存圏を確保した後、その生存圏が安定するまでこの因子は休眠状態になる。逆を言えば安定すれば再び因子は活性化状態になる訳である。

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― 新着の感想 ―
要はこのポンコツ王家は野生のヒャッハー族にしとくのが一番良いんだね(°▽°)公爵家もそれなりに王家の血が入ってた割にヒャッハー族にならないのは王家よりは血が薄いからかな?(,,・д・)
適性ってだいじだなあ。
つまりはアホが生まれたら、魔獣討伐に送り出すと、生存圏が広がるし、安定するまではまともな子孫が生まれると。
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