Replica
孤独だった、みんなと同じ。
だが、憧れはあった。
図工は得意だった。
小学生ながら、春に咲く花ではなく
夏に生い茂る緑葉に興味を抱いた。
だが花を書いた。なぜか?
人は「人間の美の基準とするもの」に
惹かれるからだ。
桜を描けばみんなから褒められ、
授業参観で私が手を挙げている後ろで自慢する母親がいる。
その日常が単純に好きだった。
これが「幸せ」だと思った。
だが母親はある日不思議に思う。
私がひとつの西洋画を「欲しい」とねだったからだ。
それには一本のオリーブの木が描かれているだけで、実も無ければ、授業参観の時見たような鮮やかな桃色ではない。
私は綺麗な物が好きだ。
決して汚いものなど見たくはない。
ただ純粋に、このオリーブの木を「桜よりも美しい」と思ってしまっただけだった。
人の求めていること、それをする。
人の求めているもの、それを求める。
私はもうそうするしかなかった。
中学生になれば欲求もひと段落して、
勉強に集中するようになった。
3年後には受験が控えているから、そう母親に言われたからだ。
当然、もっとしたいことはある。
スポーツはろくに出来ないが友達とサッカーくらいはしたい。
ゲームもしてみたい。
それなりに他人を大切にして、一緒にいろんなことをしたい。
その欲求が、僕の才能になった。
私のかいた絵は、世間に評価され賞も貰えた。
日常的な事を描くことが増えた。
できなかったサッカーや、友達と教室で遊ぶ風景。
中学生らしいと大人の評判もよかった。
中2のころになると、部活内での評価も上がり、記憶に残っている思い出を描き、賞に出そうということになった。
私はオリーブの木を下書きした
私の描いた絵は、評価されなかった。
思い出とはなんだろう。他人と話し、他人に評価されることか?
違う。自分で評価することだ。
私は酷く捻くれてしまったのかもしれない。
他人に評価されないとこんなに落ち込むことなのか。
たった一人、評価してくれた「彼女」がいた。
その人は不思議な人で、優しかった。
みんな綺麗な人だと言っていた人だったから、私は嬉しかったのかもしれない。
ただ、美しくない。
嫌いではないが、私の描いた私の「美」の感覚に共感するなんて正気とは思えない。
だが、僕は彼女に縋るしかなかった。
冬、彼女に恋をすることにした。
彼女は受け入れ、私を愛した。
私は写真を撮るようになった。
彼女との思い出を記念に残すために。
ある日、彼女が絵を描いて欲しいと言ったので
私は彼女の絵を描いて、プレゼントした。
彼女が居なくなった。
なぜだかわからない。
苦しい
評価されなくなるのがこんなに辛いなんて、知らなかった。
彼女の友達に初めて会った。
彼女の話をたくさんしてくれて、一緒に泣いてくれた。
その友達と恋仲になった。
初めはぎこちないキスから、私の方が慣れていた。
毎日のように一緒にいたからか、私の作品に興味を持ってくれた。
僕は嬉しかった。
でも違う。「彼女」じゃない。
あなたはもういない。
傷ついた君を見るのが好きだ。
あなたの話をするとひどく嫉妬をする
キスをするフリをして唇を噛む
頬に強く触れる
君は外に出られなくなるようになって、
私は毎日会いに行ってあげたね。
「君も彼女に会いたい?」
君はうなづいたね。
「私も会いたい」
8月、樹海で3人の中学生の遺体が見つかった。
一人の横には「絵」があった。
そこには「マイちゃんへ」と書いてある。
黒い頬に、青色で傷の付いた唇。
女性の遺体二人には、同じような傷跡が同じ箇所に見られた。
「綺麗になったね。」




