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神国プロトコル  作者: キロヒカ.オツマ―


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16/18

それでも、世界は私を必要としなかった

夜と昼の区別は、

もう曖昧だ。


ここでは、

時間は進まない。

ただ、

積み重なる。


壁の色は

最初からこの色だったのか、

それとも

私の目が

そう見せているだけなのか。


私は、

自分が

何者だったのかを

思い出そうとする。


科学者。

思想家。

行動する知性。


――違う。


私は、

 “選ばれた”と

 思い込んだ人間だ。


私は、

ずっと

信じていた。


この国は

弱くなったのではない。

裏切られただけだ、と。


誰かが

決断しないから

腐ったのだ、と。


だから、

私が

決断する。


それが、

使命だと。


だが今、

ここで

一人きりになって

分かる。


私の思想は、

 誰からも

 必要とされていなかった。


企業は、

私を

信じていなかった。


彼らが

信じていたのは、


私の怒り


私の確信


私の孤立


――利用しやすさだ。


政治家も、

同じだ。


彼らは、

私の理想に

一度も

賛同していない。


ただ、

「使える間は

 使う」

それだけだった。


私は、

それを

“支持”だと

呼んでいた。


天皇を語った。

国家を語った。

民族を語った。


だが、

今なら分かる。


私は、

それらを

守ろうとしたのではない。


自分が

 正しいと

 信じ続けるための

 重さとして

 借りていただけだ。


天皇は、

私を

必要としなかった。


国家も、

民族も、

私の行動を

求めていなかった。


それでも、

私は叫んだ。


「これは、

 日本のためだ」と。


――自分のためだ。


その一言を

認めるのに、

ここまで

時間がかかった。


私は、

敵を

憎んでいた。


左派。

外国。

裏切り者。


だが、

本当の敵は

私を

一度も

止めなかった。


否定もしなかった。


放置した。


それが、

最も

残酷だった。


もし、

誰かが

真正面から

私を否定していたら。


もし、

議論になっていたら。


私は、

まだ

戦えていた。


だが、

現実は違った。


彼らは、

私が

勝手に

壊れるのを

待っていた。


ここでは、

誰も

私に

何も聞かない。


思想も、

理由も、

意味も。


私は、

ただの

「危険人物」だ。


その分類は、

正確だ。


だが、

不完全だ。


なぜなら、

そこには

私が見た

構造が

含まれていない。


だが同時に、

それでいいとも

思っている。


なぜなら――


私自身が、

 その構造の

 一部だったからだ。


私は、

世界を

変えようとした。


だが、

世界は

私を

変える必要が

なかった。


それだけのことだ。


思想は、

力ではない。


力に

選ばれなければ、

ただの

重荷だ。


私は、

自分を

“思想を持った人間”だと

思っていた。


違う。


思想に

 縋らなければ

 立っていられなかった

 人間だった。


もし、

私が

最初から

一人だったなら。


支援も、

賞賛も、

沈黙も

なかったなら。


私は、

ここまで

来なかっただろう。


だが、

私は

選ばれた。


正確には――


選ばれたと

 思わせてもらえた。


それが、

私の

唯一の成功であり、

完全な失敗だった。


夜が、

また

来る。


私は、

もう

祈らない。


何も

願わない。


ただ、

一つだけ

確かなことがある。


私が崩れたところで、

世界は

何も変わらない


そして、

それを

理解してしまった瞬間に――


私の思想は、

完全に

終わった。

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