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神国プロトコル  作者: キロヒカ.オツマ―


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11/18

止める対象は、最初から違っていた

相沢が呼び出されたのは、

都心から少し外れた、

企業研修施設だった。


名目は、

「非公開勉強会」。


主催は、

彼女がUSBで見た

“寄付企業”の一つ。


拒否する理由は、

表向きにはなかった。


案内された会議室には、

七人が座っていた。


全員、

スーツ姿。

名刺は出ない。


だが、

誰がどの業界かは

一目で分かる。


金融。

エネルギー。

インフラ。

通信。


国家より長く生きる組織。


「今日は、

 確認のために来ていただきました」


進行役の男が言う。


「確認、とは」


相沢が返す。


男は、

微笑んだ。


「あなたが、

 “誤解”していないかどうか」


その瞬間、

相沢の背筋が冷えた。


スクリーンが点く。


映し出されたのは、

タイムライン。


彼女が見てきた出来事。

鷹宮の動き。

委員会の設置。

例外規定。


だが、

日付が違う。


すべて、

彼女の認識より

半年以上前に始まっていた。


「……これは」


相沢の声が、

わずかに震える。


「鷹宮恒一は、

 “計画者”ではありません」


男は、

淡々と言った。


「彼は、

 選ばれた実行責任者です」


その言葉で、

世界が反転した。


――利用されている?


――いや、

 配置されている。


「彼がいなくても、

 この流れは

 止まりません」


別の男が続ける。


「彼は、

 “最も適した思想”を

 持っていただけです」


相沢は、

理解した。


鷹宮の過激さ。

純度。

引き返さない性質。


それらは、

危険だから選ばれたのではない。


責任を引き受けさせるためだ。


「……では、

 止める気は?」


相沢が問う。


男たちは、

顔を見合わせる。


そして、

進行役が答えた。


「止める必要が、

 どこに?」


その瞬間、

相沢の中で

一つの仮説が完成する。


――国家は、

 主導していない。


――国家は、

 “後追いで正当化する役”。


「では、

 三浦は?」


相沢は、

その名前を出した。


一瞬、

空気が動いた。


「……ああ」


進行役が、

少しだけ表情を変える。


「彼は、

 想定外です」


その一言で、

全てが繋がった。


三浦は、

止めに来たのではない。


予定表に存在しない人間だった。


「あなたに、

 これ以上

 できることはありません」


男は言う。


「書けないでしょう。

 これ」


相沢は、

否定しなかった。


「ですが」


男は、

言葉を続ける。


「あなたが、

 何を見たかは、

 記録されます」


それは、

脅しではない。


履歴だ。


会議が終わり、

相沢は外に出た。


夜風が、

やけに冷たい。


携帯が鳴る。


三浦からだった。


『……相沢さん』


声が、

疲れている。


「分かりました」


相沢は、

先に言った。


「鷹宮は、

 “中心”じゃない」


沈黙。


『……ええ』


三浦が、

小さく息を吐く。


『俺も、

 今しがた

 同じ結論に

 辿り着きました』


「じゃあ、

 誰を止めますか」


三浦は、

すぐには答えなかった。


そして、

静かに言った。


『……止める、

 という発想自体が

 間違いだった』


その言葉で、

第一の大どんでん返しは

完成する。


――これは、

 テロを止める物語ではない。


――責任を

 誰に押し付けるかの

 物語だ。


相沢は、

夜空を見上げた。


星は、

見えない。


だが、

確実にそこにある。


見えないまま、

世界を動かすもの。


彼女は、

理解してしまった。


この物語で、

 最も危険なのは、

 思想ではない。


思想を

 “使える形”に

 整える者たちだ。

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