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第7話 出発の朝 ―護衛の列に加わって―

おはよう!今回はついに「旅立ちの朝」。

昨日まで準備でドタバタしていた陽介とアイリスが、いよいよ護衛隊の一員として街を出るシーンです。緊張する陽介、ツンデレで励ます(?)アイリス、そして頼れる先輩フィオラ、新登場の護衛長ガルド。

キャラ同士の会話と街の空気感を、前回よりも濃く描いてみました。

二人の冒険はまだ始まったばかり――その一歩を一緒に見届けてください。

 まだ太陽が顔を出す前、空は群青から橙へとにじむ。オルフェンの城門外れには、すでに馬車の列がずらりと並んでいた。荷物を満載した幌馬車、外装を固めた荷馬車、商人たちが荷を点検し、騎馬の兵が往来を整理する。街の中とは違う、張り詰めた空気が広がっていた。


「……すげぇ、馬車の数」

 陽介は思わず呟いた。十数台にも及ぶ列、その両脇には武装した冒険者たち。見知った顔もあれば、初めて見る者も多い。普段の薬草採取や小規模な討伐依頼とは桁違いの規模。胸の奥がざわついた。


 手を広げてみれば、指先がかすかに震えている。必死に笑おうとしても、引きつった。


「だ、だめだ……。緊張で足まで震えてる……」

 情けなく打ち明けると、横から肘でツンと突かれた。


「だらしないわね」

 アイリスはそっけなく言いながらも、頬をうっすら赤くして視線を逸らした。

「でも……まあ、ちょっとだけわかるけど」


「な、なんだよ今のデレは!?」

「デレって言うなっ!」猫耳が跳ね、しっぽが怒ったように左右にぶんぶん。

 その様子に、近くで荷を括っていた商人が思わず笑みを零した。


 そんな二人の前に、フィオラが歩み寄ってきた。夜明けの光を背負った彼女は、どこか頼もしく見える。

「おはよう、二人とも。大きな仕事の朝は、やっぱり特別よね」


「フィオラさん!」陽介は胸が軽くなるのを感じた。

「緊張してるでしょ? でも大丈夫。怖いのはみんな同じだから。それに……」フィオラはアイリスへ視線を向け、微笑む。

「陽介くんには心強い相棒がついてるでしょ?」


「わ、私!? な、なんでそこで私の名前が出るのよ!」

 顔を真っ赤にしてしっぽを暴れさせるアイリス。だが、ほんの小声で「……そばにはいるけど」と呟いた。

 陽介はその一言に思わず笑みをこぼした。緊張が、少しだけ解けていく。


 そのとき。

 列の先頭から、鋭い視線がこちらに向いた。大柄な男が歩み寄ってくる。肩幅は広く、鎧には無数の傷跡。腰の剣は使い込まれ、立っているだけで威圧感を放っていた。


「君たちが新しく護衛に加わるFランク組か」

 低く響く声に、陽介は慌てて背筋を伸ばした。

「は、はいっ!」

「ええ、そうです」アイリスも落ち着いた声で返す。


 男は少し口元を緩めた。

「俺はガルド。この商会の専属護衛長だ。昔はAクラスの冒険者だったが、今は商隊を守るのが役目だ。よろしく頼む」


「よ、よろしくお願いします!」

「こちらこそ」アイリスも会釈する。


「安心しろ。俺がいる限り、この隊はそう簡単にやられん。……とはいえ油断はするなよ」

「はい!」陽介は即座に返事をした。その言葉に、不思議と心が和らぐ。


 護衛たちは各馬車ごとに配置され、荷馬車の周囲を固めていく。陽介とアイリスは三台目の馬車の担当になった。商人たちが慌ただしく荷の確認をしており、革袋からは薬草の青い匂いが漂う。


「これが……護衛依頼か」陽介は呟く。

 隣でアイリスは顎に手を当てた。

「薬草、香料、希少鉱石……どれも高額。狙う盗賊が出るのも当然ね」

「脅かすなよ……」

「事実を言っただけ」猫耳がぴょこんと動く。

 だが、彼女の隣に立つだけで心強さがあった。


 やがて号令が響く。

「――出発だ!」


 車輪が軋み、馬のいななきが空に響く。隊列がゆっくりと動き出す。街道の石畳に最初の轍が刻まれる。


「いよいよだな」陽介が呟く。

 アイリスは横目で彼を見やり、ほんの少し笑った。

「ええ。……しっかりしなさいよ、陽介」

「おう!」


 街の外壁が背後に遠ざかる。オルフェンの朝日は、二人の旅立ちを祝福するように輝いていた。

読んでくれてありがとう!

第7話は、いよいよ「護衛隊列の一員」として出発する二人を描いた回でした。

陽介の緊張、アイリスのツンデレ励まし、フィオラの包容力、そして新キャラ・ガルドの登場――物語の舞台が一気に広がったよね。


次回はいよいよ「街道での初仕事」。護衛任務がただの旅で終わるはずはなく、最初の試練が彼らを待ち受けています。

どうぞお楽しみに!✨

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