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第49話 夜、そして休息

街の一日は、静かに終わっていく。

討伐の翌日。特別な予定はなく、急ぐ理由もない。


食事をして、装備を整え、明日に備えて眠る。

冒険者にとって、それは何度も繰り返してきた、ごく普通の夜だった。

日が落ちると、街の喧騒はゆっくりと静まっていった。

市場の呼び声は消え、通りを歩く人の姿もまばらになる。


宿の一階では、夕食の支度が整っていた。

木のテーブルに並ぶ料理から、湯気が立ち上る。


「今日はここまでだな」

ガルドが席につきながら言う。


「明日からは通常に戻れますね」

フィオラが応じる。

「しばらくは近場の依頼でしょうし」


「無理はしない」

ガルドは短く言って、杯を手に取った。


陽介とアイリスも席につく。

料理は素朴だが、落ち着く味だった。


「明日はどうする?」

陽介が何気なく聞く。


「ギルドに顔出すくらいじゃない?」

アイリスが答える。

「依頼、いくつか溜まってるでしょ」


「ですね」

「変なのは受けない。それだけ」


それ以上、話は広がらなかった。

予定を詰めるほどのこともない夜だった。



食事を終え、各自が部屋へ戻る。

廊下は静かで、足音だけが小さく響いていた。


「今日はもう休もう」

ガルドが言う。

「明日は朝から動けるようにな」


「了解」

フィオラが頷く。


陽介が立ち止まり、振り返る。

「おやすみなさい」


「はいはい」

アイリスが軽く手を振る。

そして、いつもの調子で言った。


「……ちゃんと、明日も起きなさいよ」


「大丈夫ですよ」

陽介は気にも留めず、そう返した。


それぞれの扉が閉まり、宿はさらに静かになる。



部屋に入った陽介は、装備を外し、弓を壁に立てかけた。

弦を緩め、矢筒の中身を軽く確認する。


「明日でいいか」


小さく呟き、椅子に腰を下ろす。

体に残る疲れは、心地よい程度だった。


窓の外から、街の夜の音が聞こえる。

遠くで誰かが笑い、どこかで扉が閉まる。


どれも、聞き慣れた音だった。



布団に横になると、自然と呼吸が整っていく。

考え事をするほどのこともない。


索敵の声が聞こえない夜。

指示も、戦闘もない。


「……静かだな」


そう思いながら、目を閉じる。


明日も、いつも通りの朝が来る。

そう思いながら、眠りについた。



隣の部屋の灯りが消える。

宿全体が、夜に包まれていく。


何にも変わることもなく。


いつもの朝を迎えるだけの夜だった。

第49話は、何も起きない夜を描きました。

食事をして、少し話をして、休む。


それだけの一日です。

そして翌朝を迎えます。

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