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第48話 街の午後

合同討伐を終えた翌日。

街はいつも通り動いていた。


特別な依頼もなく、急ぐ用事もない。

装備の手入れ、買い物、食事。

冒険者にとって、こうした何も起きない時間もまた大切な日常だった。


陽介とアイリスは、久しぶりに街を歩くことにする。

昼前の街は、人通りが多かった。

市場からは威勢のいい呼び声が響き、焼き物や香辛料の匂いが風に乗って流れてくる。


「人、多いですね」

陽介が周囲を見回しながら言った。


「討伐が終わった翌日なんて、こんなものよ」

アイリスは腕を組み、平然と答える。

「商人も冒険者も、動き出すのが早いんだから」


二人は市場の一角で立ち止まった。

露店には食料や道具、装飾品まで並んでいる。


「矢、そろそろ補充しないと」

陽介が言う。


「そうね」

アイリスは矢束を手に取り、軽く確認する。

「……質は悪くない。これでいいんじゃない?」


「助かります」

「当たり前でしょ。使うのはアンタなんだから」


やり取りは自然で、迷いもない。

以前なら、こんな会話すらぎこちなかったことを、陽介はふと思い出した。



買い物を終えたあと、二人は通り沿いの食堂に入った。

昼時で混み合っていたが、運よく空いている席があった。


「今日は何にする?」

アイリスがメニューを覗き込む。


「肉……かな」

「昨日も肉だったでしょ」

「討伐の後だからいいんです」


「まったく……」

そう言いながら、アイリスも同じものを頼んだ。


料理が運ばれてくるまでの間、二人は何気ない話を続ける。


「弓、だいぶ慣れてきたわね」

アイリスが言う。

「連射の間隔、前より安定してる」


「そうですか?」

「ええ。索敵してて、無駄な動きが減ったのがわかる」


「それなら、よかった」

陽介は素直に頷いた。


料理が届くと、会話は自然と止まり、食事に集中する。

熱々の皿と、賑やかな店内。

それだけで、十分だった。



食後、二人は街をもう少し歩いた。

雑貨屋を覗き、鍛冶屋の前で足を止める。


「次、何か依頼受ける?」

陽介が何気なく聞く。


「どうせ近場でしょ」

アイリスは即答する。

「遠出はしばらくいいわ」


「ですよね」

「討伐続きだったし、休みも必要」


言葉に含みはない。

ただ、予定の話をしているだけだった。



午後も遅くなり、日差しが少し柔らいだ頃。

二人は宿の前まで戻ってきた。


「今日はこのまま休みだな」

陽介が言う。


「そうね」

アイリスは軽く伸びをする。

「矢の手入れ、後でやっときなさいよ」


「はいはい」

「はいは一回でいい」


いつものやり取り。

変わらない距離感。


街の音が、ゆっくりと夕方へ向かっていく。


今日も、ただの一日だった。

第48話は、討伐後の何も起きない一日を描きました。

買い物と食事、そして何気ない会話。


次回は、また新しい一日が始まります。

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