第46話 合同討伐
ギルドから出された依頼は、久しぶりに規模の大きいものだった。
特定の地域で魔物の数が増え、単独のパーティでは対処しきれない。
そこで複数の街から冒険者を集め、合同で討伐隊を編成することになった。
陽介たちもその一員として参加する。
特別な役割が与えられたわけではない。
いつも通り、索敵と指示、そして弓。
ただ、それだけだ。
冒険者ギルドの前広場は、朝から人で溢れていた。
普段よりも多い数の冒険者が集まり、それぞれ装備を整え、仲間と短く言葉を交わしている。
「ずいぶん集まったな」
ガルドが周囲を見渡しながら言った。
「隣の街からも来てるみたい」
フィオラが指差す先には、見慣れない紋章をつけた装備の一団がいた。
陽介はその数に、思わず息をのむ。
「……こんなに大規模なの、初めて見ました」
「今回は数が多いからな」
ガルドは落ち着いた声で続ける。
「一体一体は強くないが、群れになると厄介だ。連携を崩さず、持ち場を守る。それだけだ」
「了解」
フィオラが頷く。
「索敵は私がやるわ」
アイリスが即座に言った。
「周囲三方向、常時見る。変化があったらすぐ伝える」
「頼む」
陽介は短く答え、弓の弦を確かめた。
◆
討伐地点は、街道から少し外れた丘陵地帯だった。
視界は開けているが、起伏が多く、魔物が隠れやすい。
全体の隊列は大きく三つに分かれ、それぞれが担当区域を持つ。
陽介たちは中央寄りの位置に配置された。
「来るわ」
アイリスの声が即座に響く。
「前方、左から……五、いや七体」
「迎撃準備」
ガルドが指示を出す。
魔物の群れが姿を現す。
数は多いが、動きに統制はない。
「撃て」
ガルドの合図と同時に、陽介は矢を放った。
矢は正確に魔物を貫き、次の矢が続く。
無駄のない動きで、淡々と数を減らしていく。
「右、追加三体」
「了解」
フィオラが前に出て動きを止め、陽介の矢が確実に仕留める。
連携はいつも通りだった。
◆
戦線が少し落ち着いた頃、陽介はふと視線を遠くへ向けた。
丘の向こう側。
別の討伐班が、少し離れた場所で戦っているのが見えた。
動きが速い。
連携も洗練されていて、魔物を次々と処理していく。
「……あの人たち、すごいですね」
陽介がぽつりと呟く。
「ああ」
ガルドはそれだけ答えた。
それ以上、言葉はなかった。
視線もすぐに戦場へ戻る。
◆
再び戦闘が激しくなる。
「前、密度上がるわ」
「わかった」
アイリスの索敵は途切れない。
情報は簡潔で、判断に迷いがない。
「陽介、奥を狙え」
「はい」
矢が飛び、魔物が倒れる。
一射ごとに、戦線が整っていく。
時間はかかったが、混乱はなかった。
数の多さも、徐々に減っていく。
やがて、全体に合図が響いた。
「討伐完了!」
周囲から、安堵の声が上がる。
だが歓声は控えめだった。
あくまで、仕事が終わっただけだ。
◆
撤収の準備をしながら、フィオラが言った。
「大きな怪我人もいない。いい討伐だったね」
「想定通りだ」
ガルドは短く答える。
アイリスは周囲を確認し、頷いた。
「残存反応なし。もう大丈夫」
陽介は弓を下ろし、深く息を吐いた。
「……終わりましたね」
「ああ」
ガルドは陽介の方を一度だけ見て言った。
「いい働きだった」
それだけで十分だった。
◆
討伐隊は、それぞれの街へ戻るために散っていく。
他のパーティと交わす言葉はほとんどない。
ただ、同じ仕事を終えた冒険者として、同じ方向へ歩いていただけだった。
今回は、複数の街から集まった合同討伐を描きました。
規模は大きいものの、各パーティはそれぞれの役割を果たし、作戦は順調に進行します。
次回は、討伐後の流れと、街へ戻るまでの一幕です。




