第44話 依頼完了と報酬の夜
長い行程を終え、陽介たちは街へと帰還した。
薬草採取の依頼は無事成功。
残る仕事は、ギルドへの報告と報酬の受け取りだけだ。
特別な事件は起きない。
だが、こうした何事もない一日こそが、冒険者の日常だった。
街門が見えたとき、陽介は自然と肩の力が抜けるのを感じた。
「やっと戻ってきたな……」
石畳の街道に足を踏み入れると、聞き慣れた喧騒が耳に届く。
行き交う人々、商人の呼び声、子どもたちの笑い声。
数日前に出発したときと、何も変わらない光景だった。
「街って、やっぱり落ち着くわね」
アイリスが周囲を見回しながら言う。
「索敵的にも、ここは安心だな」
フィオラが頷いた。
ガルドは短く笑う。
「まずはギルドだ。報告を済ませちまおう」
◆
冒険者ギルドは、相変わらず賑わっていた。
依頼を探す者、報告を終えた者、酒を片手に騒ぐ者。
その中を抜け、四人は受付カウンターへ向かう。
「お帰りなさい」
受付嬢が書類を取り出す。
「山間部の薬草採取依頼ですね?」
「問題なく完了だ」
ガルドが簡潔に答えた。
陽介は袋から丁寧に包まれた薬草を取り出す。
「指定された量、全部揃ってます」
受付嬢は目を見開いた。
「これは……質も量も十分ですね。確認取れました」
「弓が入るとだいぶ楽だな」
ガルドが横目で陽介を見る。
「頑張りました」
陽介が少し照れながら答える。
「……誰のおかげだと思ってるのよ」
すかさずアイリスが口を挟む。
「はいはい。アイリス様のおかげですよ」
陽介が即答すると、
「わかればよろしい」
アイリスは満足そうに胸を張った。
そのやり取りに、フィオラとガルドが声を出して笑った。
「連携も安定してきたな」
フィオラが言う。
「この組み合わせ、かなり噛み合ってる」
「依頼完了っと」
受付嬢が報酬袋を差し出す。
「お疲れさまでした」
ずしりとした重みを受け取り、陽介は素直に嬉しくなった。
◆
報告を終えたあと、四人はギルド併設の酒場へ向かった。
「今日は飲んでいいだろ」
ガルドが言う。
「無事に帰ってきた祝いだ」
「賛成」
フィオラが即答する。
陽介は少し迷ったが、すぐに頷いた。
「……たまには、いいですよね」
テーブルには料理が並び、杯が配られる。
「乾杯だ」
ガルドが杯を掲げる。
「依頼成功に」
フィオラが続ける。
「……無事に」
アイリスも短く言った。
杯が触れ合い、軽い音が響く。
料理を口に運びながら、話題は自然と今回の依頼に移った。
「山越えの道、思ったより長かったな」
「でも、危険は少なかった」
「薬草も状態が良かったし、いい依頼だった」
陽介は黙って聞きながら、時折相槌を打つ。
以前なら会話についていくので精一杯だったが、今は違った。
「次はどうする?」
フィオラが尋ねる。
「しばらくは近場だな」
ガルドが答える。
「体力も戻させたい」
「それなら、また弓の手入れしとこ」
陽介が言う。
「矢、だいぶ使ったでしょ。補充しとくわ。」
アイリスが言う。
「うん、頼む」
陽介は素直に答えた。
何気ない会話が続く。
誰も急がず、誰も焦らない。
いつもの夜だった。
◆
酒場を出るころには、街はすっかり夜の顔になっていた。
「今日は解散だ」
ガルドが言う。
「明日は休みにしていい」
「助かる」
フィオラが笑う。
「じゃ、また明日ね」
アイリスが軽く手を振った。
「おやすみ」
陽介も返す。
それぞれが宿へと向かい、夜の街に溶けていった。
特別なことは何も起きない。
ただ、依頼が終わり、日常が戻ってきただけだった。
薬草採取の依頼は無事に完了し、一行は街へ帰還しました。
ギルドへの報告、報酬の受け取り、そして軽い打ち上げ。
次回は、しばしの休息と、次の依頼に向けた準備に入ります。




