第4話 ギルドの宴とツンデレ全開アイリス
陽介と猫耳AI少女アイリスが、ついに冒険者として最初の一歩を踏み出す――!
ギルドに登録し、選んだのは初心者向けの薬草採取依頼。だが、異世界はそう甘くない。草むらの奥から現れたのは、想定外の魔物だった……!
陽介は初めて「命を賭けた戦い」に挑むことになる。
ギルドの大扉をくぐった瞬間、ざわついていた広間がしんと静まり返った。
陽介とアイリスの姿を見た途端、冒険者たちの目が一斉に輝き、次々に声が飛ぶ。
「おおっ! 帰ってきたぞ!」
「まさか無事とはな!」
「依頼帰り……しかも生きてるって顔だ!」
注目を浴びて、陽介は居心地悪そうに首をかいた。
「えっと……ただいま?」
その横で腕を組んだアイリスが、ツンと顎を上げる。
「ふんっ、当たり前でしょ。私のおかげなんだから!」
「いや、ほんとにそうだったよ。弱点教えてもらわなかったら、正直やばかった」
陽介が素直に礼を言った瞬間、アイリスの顔が一気に真っ赤になる。
「な、なっ……っ~~~~!! な、なによそれ! べ、別に助けてやったつもりなんかじゃないんだからねっ!」
耳がぴんっと立ち、尻尾がばたばた揺れている。
その様子に冒険者たちは爆笑。
「はははっ! 見ろよあの顔!」
「ツンツンしてんのに耳と尻尾でバレバレじゃねえか!」
「くぅ~たまんねぇ! おまえら、最高だな!」
「わ、笑うなあぁぁぁ!」
アイリスは陽介の腕を小突きながら真っ赤になって抗議するが、その姿がまた拍車をかける。
やがて裏庭では即席の宴が始まり、焼かれるのは狩ってきたロックボア。脂が弾ける音と香ばしい匂いに、陽介は思わずごくりと唾を飲んだ。
「やべえ……めっちゃいい匂いする」
するとアイリスが胸を張る。
「でしょ? これも、私が弱点を見抜いたおかげなんだから!」
「はいはい」
「ちょっと! 今の『はいはい』なに!? 本気で言いなさいよ!」
「本気で言ってるけど?」
陽介の涼しい顔に、アイリスは耳まで真っ赤になって言葉を詰まらせる。
「~~~~っっ! このバカっ!」
冒険者たちはまた爆笑。
「おい夫婦漫才か!」
「新人にしてこの存在感!」
やがて料理が完成し、肉が振る舞われる。
「うまいっ!」
「酒が進むぜ!」
広間は一気に笑いと熱気に包まれた。
陽介も一口食べて目を見開く。
「うまっ!」
「ふふん、当然でしょ。私の判断が完璧だったんだから!」
「いやいや、焼いたのは料理人さんだからね」
「~~~~っ! うるさい!」
頬を真っ赤にしながら怒鳴るアイリス。その姿すら場を和ませ、冒険者たちはさらに盛り上がる。
そこにギルドマスターが歩み寄る。
「若造……いや、陽介。アイリス。お前たち、正式にDランクに昇格だ」
陽介の目が丸くなる。
「えっ、もう?」
「Cランク魔物を倒した実績は大きい。だが、お前らの実力をつけるためにも、まだ試練は続くぞ」
「試練……」と陽介はごくりと息をのむ。
その横でアイリスは尻尾をゆらし、にやりと笑った。
「大丈夫よ、陽介。だってあなたには私がいるんだから」
その夜、ギルドの仲間たちは大きな宴を開いた。
豪快な笑い声、酒の匂い、焼き肉の香ばしい匂いが広間に立ち込める。
「乾杯!」
ジョッキがぶつかり、盛大な声が響き渡った。
フィオラも席に混じり、陽介に笑いかける。
「意外とやるじゃない。あのとき、あんたが慌ててた姿が嘘みたい」
「うっ……」と陽介は耳まで赤くなる。
「でも――」フィオラは視線をアイリスに向ける。
「ほんとにいい仲間を持ったわね」
「……ふ、ふん! 陽介は私が守るんだから!」
その言葉に、陽介は思わず笑ってしまう。
「うん、ありがとな」
一瞬、アイリスの頬がかぁっと熱くなり――すぐに顔を背けた。
「べ、別に感謝されたいわけじゃないんだから!」
またしても笑いが起こる。
その夜、街は遅くまで賑やかに明かりを灯し続けた。
こうして、陽介とアイリスの冒険は、本当の意味で始まりを告げたのだった。
その夜、笑いと香ばしい匂いに満ちたギルドで、陽介とアイリスの名前は一気に広まり、誰もが「面白い新人コンビが来た」と噂することになった。
Fランクから始まった陽介たちの冒険。
薬草採取だけのはずが、思いがけず魔物との死闘を経験し、そして“レベルアップ”という成長の実感を得ることができた。
まだまだ弱く、危なっかしい二人だが――確かに「冒険者」としての道を歩み始めた。
次回、第5話。
街のギルドで待っていたのは、陽介とアイリスを“面白い新人コンビ”として噂する冒険者たち。
はじめての宴、はじめての仲間たちとの交流……そして、アイリスのツンデレがさらに炸裂!




