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第36話 無事到着、そして評価

街道の護衛は、特別な事件もなく進んでいく。

小さな小競り合いはあったものの、大きな被害はなく、隊列は崩れない。


そして、目的地はすぐそこだ。

依頼の成否が決まるのは、戦いの最中だけではない。

無事に到着し、荷を届ける――それこそが護衛の仕事の本質だった。


この日、四人は改めてそれを実感することになる。

夕方が近づく頃、前方に街の外壁が見えてきた。

石造りの門と、行き交う人々の姿が、長い街道の終わりを告げている。


「見えてきましたね」

 商隊の責任者が、ほっとした声を漏らした。


「予定より早い」

 ガルドが頷く。

「この分なら、問題なく入れるな」


 隊列に、目に見えて安堵が広がる。

 馬車の進みも、わずかに軽くなったように感じられた。



 街門の前で、護衛隊は一度足を止めた。

 入城の手続きと、簡単な確認。


「合同護衛です」

 前衛パーティのリーダーが門兵に告げる。


「問題ありません」

 門兵は頷き、視線を隊列に巡らせた。

「……ずいぶん整った編成ですね」


「いつもこうだと助かるんだがな」

 ガルドが小さく笑う。


 門をくぐると、街の喧騒が一気に戻ってきた。

 商人の呼び声、荷を運ぶ音、夕食の匂い。


「やっぱり街はいいな」

 誰かが呟く。



 商隊は指定された倉庫へと向かい、荷下ろしを始めた。

 護衛隊は周囲を固め、最後まで気を抜かない。


「問題なし」

 アイリスが小さく言う。

「追尾の気配もないわ」


「了解」

 陽介は弓を下ろし、肩の力を抜いた。


 荷下ろしが終わると、商隊の責任者が深く頭を下げた。

「ありがとうございました。本当に助かりました」


「仕事ですから」

 フィオラが穏やかに応じる。


「それにしても……」

 責任者は、ちらりと陽介を見る。

「後ろの弓手さん、ずいぶん安定してましたね」


「そうだな」

 前衛の冒険者も頷く。

「距離を保ったまま処理できた。正直、かなり楽だった」


 陽介は少し照れたように頭を掻いた。

「護衛向きの動きができただけです」


「それができるのが、価値だ」

 ガルドが短く言った。



 しばらくして、他のパーティの冒険者たちも集まってきた。

「今回の護衛、スムーズだったな」

「無駄な消耗がなかった」


「後衛がよく見てた」

「弓の判断が早かったな」


 口々にそんな言葉が交わされる。


 陽介は、自分が話題の中心になることに、まだ慣れていなかった。

「……ありがとうございます」


「気にするな」

 フィオラが小さく笑う。

「評価されるのは、悪いことじゃない」


 アイリスは腕を組み、得意げに言った。

「当然よ。私がちゃんと索敵してたんだから」


「はいはい」

 陽介は苦笑する。


 だが、ふと気づく。

 評価の言葉の多くが、弓に向けられていることに。


(……前は、索敵ありきだったのに)


 その考えは、すぐに打ち消した。

 今は、順調に仕事が終わった。それでいい。



 夜。

 護衛隊はそれぞれ宿を取ることになった。


「明日は帰路だな」

 ガルドが言う。


「帰りも合同で動くんですか?」

 陽介が尋ねる。


「ああ」

 ガルドは頷く。

「このままの編成で戻る」


「問題なさそうですね」

 フィオラが言う。


「ええ」

 アイリスも短く答える。

「この道なら、心配はいらない」


 その言葉に、誰も異を唱えなかった。


 宿の窓から見える街の灯りは、穏やかだった。

 今日もまた、無事に一日が終わる。


 それは、冒険者にとって何よりの成果だった。

第36話では、合同護衛隊が無事に目的地へ到着し、仕事を終える様子を描きました。

大きな事件は起きていませんが、外からの評価が少しずつ変わり始めています。


まだ主戦力ではありません。

けれど、弓という役割が確かに認識されつつあります。


次回は帰路。

行きよりも自然に噛み合った連携が描かれていきます。

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