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第34話 合同護衛隊、結成

今回の依頼は、少し規模が大きい。

遠方の街まで向かう商隊の護衛――それも一組ではなく、複数パーティによる合同任務だった。


特別な危険が予想されているわけではない。

だが荷の量が多く、距離も長い。

万全を期すための編成だ。


冒険者たちは集い、それぞれの役割を確認し、静かに旅立つ。

この時点では、誰もが思っていた。

――いつも通りの仕事になるだろう、と。

冒険者ギルドの広間は、朝からいつもより賑わっていた。

掲示板の前に人だかりができ、受付の声が飛び交っている。


「合同護衛依頼……?」

 陽介は張り出された依頼書を見上げた。


「商隊の規模が大きい」

 ガルドが腕を組み、内容を確認する。

「街道も長い。安全策としては妥当だな」


「三組編成、ですか」

 フィオラが目を細める。

「前衛、側面、後衛をきっちり分ける形ね」


 その横で、アイリスはすでに周囲を見回していた。

「ふーん……人、多いわね。索敵する側としては楽だけど」


「楽って言うな」

 陽介が苦笑する。

「責任が分散する分、気は抜けないだろ」


「はいはい。わかってるわよ」



 集合時間になると、護衛に参加する冒険者たちが揃った。

 三組、合計十数名。


 前衛担当のパーティは、重装備の剣士と盾役が中心。

 側面を固めるのは、機動力のある軽装の冒険者たち。

 そして後衛――そこに、ガルドたちのパーティが配置された。


「後ろは任せた」

 前衛のリーダー格の男が、ガルドに声をかける。


「ああ。問題ない」

 ガルドは短く答えた。


 自然と、陽介は後方の少し高い位置を歩くことになった。

 視界が広く、弓を構えるのに都合がいい。


「配置、いい感じね」

 フィオラが言う。

「全体がよく見える」


「だな」

 ガルドが頷く。

「陽介、無理はするな。基本は警戒だ」


「はい」


 アイリスは一歩前に出て、軽く息を整える。

「索敵、開始。今のところ異常なし」


 その言葉に、隊列全体の緊張がほんの少し和らいだ。



 商隊が動き出す。

 馬車の車輪が軋み、石畳を進んでいく。


 道中は穏やかだった。

 街道は整備され、見通しも悪くない。


「人数が多いと、安心感が違うな」

 商人の一人が言う。


「その分、連携が大事だ」

 ガルドが応じる。

「油断しなければ、問題は起きん」


 陽介は周囲に目を配りながら、弓の位置を確認していた。

 引き金に指をかけることはない。

 だが、いつでも放てる。


(……こういう仕事が増えてきたな)


 ふと、そんなことを思う。

 単独ではなく、組織として動く仕事。


「陽介」

 アイリスが小声で言った。

「前方、問題なし。側面も静か」


「了解」


 それだけのやり取りで十分だった。



 昼前、小さな森を抜ける地点で、前方が一瞬ざわついた。


「――止まれ!」


 前衛の合図で、隊列が止まる。


 次の瞬間、低い唸り声が聞こえた。

 茂みの奥、小型の魔物が数体。


「数は少ない」

 アイリスが即座に言う。

「三……いや、四体」


「迎撃するほどじゃないな」

 ガルドが判断する。


 その時、陽介は弓を引いていた。

 合図を待つまでもない距離。


 矢が放たれ、魔物の一体が倒れる。

 続けてもう一本。


「早いな」

 前衛の冒険者が目を見開く。


 残りは前衛が処理し、戦闘は一瞬で終わった。


「……助かった」

「弓、効いてるな」


 小さな声が聞こえる。


 陽介は弓を下ろし、深く息を吐いた。

「問題ありません」


「いい仕事だ」

 ガルドが短く言った。


 アイリスは腕を組み、得意げに鼻を鳴らす。

「でしょ? 私の索敵とセットなんだから」


「はいはい」

 陽介は笑った。



 隊列は再び動き出す。

 何事もなかったかのように。


 合同護衛隊は、そのまま街道を進んでいった。

 誰もが思っていた。


――この仕事は、順調に終わるだろう、と。

第34話では、合同護衛隊の結成と出発を描きました。

三組編成という体制の中で、役割が自然に分担されていきます。


まだ大きな事件は起きていません。

けれど、配置と連携の中で、少しずつ変化は始まっています。


次回は道中での護衛任務。

弓が活きる場面が、少しずつ増えていきます。


引き続き、お楽しみください。

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