第33話 帰還と報告
勝利の夜が明ける。
村での宴の余韻を身体に残したまま、討伐隊は街へ戻ることになった。
やるべきことは、もう多くない。
ギルドへの報告、依頼の完了、そして一区切り。
冒険者としての「仕事の終わり」が、静かに訪れる。
朝の空気は澄んでいた。
村を包んでいた喧騒はすでに消え、穏やかな日常が戻っている。
「……ちょっと飲みすぎたな」
陽介はこめかみを押さえながら歩いていた。
「自業自得でしょ」
アイリスが呆れた声で言う。
「調子に乗って、何杯も飲むから」
「だって……勝ったし」
「それは否定しないけど」
そう言いながらも、彼女の表情はどこか柔らかい。
ガルドは先頭を歩きながら、いつも通りの落ち着いた様子だった。
「今日は帰るだけだ。無理はするな」
「はい」
全員が素直に応じる。
街道は静かで、魔物の気配もない。
あれほどの群れが近づいていたとは思えないほどだった。
◆
昼過ぎ、オルフェンの街門が見えてきた。
「帰ってきたな」
フィオラが微笑む。
街に入ると、いつもの音と匂いが迎えてくれる。
行き交う人々、商人の呼び声、石畳を踏む足音。
討伐隊はそのままギルドへ向かった。
◆
「――依頼完了、ですね」
受付の職員は報告書に目を通し、感心したように頷いた。
「被害なし、村も無事。討伐数も想定以上……かなり綺麗な仕事です」
「人数を揃えたからな」
ガルドが淡々と答える。
「それに、後衛の弓がよく機能してました」
フィオラが陽介を見て言う。
職員が視線を上げる。
「弓手が?」
「はい」
陽介は少し照れながら頷いた。
「まだまだですが……」
「いえ、十分ですよ」
職員は笑った。
「最近の依頼、ずいぶん楽に終わってますから」
その言葉に、ガルドとフィオラは顔を見合わせた。
「……そうか」
ガルドは短く言う。
「それは悪くない」
報酬が支払われ、依頼は正式に完了した。
◆
夕方。
自然と足は酒場へ向いていた。
「結局、ここに来るんだな」
陽介が苦笑する。
「仕事が終わったら、飲む」
ガルドが言い切る。
「それが冒険者だ」
「じゃあ仕方ないですね」
フィオラも笑った。
杯が並び、軽く乾杯する。
「無事に帰還したことに」
「乾杯」
酒は昨日ほど強くない。
だが、それでよかった。
「今回の連携、悪くなかったわね」
フィオラが言う。
「弓がいると楽だな」
ガルドが陽介を見る。
「前に出す判断もしやすい」
「頑張ります」
陽介は真面目に答えた。
アイリスは腕を組み、得意げに言う。
「当然でしょ。私の索敵とセットなんだから」
「はいはい」
陽介は笑った。
店内には、穏やかな笑い声が流れる。
(……この世界で、ちゃんとやれてる)
陽介は杯を傾けながら、そんなことを思った。
今日で一区切り。
また明日から、次の仕事が始まる。
それでいい。
それが、冒険者の日常なのだから。
第33話は、完全な帰還と締めの回でした。
村から街へ戻り、依頼を終え、報告を済ませる。
そして最後に、もう一杯。
ひとつの区切りを越え、
物語は次の段階へ進んでいきます。
次回からは、また新しい日常と依頼が待っています。
引き続き、お楽しみください。




