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第32話 勝利の美酒

魔物の群れは止められ、村は守られた。

あとは帰るだけ――それだけのはずなのに、足取りは自然と軽くなる。


大きな依頼をやり遂げた後に待つのは、報告と休息。

そして、ささやかながら確かなご褒美。

勝利の余韻に身を委ねる夜が、やってきた。


村へ戻った討伐隊は、思った以上の歓迎を受けた。

避難していた住人たちが次々と戻り、冒険者たちに頭を下げる。


「本当に……ありがとうございました」

「皆さんが来てくれなかったら、どうなっていたか……」


 村長は深々と礼をし、ガルドの手を強く握った。

「命の恩人です。どうか、今夜は村で休んでいってください」


「ありがたく受け取ろう」

 ガルドは穏やかに答えた。


 用意された料理は素朴だったが、温かかった。

 焼き肉、煮込み、素焼きのパン。

 そして、樽ごと運ばれてきた酒。


「おお……」

 どこからともなく感嘆の声が上がる。


「遠慮はいりません!」

 村長が声を張る。

「今日は祝いの日です!」


 酒が注がれ、杯が掲げられる。


「村の無事と、討伐隊に!」

「乾杯!」


 一斉に杯が打ち鳴らされ、賑やかな声が広がった。



 陽介は杯を手にしながら、少し照れたように笑っていた。

「……なんだか、すごいですね」


「当然でしょ」

 アイリスが隣で腕を組む。

「これだけのことをやったんだから」


「陽介の弓も、だいぶ目立ってたぞ」

 フィオラが言う。

「後衛が安定してると、前線は本当に助かる」


「ありがとうございます」

 陽介は頭を掻いた。

「まだまだですけど……手応えはありました」


 ガルドは酒を一口飲み、満足そうに頷く。

「いい経験になったな。こういう大規模戦を無事に終えられたのは、大きい」


「数が多くても、対応できるってわかったしね」

 別の冒険者が言う。


「人数を集めて正解だったな」

 誰かが続ける。


 その言葉に、何人もの冒険者が同意した。



 陽介はふと、弓に視線を落とした。

 傷もなく、弦も緩んでいない。


(……ちゃんと役に立った)


 胸の奥に、静かな自信が広がる。


「何ニヤニヤしてるの?」

 アイリスが覗き込んできた。


「いや……」

 陽介は笑う。

「楽しいなって思って」


「……ばか」

 アイリスはそっぽを向く。

「当たり前でしょ。勝ったんだから」


 だが、そのしっぽは小さく揺れていた。



 夜が更けるにつれ、宴はますます賑やかになった。

 笑い声、冗談、武勇伝。


 誰もが疲れているはずなのに、不思議と眠気は来ない。


「明日には街に戻る」

 ガルドが言う。

「報告を済ませたら、しばらくは落ち着けるな」


「こういう仕事が続くといいですね」

 陽介が言う。


「ええ」

 フィオラが微笑む。

「無事に帰って、酒が飲める。それが一番」


 その言葉に、陽介は深く頷いた。


 この夜は、ただ楽しくて。

 不安も、緊張も、すべて酒と笑い声に溶けていく。


 ――勝利の美酒は、甘かった。


第32話は、完全な帰還回です。

戦いを終え、村を守り、無事に祝杯を上げる。

それだけの、穏やかで楽しい一夜。


大きな依頼を成功させたことで、

彼らの中には確かな自信が生まれました。


この余韻が、次にどうつながっていくのか――

引き続き、物語をお楽しみください。


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