第28話 村の手前で迎え撃て
慌ただしい足音と、切迫した声。
ギルドに駆け込んできた村人がもたらしたのは、森から迫る魔物の群れの情報だった。
数は不明。ただ、茂みを揺らす音だけが異様に多かったという。
村を守るため、ギルドは判断を下す。
迎撃地点は――村の手前。
間に合うかどうか、その瀬戸際での決断だった。
昼下がりのギルドは、いつもより騒がしかった。
依頼の掲示板の前に人だかりができ、冒険者たちが口々に情報を交わしている。
その中心に、息を切らした村人がいた。
「お、落ち着いて。順番に話してください」
受付嬢が声をかける。
「も、森から……魔物が……」
村人は胸を押さえ、必死に言葉を絞り出した。
「数は……わかりません。でも……音が……茂みがずっと揺れてて……。あれは、少数じゃありません!」
ざわり、と空気が変わる。
「森から、か」
ガルドが低く呟いた。
「進路は?」
フィオラが即座に尋ねる。
「ま、まっすぐ村の方へ……。このままじゃ……」
村人は言葉を続けられず、深く頭を下げた。
「お願いします……村を、助けてください……!」
数秒の沈黙のあと、ギルドマスターが口を開いた。
「単独パーティでは危険だ。合同討伐隊を編成する」
その判断に、誰も異を唱えなかった。
「迎撃地点は?」
別の冒険者が問う。
ガルドが一歩前に出る。
「森の中は視界が悪い。時間も足りねぇ。……止めるなら、村の手前だ」
「被害を出さずに済む位置ね」
フィオラが頷く。
「間に合いますか?」
陽介が思わず口にする。
「間に合わせる」
ガルドは短く言った。
「それしかねぇ」
アイリスは目を閉じ、意識を外へ向ける。
「……まだ距離はある。でも、止まってはいない」
「よし」
ギルドマスターが決断する。
「迎撃は村の手前。各パーティ、準備しろ!」
◆
討伐隊は、急ぎ村へ向かった。
複数のパーティが列をなし、それぞれが役割を確認しながら進む。
「人数は十分だな」
ガルドが周囲を見渡す。
「斥候も複数いる」
フィオラが言う。
「索敵は分担できる」
アイリスは軽く肩をすくめた。
「私一人で全部見る必要はなさそうね」
「助かります」
陽介は弓を背負いながら言った。
「後衛、しっかりやります」
村が見えた頃、すでに避難が始まっていた。
討伐隊は村の手前、開けた場所で足を止める。
「ここだ」
ガルドが地面を見据える。
「ここで止める」
冒険者たちは素早く陣形を組み始めた。
前線、後衛、索敵、予備。
動きに無駄はなく、慣れた手つきだった。
「……来る」
誰かが呟く。
森の奥から、かすかな揺れが見えた。
枝が揺れ、草が倒れ、音が広がっていく。
「数は……」
陽介が息を呑む。
「気にするな」
ガルドが言う。
「多いだけだ。対処はできる」
その言葉に、誰も疑問を挟まなかった。
村の手前で、討伐隊は待ち構える。
まだ戦いは始まっていない。
だが、確実に――近づいてきていた。
第28話は、大規模討伐の導入回です。
森から迫る魔物の群れ、数不明という情報、そして村の手前での迎撃判断。
世界が動き、組織として対応する流れを描きました。
まだ、問題は起きていません。
判断も、準備も、人数も、十分に見えます。
次回はいよいよ、最初の接触。
討伐隊は、予定通りに事を運べるのか――。
引き続き、お付き合いいただけたら嬉しいです。




