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第24話 いつも通りの依頼

休息を経て、再び動き出す日常。

傷を負っていたガルドは完全に復帰し、陽介の弓も実戦で頼れる武器になってきた。

久しぶりに四人揃って受ける、いつも通りのギルド依頼。

順調で、問題もなく、笑いもある――そんな一日。


だが、「いつも通り」は、いつまでも同じ形で続くとは限らない。

それを、まだ誰も知らない。

 朝のギルドは、いつも通りの喧騒に包まれていた。

 酒の匂い、紙束の擦れる音、依頼内容を読み上げる受付嬢の声。

 それらが混ざり合い、冒険者たちの“日常”を形作っている。


 陽介たち四人は、掲示板の前に並んで立っていた。


「……よし、これで問題なさそうだな」

 ガルドが腕を組みながら言う。包帯はすでになく、動きにもぎこちなさはない。

「傷も完全に塞がった。今日からは、俺も前に出る」


「無理はしないでくださいよ」

 フィオラが苦笑しながら釘を刺す。

「治ったとはいえ、油断したらまた担架行きですよ」


「わかってるわかってる」

 豪快に笑い飛ばすガルドに、陽介は少し安心したように頷いた。


 掲示板に残っていた依頼は、街道近くに出没する魔物の間引き。

 数も多くなく、危険度も中程度。慣れた冒険者なら問題ない内容だ。


「ちょうどいいな」

 ガルドが言う。

「陽介の弓も、だいぶ形になってきた。実戦で使うには悪くない」


 陽介は背中の弓に手を伸ばし、照れくさそうに笑った。

「まだまだですよ。でも……前よりは当たるようになりました」


「それは認める」

 フィオラが肩をすくめる。

「正直、弓が入るとだいぶラクだわ。前衛が余裕を持てる」


 その言葉に、陽介は少し誇らしげになった。

「頑張りますよ。ちゃんと当てますから」


 すると横から、腕を組んだアイリスが鼻を鳴らす。

「……誰のおかげだと思ってるのよ」


「はいはい」

 陽介はすぐに返した。

「アイリス様のおかげですよ」


「わかればよろしい」

 満足げに頷くアイリス。そのしっぽは、機嫌の良さを隠しきれず左右に揺れている。


 その様子に、ガルドが吹き出した。

「ははっ、相変わらずだな、お前ら」


「でも、いいチームよ」

 フィオラが柔らかく言う。

「索敵がいて、遠距離がいて、前で受け止める人間がいる。噛み合ってる」


 陽介はその言葉を聞きながら、胸の奥が少しだけ温かくなるのを感じた。



 依頼は、予想どおり順調だった。


 街道脇の森に潜んでいた魔物は数体。

 アイリスの索敵で位置を把握し、ガルドとフィオラが前に出る。


「今だ、陽介」

「はい!」


 弓を引き、放つ。

 矢は風を切り、狙い通りに魔物を貫いた。


「いいぞ!」

「その調子だ!」


 戦闘は短く、被害もなし。

 撤退する魔物を追う必要もなく、討伐はあっけなく終わった。


 ――ただ一瞬だけ。


「……数、これで全部だと思う」

 アイリスがそう言ったとき、ほんの一瞬だけ、言葉が途切れた。


「……?」

 陽介は首を傾げたが、すぐにフィオラが確認する。

「問題なさそうね。反応もない」


「だな」

 ガルドも頷く。

「帰るぞ。無駄に長居する必要はない」


 アイリスは小さく首を振った。

「……うん。大丈夫」


 誰も、その一瞬を気に留めなかった。



 ギルドへ戻り、報告と報酬を受け取る。

 受付嬢の「お疲れさまでした」の声が、やけに心地よく聞こえた。


「今日も問題なし、だな」

 ガルドが満足げに言う。


「ええ」

 フィオラも微笑む。

「順調すぎるくらい」


 陽介は弓を背負い直し、照れたように頭を掻いた。

「この調子で、もっと役に立てるようになります」


 アイリスがちらりと横目で見て、ふっと口元を緩める。

「……まあ、悪くないわね」


「おっ、珍しい」

 ガルドがにやりとする。

「素直に褒めたぞ」


「ち、違う!」

 アイリスは慌てて顔を赤くした。

「事実を言っただけ!」


 その言い訳に、四人の間で笑いが弾けた。


 ――今日も、いつも通り。

 何も問題のない、ただの一日。


 誰一人として、その“いつも通り”が、少しずつ形を変え始めていることには気づいていなかった。

第24話は「平常運転回」です。

四人の連携、役割分担、そして陽介の弓がチームにしっかり組み込まれている様子を描きました。


大きな事件は起きません。

失敗もしません。

ただ、順調で、問題がなくて、笑って終わります。


だからこそ、この回はとても大切な位置にあります。

次から、少しずつ「同じだけど同じじゃない日常」が始まっていきます。


引き続き、お付き合いいただけたら嬉しいです。

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